2024.12.03

CARS

注目の新型FCEVも発表! ヒョンデNとトヨタ・ガズー・レーシングが大接近! 韓国で開催された2社合同レーシング・フェスティバルがすごかった!!

新型の水素燃料電池コンセプトカー“イニシウム”

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ヒョンデの新型EV、インスターの国際試乗会で訪れた今回の韓国取材は1週間に及んだ。その理由は、インスターの試乗の他に二つの大きな目玉があったからだ。

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その一つが、10月27日、ヨンイン・スピードウェイで開かれた“ヒョンデN×トヨタ・ガズー・レーシング・フェスティバル”。もう一つがヒョンデ・モータースタジオ高陽で発表された新型の水素燃料電池コンセプトカー“イニシウム”を見ること。両イベントで盛り上がる韓国の今を、エンジン編集部のムラヤマがリポートする。



モータースポーツを広めたい


ヒョンデとTGRの共通点はいずれも世界ラリー選手権(WRC)でしのぎを削る、アジアのトップ・コンストラクターだということ。今年初旬、ヒョンデの鄭義宣(チョン・ウィソン)会長とトヨタの豊田章男会長が、欧州に比べてWRCの認知度が低いアジア圏で、ラリーをはじめとするモータースポーツの楽しさを広げ、文化の発展を目指したいという思いで意気投合したのがこのイベントのきっかけだ。その第一歩として、今回の共催が実現したのである。

展示車を練り歩く来場者。

両社のWRCマシンやコンセプトカー、市販のスポーツ・モデルが展示された会場では、韓国のモータースポーツ・ファンが興味深そうに周りを取り囲んでいるのが印象的だった。ラリー・カーの走行を体験できるシミュレーターにも長い行列が。

ステージ・イベントのオープニングを飾ったのは歌手のチョンハ氏。

特設のイベント広場で開かれる目玉のプログラム「トラックデー」は、午後2時半、韓国の女性歌手、チョンハ氏の熱演によってスタート。その後広場に飛び込んできたのは、GRラリー1ハイブリッド。観客席の目の前を隅々まで駆け回って華麗なドリフトを披露すると、ステージ上で停車。降り立ったドライバーはなんと“モリゾー”こと豊田会長、同乗していたコ・ドライバーはヒョンデのウィソン会長である! サプライズの登場に、歓声が沸いた。



サプライズ登場したヒョンデの鄭義宣(チョン・ウィソン)会長とトヨタの豊田章男会長。

その後は両会長の紹介で、各チームのWRCドライバーが続々とステージに登壇。メイン写真左から、ヒョンデのアンドレアス・ミケルセン選手、ダニ・ソルド選手、ティエリー・ヌービル選手が、中央に両会長を挟み、TGRのヤリ=マティ・ラトバラ選手、勝田範彦選手、勝田貴元選手が揃った。WRC開催地ではない韓国で、現役のWRCマシンの迫りくる走りと参戦ドライバーを間近で見られるというまたとない機会に、観客の熱気は最高潮に達した。

両会長の嬉しそうな様子が印象的だった。ふたりが公の場に揃って姿を見せるのはこれが初めて。

最後に、会場では各選手が乗り込んだ両社のマシンによるデモ・ランやジムカーナ対決が行われた。注目はヒョンデ。2日前の“N Day”で公開されたばかりの、アイオニック5Nをベースにした新型コンセプトカー“RN24”が初めて走る姿をファンの前で披露した(写真はギャラリー参照)。

水素社会のパイオニア

1週間にわたる韓国・ヒョンデ取材の最後の目的は、10月31日にヒョンデ・モータースタジオ高陽で発表された新型の水素燃料電池コンセプトカー“イニシウム”をこの目で見ることだった。

現在は市販モデルの水素燃料電池車(F C E V)としてN E XO(ネッソ)をラインナップするヒョンデ。イニシウムは来年の中頃に発表を予定している量販FCEVのプレビュー・モデルだ。その車名はラテン語で「始まり」または「最初」を意味し、1998年からFCEVの開発に着手してきた同社の、水素エネルギー社会へのパイオニアとしての地位を誇示するものなのだという。



デザイン面で特徴的なのは、ヘッドライトやテールライトをはじめ、車体のいたるところに見られる、正方形のなかに+マークを取り入れた意匠。このデザイン・アイコンは、2020年に発表し、今年のCES2024から本格的に立ち上げた水素バリューチェーン・ビジネスのブランド「HTWO」を象徴するもの。水素の製造から貯蔵、輸送、利用にいたるまで、利用工程のすべてをカバーするエネルギー・ソリューションの展開にも力を入れているのだ。



イニシウムのデザインは、HTWOの価値観を体現する新しいデザイン言語「アート・オブ・スチール」により描かれている。デザイン担当のイ・サンヨプ副社長は「ボディ・ラインを先に描くのではなく、素材が持つ成形性を極限まで高めて芸術的な形を創り出した」と説明する。



開発にあたって重要視したのは、航続距離と動力性能、広々とした車内スペース、FCEV特有の利便性と安全性の追求だという。モーター出力は150kWで、航続距離は、大型の水素タンクや転がり抵抗の低いタイヤ、空力に優れたホイールを採用することで650kmの実現を目指す。具体的な数値こそ発表されなかったものの、一充填の容量は電力量にして100kWh以上の見込みで、家庭への外部給電(V2L)機能を使った場合、ソウルの一般家庭の約10日分の電力を賄えるそうだ。

会場内には、ヒョンデの歴代のFCEVモデルが並んで展示されていた。

発表会後に行われた質疑では、NEXOのオーナーだという韓国の記者から、水素の価格の高騰を懸念する声が上がった。確かに以前より値上がりしたそうだが、それでも1kgあたり1万ウォン=日本円で約1100円と、今の日本(約2200円)に比べればまだ現実的だ。ステーションもソウル市内に約50箇所あるというから、これなら実用的である。水素はまだ発展途上の技術だ。ぜひとも応援したいと思う。

文=村山雄哉(ENGINE編集部) 写真=ヒョンデ、村山雄哉(ENGINE編集部)

(ENGINE2025年1月号)

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