新しいクルマを購入するときは、試乗の印象は大事な検討材料だろう。新型車であれば買う前に乗ってみたいと考えている人は多いはずだ。それがほとんどの人が未体験のEVであればなおさらに違いない。レインボーブリッジも走った参加型試乗会、「アバルト500eプレミアム試乗会」リポート。
なかなかない特別な試乗コースEVの試乗チャンスはいろいろあるが、エンジン・プレミアムクラブの会員も参加して3月5日に行われた「アバルト500eプレミアム試乗会」は画期的な機会だった。

何が素晴らしかったのかと言えば、高速道路を走ることができたことだろう。しかもそれが普段のディーラー試乗ではなかなか体験できない、首都高速のレインボーブリッジを通るルートだったというのだからたまらない。さらに試乗の起点がお堀越しに皇居を望むパレスホテルだったというのも特別感があった。

そして何よりも魅力的だったのは、試乗するクルマが、アバルトの500eだったことだ。モータージャーナリストがこぞって絶賛している注目のEVが、いったいどんなクルマなのか。それをプレミアムなホテルをベースにレインボーブリッジを走るコースで体験したのだから最高だろう。
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プログラムは、まずホテルのラウンジでブリーフィングを行い、最初はインストラクターの運転でスタートすると、神田橋からいま話題の首都高速KK線を経由してレインボーブリッジを渡り、お台場で充電のデモンストレーションを行った後、帰路は参加者自身がハンドルを握って帰ってくるという内容。



廃線が決定している首都高速KK線は、八重洲地下トンネルをはじめ新幹線と並走するなど、そのロケーションがいま話題のルートだ。
このルート、ただ話題だからと選ばれたわけではなく、実はアバルト500eのEVとしての良さを体験するのにうってつけのコースと言える。

緩い曲率のコーナーとアップダウンが連続する八重洲の区間では、バッテリーを床下に積む低重心のメリットをいかしたロールの少ないコーナリングや、ホイールベースの短いコンパクトな500eならではの応答性の良さが体験できる。
一方、レインボーブリッジはと言うと、タワマンが並ぶ晴海、豊洲エリアを臨む眺望が楽しめるのはもちろんのこと、橋の頂点まで登りつめる急坂では瞬発力のいいモーターならではの加速が体験でき、さらに都心へと戻る帰路の下りのS字コーナーでは路面に張り付くような安定感のある走りが体験できる。


東京の都市交通の歴史を象徴するような昭和遺構とも言える存在の首都高速KK線と、いまなお刻々と姿を変え続ける首都を俯瞰するレインボーブリッジ・ルートを組み合わせた今回のルート。新旧東京をアバルト500eで走るというエンターテインメント性はもちろんのこと、実は裏テーマとして、優れたチューナーの歴史のあるアバルトが未来のEVをどう仕立てたのかを知る=体験するルートでもあった。通常のディーラー試乗では、なかなかここまでは経験できない。さらに皇居のお堀に隣接する絶好のロケーションのパレスホテルのホスピタリティを満喫しながら、憧れのアバルトをドライブするというラグジュアリーな体験は格別なものだったはずだ。
◆アバルト500eの詳しい情報はこちら!誰もが楽しめるアバルトそんな特別な試乗を体験したエンジン・プレミアム・クラブの参加者に試乗後の感想を聞いてみたので紹介しよう。
最初に話を聞いたのは関由一さん。愛車はアルピナのD3。試乗会に応募した理由は「マニュアルが苦手」だからだという。

「アバルトというブランドにはすごく興味があったんですが、MTのクルマに苦手意識があったので、これまで縁がなかったんです。でもアバルト500eにはそもそもMTがない(笑)」
乗ってみてどうでしたか?
「アバルトはクセが強いというイメージだったんですが、いい意味ですごく普通でした。アバルトに対してすごく構えていたんですが、これなら誰でも楽しめますね」
同じように「乗りやすい」という感想を話してくれたのはアルピーヌA110Rに乗る山口昌也さん。

「チューニングカーというイメージがあって、どこか怪しさみたいなものを感じてたんですが。驚きでした。普通に乗れるし、高級車ですね。ボディ・サイズは扱いやすいし、加速もいいので、初めてでも心に余裕を持って運転できました。1年間プリウスのPHEVに乗ってたことはありますが、電気自動車は初めて。全然加速が違いましたね。スタートの初速はA110より速いくらいです」
アバルトといえばマフラーを思い出す人も多いはず。内燃エンジン・モデルにはレコルトモンツァというチューニングマフラーのオプションもあるが、小澤剛さんは500eの音に驚いたそうだ。

「とにかくはじめに聞いたエンジン音(?)、クルマから聞こえてくるいい音に感動しました。このサウンドは、車内でも程よく響き、心を煽ってくれるものでした。さすが製作に6000時間かけただけのことはありますね。音だけで判断すれば、とてもEVとは思えません」
電気自動車を選択肢として考えているというのは加藤剛さんだ。実はアバルト500eには少しだけ乗ったことがあるという。

「ちょこっとだけ、ディーラーで10分くらい。実はその時はあまり他のEVと差異は感じられなかったんです。今回は高速道路も走れるというのでもっと乗れると思って」
思う存分乗れましたか?
「ディーラーの周りの市街地をちょこちょこっと走るのではわからないところがわかった。できればあと山道も走れるとなお嬉しい(笑)」
そう言って笑う加藤さんは、実はアバルト695のオーナーでもある。

「自分で買おうと思った最初のクルマの最後まで残った候補の1台がアバルトのパーツがたくさん使われていたフィアットのX1-9だったんです。その時は買えなかったけど、その後フィアット500に乗って、現在は念願の695。アバルト好きです(笑)」
EVのアバルトはどうでしたか?
「すごく良かった。これは誰でも乗れるアバルト。695のようなクセはないですね。最近30年ぶりにバイクに乗るようになったんです。一体感を楽しむのはバイクにして、クルマはゆったり乗るのもいいかなと思って。それで500eもいいかなと思ったんです」
◆アバルト500eの詳しい情報はこちら!一方、EVはドライビングの概念を変えるというのは今回の試乗会でチーフ・インストラクターを務めたレーシング・ドライバーのケイ・コッツォリーノさんだ。

「ヒルクライムで4モーターの2000馬力のEVに乗ったことがあるんですが、運転しやすくて宙に浮いているような感じでしたね。アクセルだけでコーナリングスピードも走りも変えられるんです。EVの可能性には鳥肌が立ちます」

そんなコッツォリーノさんも、実は今回の試乗会でアバルト500eに心を持って行かれたひとりだ。試乗コースの下見で何度も500eで走ってやられたという。
「八重洲地下トンネルなんかフロントのレスポンスもいいんだけど、ちゃんとリアがついてくる。サスペンションがすごくいい。小さなクルマなのにひと回り大きなクルマに乗っているようなイメージなんです。頼んでおいた正式な見積もりをさっきもらったんですよ。今日は印鑑を持ってなかった。海外みたいにサインで良かったらいまできたのにね(笑)」

「やっぱり自分が好きな、こだわりのあるクルマに乗りたいじゃないですか」というコッツォリーノさん、見積もりを握りしめて熱く語る言葉には説得力があった。
今回の試乗会、エンジン・プレミアム・クラブの参加者の感想で多かったのは、話題のアバルト500eに長時間、しかも高速道路も含めた変化のある道を、自分でハンドルを握って走ることができたことが良かったという意見だった。やっぱりクルマは乗ってみないとわからない。ぜひご自分で確かめてみてはいかがだろう。
文=塩澤則浩(ENGINEWEB) 写真=望月浩彦
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