2015年の発表から早くも10年を経た2代目ボルボXC90に登場以来の大幅な改良が施された。国際試乗会にも参加したエンジン編集部ウエダが上陸したての上位モデル、T8に乗った。
染みついたクセみたいなものか、新しいクルマと向き合うときは、状況証拠を1つ1つ積み上げていく探偵になったような気分になる。あそこはどうか、ここはどうか。過去の体験と照らし合わせて結論付け、頭の中の本棚に報告書を収めていく。過去一度でも乗っていれば、ある程度は事前に予想ができるし、それが大きく外れることは、まずない。

でも、新しいボルボXC90は予想が覆った。なにせまず、デンマークとスウェーデンの二カ国を跨いで開催された3カ月前の国際試乗会の記憶と、目の前にあるXC90が、どうにもシンクロしない。
理由の1つは、その見た目。新しいグリルの中の斜めにクロスする桟が、あまり目立たない。1927年の最初の市販車、PV4/OV4がボルボの旗印であるアイアン・マークをラジエーター・グリルに配する際に補強が必要で付けられた、伝統ある斜めのバーから発想を得た、今後のボルボ内燃エンジン車のアイデンティティというべき新デザインなのに。

今回乗ったPHEVのT8の日本仕様のグリルは、桟も縁も黒く、従来のボルボのように一本だけ斜めのバーが輝いていた。細身で中空のT字型LEDライトや、改良前の水平基調ラインを廃した新しい顔つきとのマッチングそのものはすごくイイ。とはいえ桟が斜めに交差しているのは、よく見ないと分からない。あえて控えめな、クラシカルな仕立てのほうが、高価格帯となるT8の購入層には喜ばれるという判断だろうか。なおMHEVのB5のグリルは、桟も縁もよく目立つ明るいタイプが標準だ。

もう1つ予想外だったのは、T8では標準になるエア・サスペンションによる足まわりの仕上がりが良かったこと。全体的に挙動が大きめで、スウェーデン郊外の荒れた道路ではうねりや継ぎ目で身体が揺さぶられる感じが強く、機械式のダンパーを新たに採用したB5のほうがXC90というクルマのキャラクターに合っている、と僕は結論づけていた。けれど今回T8でわずかな時間ながら首都高3号線など段差が連続するシチュエーションを試すと、あたりは柔らかく、すっすっと上下動をきれいに収束する。走行モードを切り替えても基本的な印象は共通だ。