2024.11.23

CARS

クルマから降りたくなくなる走りの楽しさ! ポルシェ・パナメーラと同カイエンGTSクーペに島下泰久が試乗 内燃エンジンのポルシェだからこそ、味わえる喜びとは?

内燃エンジン・ポルシェの2台の味はどうだったのか?

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シャシーが速い

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エンジンは6800rpm辺りのトップ・エンドまで淀みなく吹け上がるが、ピックアップはさほど鋭いわけではないしパワーもそこそこ。但し、パナメーラの場合はシャシーが速過ぎると言うべきかもしれない。その代わり、前が空いたらパドルを弾いて思い切りアクセラレーターを踏み込める。その点でも、やはり運転に積極的に関与する歓びがあると言えるだろう。

バケット型シートは掛け心地、ホールド性ともに良好。

感じたのは、パナメーラが若返ったということ。全身鍛え直して引き締まり、まるで911のような感覚にまで走りを研ぎ澄ませた。素のパナメーラは、そんな進化をもっともストレートに味わわせてくれたのだ。

赤いカイエンGTS

カーマインレッドのボディカラーをまとった新しいカイエンGTSクーペが、俄然スポーティさを増して感じられたのは、ホイールアーチ・エクステンションやサイド・スカートがブラック仕上げに改められた効果が大きい。遠目にはボディがより薄く、低く見えるというわけである。

カイエンもパナメーラもダッシュボードは完全に刷新されていて、フードレスのメーターデザイン、インパネ・シフト、ボタン式のスターターなどが採用されている。始動とともに大音量のエグゾースト・ノートが響き渡り、ちょっと気恥ずかしい気分になったが、このカイエンGTS、走りの印象を支配するのはまさしくこのエンジンだ。

2023年に大幅な改良が施されたポルシェ・カイエン。ローダウンした専用シャシー、大径タイヤを装備するが、乗り心地がとてもいい。

こちらも電動化されていないV型8気筒4リッター・ツインターボ・エンジンの最高出力は500psに達する。474psのカイエンSとの差はわずかだが、GTSはエンジンだけでなくシャシーも専用とされる。

日本未導入のターボGTから流用されたフロント・アクスル・ピボット・ベアリングにより、ネガティブキャンバーを0.58°拡大し、10mmのローダウンを実施。アダプティブ・エア・サスペンション、PTV Plusなども標準装備とする。試乗車はリア・アクスル・ステアリング、可変スタビライザーのPDCCまで備えていた。

2023年の大幅改良でインテリアも刷新された。フードのないメーターが斬新だ。GTSの内装は黒で統一され、随所にスウェード調ファブリック「Race-Tex」が用いられ、スポーティな印象を与える。

標準装備のGTSスポーツ・シートは8way調整機能付きでホールド性、乗り心地ともに良好。

どこからでもすぐさま欲しいだけの力を引き出せる凄まじい瞬発力が、GTSの最大の魅力である。あふれるほどのパワーとトルクは時に余裕となり、時に刺激となる。しかも、硬質なV8サウンドまで伴うのだから、右足を遊ばせてなどいられない。

8段ティプトロニックは、変速の切れ味を増したようだ。これもまたダイレクトなドライビング感覚を引き立てるポイントである。

素晴らしいフットワーク

フットワークも、やはり打てば響くレスポンスが光る。特にSPORTモードに入れた時の切れ味鋭いターンインは、SUVであることを忘れさせるほど。それでいてガチガチに固め過ぎてはいないから乗り心地もしっとりとしていて快適なのだ。



新しいカイエンGTSの走りには高性能SUVの代名詞だったかつてのカイエンが帰ってきたかと思わせるような充足感が漲っている。しかも闇雲にパワーを追うのではなく、自ら操るドライバーズ・カーとしての側面を強めた進化を果たしていることが、私を嬉しくさせた。

新型では純エンジン車のターボやターボGTは導入されない。しかしながらGTSがこの出来映えならば、文句など出る余地は無いだろう。

生憎の雨の中での試乗となったが、2台の新しいポルシェはいずれもクルマから降りたくなくなる走りの楽しさ、歓びをストレートに実感させてくれた。ドライバーズ・カーとしてのポルシェ、復権と言ってもいい。

しかしながら、これだけドライバーを鼓舞する走りを手に入れただけに、ひとつだけ苦言を呈しておきたい。エンジン・スタートが味気ないプッシュ・ボタン式に改められたのは、やはり改悪だろう。従来はノブをひねる瞬間から気分の昂揚を感じたものである。速さよりも心満たす歓び、ドライバーズ・カーには、そうした部分も大事だと思うのだ。

文=島下泰久 写真=望月浩彦

■ポルシェ・パナメーラ
駆動方式 エンジン縦置き後輪駆動
全長×全幅×全高 5052×1937×1423mm
ホイールベース 2950mm
車両重量 1910kg
エンジン V型6気筒DOHCターボ
排気量 2894cc
最高出力 353ps/6800rpm
最大トルク 500Nm/1900~4800rpm
変速機 ツインクラッチ式8段自動MT
サスペンション 前 ダブルウィッシュボーン/エア
サスペンション 後 マルチリンク/エア
ブレーキ 前&後 通気冷却式ディスク
タイヤ 前 後 275/35ZR21 325/30ZR21
車両本体価格 1424万円(試乗車は1980万円)

■ポルシェ・カイエンGTSクーペ
駆動方式 エンジン縦置き4輪駆動
全長×全幅×全高 4930×1983×1674mm
ホイールベース 2895mm
車両重量 2260kg
エンジン V型8気筒DOHCツインターボ
排気量 3996cc
最高出力 500ps/6000rpm
最大トルク 660Nm/2100~4500rpm
変速機 8段AT
サスペンション 前 マルチリンク/エア
サスペンション 後 マルチリンク/エア
ブレーキ 前&後 通気冷却式ディスク
タイヤ 前 後 285/40ZR22 315/35ZR22
車両本体価格 1923万円(試乗車は2240万6000円)

(ENGINE2024年12月号)

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