ポルシェ911カレラ・カブリオレに乗って、あまりに気持ちよかったので、またしてもオープンカーに乗りたくなってきてしまった。
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本能には勝てない それでいて性能は素晴らしい。ポルシェ911はベース・モデルのカレラ・クーペでさえ、最高速が294km/h、0- 100km/h加速は4・1秒。使い切れないスペックといってよい。ベース・モデルであってもサーキットに持ち込まないとフルに性能を引き出せないほど。このあたり、高性能モデルに乗っている人に共通するジレンマといって良い。性能を楽しむために作ったクルマなのに、使えないですから。 そんな悩みを少し和らげてくれるのがカブリオレだったりする。近代以降のカブリオレというジャンル、前述の通り海沿いの道(英国のコーニッシュやイタリアのリゾートであるポルトフィーノあたりが最高とされる)を走ったり、夜の都会を走ったりするために作られた。ロールス・ロイスとフェラーリの車名に付けられた上記の道も走ったけれど、なるほど「苦しゅうない」でした。
オープンカーの魅力って、本質的なモノなのかもしれない。当たり前ながらヒトは動物としての本能を持つ。移動することで多くの配偶者や食&住環境に出会える。「クルマという移動のための道具はヒトの本能を満たしてくれる。だから意味もなく走るだけの“ドライブ”が楽しいのだ」ということを生物学者に聞いた時は「なるほど!」と深く納得させられた。 さらにヒトという動物を考えたら、そもそも移動はオープン・エアである。風を切って移動することこそ王道だ。実際、乗り物の中で「最高だね!」と感じるのは、10ノットくらいで走るフネの先頭(バウと呼ぶ)に座っている時だ。適度なスピード感と、適度な風を受ける。ヒトの身体は自分で出せる最高速まで適応するようになっているそうな。10ノット=18.5km/hです。
オープンカーに乗れば解る通り、100km/h以上出しても楽しくない。上限で70km/h。できれば50km/h以下をもって最高としておく。だからこそ海沿いの道や都内のスピード・レンジが楽しいんだと思う。ここまで読んで鋭い読者諸兄なら「なるほどね」かと。本来性能を追求するスポーツカーは、速く走らないと楽しめないということになる。911を全開で走らせたら、ホンキで楽しい! そんな911の屋根を開けて走ると、突然ノンビリ走って快適なクルマになってしまう。911カブリオレの素晴らしい点は、性能も犠牲にしていないこと。クローズド状態にすることで、高速走行時の快適性はクーペに限りなく近くなる。最高速もクーペより3km/h遅いだけの291km/h。0-100km/h加速は0.2秒遅れの4.3秒である。おそらく体感できないレベルです。 生物学者によればヒトという動物は「速く移動すること」にも本能的な魅力を感じるそうな。だからこそ速い乗り物を好む。911本来の性能を引き出すと、ココにツボります。そして屋根を開けたら、風を受けることで移動するということを実感できるため、これまたツボる。40年以上この業界にいる評論家だって本能にゃ勝てない。だから仕事でも楽しくなっちゃう。 普通の911だって十分楽しめるけれど、屋根が開くと違う楽しさも味わえる。あまりに気持ちよかったので、またしてもオープンカーに乗りたくなってきてしまった。911カブリオレかボクスター、最後の純エンジン車としては最高のチョイスかもしれません。文=国沢光宏 写真=神村 聖■ポルシェ911カレラ・カブリオレ駆動方式 リア縦置きエンジン後輪駆動全長×全幅×全高 4519×1852×1297mmホイールベース 2450mm車両重量 1580kgエンジン形式 直噴水平対向6気筒DOHCターボ排気量 2981cc最高出力 385ps/6500rpm最大トルク 450Nm/1950-5000rpmトランスミッション 8段デュアルクラッチ式自動MTサスペンション(前) ダブルウィッシュボーン+コイルサスペンション(後) マルチリンク+コイルブレーキ(前後) 通気冷却式ディスクタイヤ(前) 245/35ZR20タイヤ(後) 305/30ZR21車両本体価格 1654万円(ENGINE2025年1月号)
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