2025.03.31

LIFESTYLE

カナダ人写真家、ミシェル・ウノーさんが捉えた東北の12年 在日カナダ大使館で開催中の展覧会『東北、その後 2012-2024』を見る 

『東北、その後 2012-2024』は4月11日までカナダ大使館 高円宮記念ギャラリー(東京都港区赤坂7-3-38)で開催中 月曜~金曜10:00~17:30(最終入場 17:00) 休館日:土曜、日曜、大使館休館日および臨時閉館日。

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東日本大震災の翌年から度々、被災地を訪れ12年間の長きにわたり写真や動画を撮り続けたカナダ人がいる。その記録をまとめた展覧会が人々に伝えるものとは?

未曾有の被害をもたらした2011年3月11日の東日本大震災。発生から14カ月が経った翌年の5月、カナダ人のミシェル・ウノーさんが宮城県石巻市に降り立った。米カリフォルニア大学バークレー校で修士号を取得した彼は、人々のトラウマとなるような大規模災害が起きた後の、共同体の記憶についての研究を行ってきたドキュメンタリー写真家である。それから12年間、ミシェルさんは復興支援のボランティア活動に携わりながら、何度も宮城県や福島県を訪れ、現地の様子を写真や動画でおさめ続けてきた。

展覧会の写真より。「幸運と願いの成就を祈る千羽鶴 女川 2015年」

在日カナダ大使館・高円宮記念ギャラリー(東京都港区)で開催中の『東北、その後 2012-2024』は、そんなミシェルさんの活動の記録をまとめた展覧会である。東日本大震災の惨状を伝える写真や映像は数多いが、本展が興味深いのは、これがひとりの写真家の手により、12年間という長い歳月にわたり撮り続けられてきたことだ。

震災の爪痕が生々しく残る写真。

2012年、2015年-2017年、2020年-2024年と、3つの時期に区切られたそれらの記録は、会場の3面の壁に分けて展示されている。記録の形態は多彩で、一般的な写真や動画はもちろん、地元の人々の言葉を収録したオーラル・ヒストリーや360度カメラで捉えた現地の風景、さらに会場中央に立つ柱には、天井にまで届く長大なパノラマ写真が貼り付けられている。

ギャラリーの中央に立つ柱には、長いパノラマ写真が貼り付けられていた。

まずは左側の壁にある2012年の記録から見始めたが、そこにあるのは津波で倒壊した家の土台や、地滑りで傾いた線路、田んぼに水没したクルマ、といった震災後の生々しい爪痕が残る写真群である。それが正面の壁、右側の壁と、時代が進んでいくうちに、建設中の防波堤や橋、新しい住宅、穏やかな自然の風景などが増えていき、現地での復興が徐々に、だが確実に進んできた様子が分かるようになっている。

写真とあわせて動画もディスプレーされている。

今回、展示されている写真の多くが風景を捉えたものだが、そこに人が写っているものは意外に少ない(それでいてどの写真にも、人間の気配が色濃く感じられる)。そのせいか、まるで展覧会の一鑑賞者である自分が、震災から復興までの道程を、現地で追体験しているかのような錯覚を覚えた。それはまさに、自然の猛威にさらされて、なお立ち上がる人間の強さを感じるものであると同時に、失われた尊い命に祈りを捧げるような厳かな体験でもあった。

文=永野正雄(ENGINE編集部)

■『東北、その後 2012-2024』は4月11日までカナダ大使館 高円宮記念ギャラリー(東京都港区赤坂7-3-38)で開催中 月曜~金曜10:00~17:30(最終入場 17:00) 休館日:土曜、日曜、大使館休館日および臨時閉館日

(ENGINE2025年4月号)

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