2024.11.20

CARS

ドイツ製スポーツカーとはぜんぜん違うところが面白い アストン・マーティンDB12ヴォランテとジャガーFタイプ イギリス車の楽しさとは?

ジャガーFタイプとアストン・マーティンDB12ヴォランテ、イギリス製ドライバーズカーの2台を乗り比べる

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イギリス車はドイツ車やイタリア車と比べて何が楽しいのか? ちょっと古いジャガー2台持ちのエンジン編集部のアライが、ジャガーFタイプとアストン・マーティンDB12ヴォランテに乗り考えた。

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「フツーの乗用車以上、スポーツカー未満」と聞いて最初に頭に浮かんだのは自分の愛車2台だった。



1987年式ジャガーXJ6と1992年式ジャガーXJSコンバーチブルはどちらもそれにピッタリ当てはまる。ジャガーXJSコンバーチブルは2座オープンという特別なボディ・スタイルがすでに普通ではない。一方、4ドア・セダンのジャガーXJ6が普通の乗用車ではないことは、エンジンの長期リポートで担当していた1992年式メルセデス・ベンツ300TEとの日々の乗り比べではっきりと感じることができた。

まず、ジャガーXJ6はメルセデス・ベンツ300TEより明らかに着座位置が低い。さらに首都高速のカーブなどではより鋭いノーズの切れ込みを感じる。運転していて圧倒的に安心なのはメルセデス・ベンツ300TEだが、楽しいのは? と聞かれればジャガーXJ6なのだ。

当時に比べるとジャガーとメルセデス・ベンツ、もっと言えばイギリス車とドイツ車のキャラクターの違いは小さくなったと思う。それでも、ドライバーズ・カーとしてイギリス車ならではの個性があるはずだ。そんなわけで、ドライバーズ・カーとしてアストン・マーティンDB12ヴォランテとジャガーFタイプというイギリス車2台を選び、その魅力を探った。

美しさにため息

まずは、アストン・マーティンDBシリーズとしてDB11からDB12へと進化したアストン・マーティンDB12ヴォランテから見ていこう。ちなみにクーペではなくヴォランテを選んだのは、昔からイギリス車にはオープン・モデルが多く、イギリス車の魅力をより強く感じるのではないかと思ったからだ。

8層構造の幌屋根は14秒で開き、16秒で閉じる。50km/hまでなら走行中も操作可能。

乗り出す前に私を虜にしたのはそのスタイリングである。なんて美しいフォルムなんだろう!

屋根を開けても閉めてもサイド・ビューの美しさは群を抜いている。感嘆のため息は運転席に座ってさらに大きくなった。DB11から刷新されたインテリアはよりエレガントにそしてゴージャスになった。試乗車はブラウンのセミアリニン・レザーが贅沢に使われていて、ドアの内張りに用いられたウッド・パネルとの組み合わせにセンスの良さを感じる。外観はDB11の美しさを継承しながら、インテリアのセンスは抜群に良くなったDB12である。

インテリアはエレガントかつゴージャス、仕上げも素晴らしい。

エンジンは4リッターV8ツインターボのみで、DB11に用意されていた5.3リッターV12ツインターボの設定はなくなった。メルセデスAMGが組み上げたものをさらにアストン・マーティンがチューンしたという4リッターV8ツインターボは、最高出力680ps /6000rpm、最大トルク800Nm/2750~6000rpmを発生する。0-100km/h3.7秒、最高速325km/hはスポーツカー未満とは言えないかもしれない。

ダイヤモンド・ステッチが入った美しいシートは掛け心地もいい。極狭だが後席もある。

それでも、シグナル・ダッシュや料金所からのフル加速などをする気がしないのは、このクルマが醸し出す気品のおかげだろうか。セカセカした気持ちにならない。8速100km/hの回転数はわずか1500。追い越し車線をイッキに抜き去る日産GT-Rを横目で見ながら悠然と進む。下々の者は忙しそうである。

前275/35ZR21、後ろ325/30ZR21という超極太タイヤを履いているわりには、乗り心地がいい。後席をふさぐように取り付けられたウィンド・ディフレクターを立てれば、風の巻き込みはほとんど感じない。このクルマが似合うジェントルマンになりたかったと思いながら箱根ターンパイクに入った。



エンジンのスタート・ストップ・ボタンのリングを右へ回すと標準の「GT」から「スポーツ」、そして「スポーツ+」へとドライビング・モードが切り替わる。この違いが凄まじい。スポーツ・モードにするだけで、さきほどのジェントルな表情はどこへやら、ノーズの切れ込みはイッキに鋭くなりグランドツアラーからスポーツカーへと変身する。実はとても好戦的だったジェントルマン、さきほどまではそれを知性で抑えていたのですねという感じで、豪快に山道を駆け抜ける。知性と蛮性の共有、まさにジェームズ・ボンドである。

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