PHEVだからできる制御
「やっとウルスSEの試乗車が日本で用意できました」
そんな連絡を受けて、真っ先に手を挙げたのが私だった。昨年の秋に、イタリアのかかと部分に位置するレッチェの市街地やクローズドのグラベルコースでウルスSEのステアリングを握ったが、ワインディングロードは未体験だった。この宿題を持ち帰っていたこともあり、いち早く確認したかったというのが本音だ。

試乗ステージは箱根ターンパイク。別の場所での撮影前にしっかりと乗り込むことにした。
試乗前にウルスSEと、公式サイトにまだラインナップされるSやペルフォルマンテの外観を比べると、全体的に精悍さが増したことに気付く。新しいフロントフードの造形やシグネチャーライトの形状、リアエンドの折り紙を2つに折ったようなプレスラインが逞しさの主なエッセンスだ。わずかな筆さばきでスタイリングにもたらした、デザインの妙ともいえるアップデートである。

乗り込み、走行モードを切り替えるアニマは「ストラーダ」をセレクトして、EVモードでするすると走り出す。ファミリーユースを考えれば、この静けさは大きな価値であり、住宅街では発進時に近所の目を気にする必要もなくホッとする。
走行モードを「スポーツ」に切り替え、徐々にスピードを上げていく。モーターアシストが実に巧妙で、瞬発的なトルクデリバリーというよりは、エンジンとの繋ぎ役として見事な仕事をしてくれる。アクセル操作に対する反応も実に人間的で、電動化は単なるパワーの強化ではなく、ドライバーの動きに合わせてクルマを動かすために活用されていることが実感できる。

実際に、バッテリーの搭載による重量増に対応するため、トルク配分システムを従来のトルセンから、より軽量かつシンプルな電子制御多板クラッチへと変更。これにより、モーターとの統合制御の自由度が高まり、電動化ならではの新たなランボルギーニの走りを実現している。
そして、真骨頂は走行モードを「コルサ」にしてからだ。「スポーツ」では、少々遊び心のあるリア駆動よりの動きだったが、「コルサ」にするとビシッとライントレースするレーシングカーのような動きに変貌する。高速コーナーでは、破綻の「は」の字も見せず、左右の制御、ダンパーの動き、ロールの挙動がさらなる一体感を持って連携する。箱根ターンパイクを往復しながら、意地悪にステアリングを切るスピード、角度、アクセルの踏み方をいろいろ変えて試しても、「曲がれるかな…」と思う場面でも、しっかりとクリアできるのは、自由度が増した制御技術の賜物に他ならない。
巧みな制御による感情を揺さぶる走り。そう、これこそランボルギーニが実現したかったことであり、PHEVによる電動化は妥協ではなく、むしろ自ら選び取った最善の道だったことが明確に示されている。
文=佐藤 玄(ENGINE編集部) 写真=神村 聖
■ランボルギーニ・ウルスSE駆動方式 フロント縦置きエンジン+モーター4輪駆動
全長×全幅×全高 5123×2022×1638mm
ホイールベース 3003mm
トレッド 前/後 1695/1710mm
車両重量(車検証記載前後軸重) 2610kg(前1400/後1210kg)
パワートレイン形式 V型8気筒DOHC32V+ツインターボ+モーター
総排気量/ボア×ストローク 3996cc/86.0×86.0mm
最高出力 エンジン(モーター) 620ps/6000rpm(192ps/3200rpm)
最大トルク エンジン(モーター) 800Nm/2250-4500rpm(483Nm)
システム総合出力/トルク 800ps/950Nm
変速機 8速AT
ブレーキ 前/後 通気冷却式ディスク
タイヤ 前/後 285/45 ZR21/315/40 ZR21
車両価格(税込) 3150万円
【動画公開中】
(ENGINE2025年7月号)