2024.11.10

CARS

スポーツカーの本質、ライトウエイトスポーツ対決! 日本代表マツダ・ロードスター vs アルピーヌA110 エンジンHOT100ランキングの1位と2位が激突【前篇】

2015年の現行(ND)型デビュー・イヤー以来、9年振りにエンジン・ホット100で1位に返り咲いたマツダ・ロードスターと、登場から昨年まで、5年連続でその座を守り続けたアルピーヌA110。1位と2位の頂上決戦!

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2015年の現行(ND)型デビュー・イヤー以来、9年振りにエンジン・ホット100で1位に返り咲いたマツダ・ロードスターと、登場から昨年まで、5年連続でその座を守り続けたアルピーヌA110。1位、2位を争い続けてきたこの2台に乗って、その持ち味を改めて考えた。自動車評論家の斎藤慎輔がリポートする。

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6年ぶりに首位の座を譲ったアルピーヌA110

なにはともあれ、日本車にしてエンジン・ホット1に輝いたマツダ・ロードスターに、マツダに、そして開発陣にも、心から「おめでとうございます」と言わせていただきます。



実は私、本年の投票には参加していない。でもロードスターの1位にも、6年ぶりに首位の座を譲ったアルピーヌA110の2位にも、納得も納得、まさに私の思いをそのままに映したかのような結果であった。

どちらも「時」を経てなお魅力を増し続けているのは、造り手の努力によるたゆまぬ進化、熟成が成されてきたことはもちろんとして、時の経過とともに、ますます実現することが難しくなってきている軽量という本質がそこに宿っているからだ。



マツダは、RX- 7というロータリー・エンジン・スポーツから、FRの、重量配分の、そして軽量の何たるかを学んできた。さらに言えば、1985年に誕生した2代目RX-7では、セミトレーリング・アーム式を採用したリアサスでトー角をパッシブ・コントロールする技術を用いたが、その4年後に生まれた初代(NA型)ロードスターでは、構造的にはシンプルなダブルウイッシュボーン式を採用してきた。

こうした経緯は、色々盛られて、かつ情操的に語られることも多く見受けられるが、リアルタイムで当時を見てきた私には「速さ」には強く拘らずに、乗る歓び、操る楽しみを第一義としたロードスターが生まれたのは、RX- 7の存在と経験があったとの思いは、いまも変わらない。



3代目ロードスター(NC型)においては、当時のマツダの経営状況もあり、プラットフォームはRX-8用を基本とすることになったが、それとともに、ボディサイズ拡大、排気量増加、さらに衝突安全性能の向上策など重量増の要因が重なり、NB型での走り感とは異にする、ロードスターらしくないという声が増えたのは、辛い経験だったと思う。

多くの制約を持って生まれたNC型は、主査だった貴島氏も副主査の山本氏も、図らずも言い訳が多くなったと記憶しているが、心の中では「そんなことは分かっている、仕方ないのだ」と叫ばれていただろう。



こうした経緯の中、NC型の鬱憤を晴らすように15年に送り込まれたのがND(現行)型だった。ボディサイズを縮小し、新開発の専用プラットフォームに、縦置き用の専用1.5リッターエンジン、専用6段MT等々を採用、コスト管理部門に対していかに理由づけをするかが大変だったという話も重々納得できる内容だ。

もっとも、ロードスターらしい走りをカタチ作っていく中で、常についてまわるのが軽快感というところで、その感覚と同居させる上では、特に旋回姿勢が肝になってくる。

感覚性能が研ぎ澄まされた

ND型に最初に乗った時から、RSのようにリアスタビ、LSD、それにビルシュタイン製ダンパーを標準で備えるグレードであっても、なんだかリアが浮き上がるようで落ち着かない、しっかりとした接地感に乏しいというのは紛れもない事実で、開発陣もここをどうするかに頭を悩ませてきたのは、9年の中で繰り返されてきた改良に端的に現れている。



リアを安定させすぎると、スポーツカーとしての旋回スピードを増すことはできたとしても、ロードスター特有のひらり感は損なわれてしまう。そのバランスをどうするかという苦悩の中で、21年末の商品改良で採用されたのがKPCだった。

これはサスペンション・ジオメトリーによるアンチ・リフト力を利用するという考えの基、旋回時など左右輪の回転数差に応じて、後内輪に微小なブレーキを作動させることで、僅かにリア側の車高を下げる作用を与えるものだが、たしかにロードスターならではのひらり感を保ったままの安定感を増す効果は生んでいる。



けれども、今度はステアリングの切りはじめの領域におけるフリクションを起因とするのか、逆に落ちつかないノーズの動きをもたらすことに、軽快感とは違う神経質さを伴うことに、少し違和感を覚えていた。

それが、23年10月の電子プラットフォームから全面刷新することになった大幅改良の際に、ステアリング・システム、ユニットも新しくなると、この弱点も解消されていた。

さらに、Sグレードを除くMT車には減速時と加速時で差動制限力を変えるアシンメトリックLSDが新採用され、コーナーの入り口から出口までのつながり感も、軽快さは保ったままに安心できる動きとなっており、ND型が求めてきたロードスターの走りの世界が、また一歩完成に近づいたと思えるのだった。

他にもエンジン制御に手を入れて高回転域での伸びと、回転落ちの自然さなども加えられるなど、速さではなく、感覚性能をより研ぎ澄ますことに注力している。これこそがロードスターの素晴らしさで、そして速すぎないからこその、じっくりと濃密なクルマとの対話感がもたらされる時間を保てる。そこにオープンエアの心地よさまで得られるのだ。かく言う私自身も、ドライビングのイロハも、なにを見るべきかの評価の在り方も、最新ロードスターからまだ学ばされている思いがしている。

◆一方、熟成が進ごとにエンジン・パワーを引き上げてきたアルピーヌA110のRとは、どんなスポーツカーなのか。続きは【後篇】で!

文=斎藤慎輔 写真=望月浩彦


■マツダ・ロードスターRS
駆動方式 エンジン・フロント縦置き後輪駆動
全長×全幅×全高 3915×1735×1235mm
ホイールベース 2310mm
車両重量(車検証) 1040kg
トレッド(前/後) 1495/1505mm
エンジン型式 水冷直列4気筒DOHC
排気量 1496cc
最高出力 136ps/7000rpm
最大トルク 152Nm/4500rpm
トランスミッション 6段MT
サスペンション(前) ダブルウィッシュボーン/コイル
サスペンション(後) マルチリンク/コイル
ブレーキ(前/後) 通気冷却式ディスク/ディスク
タイヤサイズ 195/50R16(前後)
車両本体価格(税込) 374万5500円

■アルピーヌA110R チュリニ
駆動方式 エンジン・ミドシップ横置き後輪駆動
全長×全幅×全高 4255×1800×1240mm(エアロキット付き)
ホイールベース 2420mm
車両重量(車検証) 1100kg
トレッド(前/後) 1555/1550mm
エンジン型式 水冷直列4気筒DOHCターボ
排気量 1798cc
最高出力 300ps/6300rpm
最大トルク 340Nm/2400rpm
トランスミッション 7段ツイン・クラッチ式自動MT
サスペンション(前) ダブルウィッシュボーン/コイル
サスペンション(後) ダブルウィッシュボーン/コイル
ブレーキ(前/後) 通気冷却式ディスク(前後)
タイヤサイズ (前)215/40R18(後)245/40R18
車両本体価格(税込) 1550万円~

(ENGINE2024年11月号)

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