2025.07.12

CARS

最新のポルシェ911に箱根で乗り比べ! カレラ/カレラT/カレラ・カブリオレ——992後期型を徹底比較


速さが善


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上田 今回乗ってGTSはGT3みたいに、Tは昔のカレラのようになったと思いました。

村上 ポルシェって2つの面があると思う。ひとつは運転して楽しいGT的なスポーツカーを作るということ。もうひとつは、サーキットで速いことが絶対的な善だということ。今回ハイブリッド・システムを搭載したGTSは明らかに後者だと思う。ボクスター、ケイマンが4気筒ターボになったときに、僕はどうしても馴染めなかった。ポルシェのエンジニアと話す機会があったときに、4気筒ターボはいかがなものか、音はイマイチだし、運転の楽しみも6気筒の方が良かったと言ったら、“それがどうした。前のモデルより速いだろう”って。彼はル・マン・カーの開発者だった。ポルシェには音がどうだろうが、フィーリングがどうだろうが、とにかく速いのが善だと考える人たちがいる。彼らにとっては4気筒ターボのボクスターはより良きものだった。



高平 あいつらに気持ちいいとかないから。でも、あんなに売れないとやっぱり音も大事だなということを学ぶわけですよ。あのポルシェでさえ読み違えることがある。

荒井 ではGTSはどうなんでしょう? 読み違えてない?

高平 僕はもうちょっと環境よりに出すと思っていたから、その驚きの方が大きい。

村上 それこそがポルシェの狙いですよ。高平さんみたいな人に“こう来たか!”と言わせたかった。

荒井 我々はハイブリッドと聞くとすぐに燃費みたいなことを考えるけれど、そんな考えに鉄槌をくらわしたということかな。

新井 とはいえ、乗用で使っているとGTSは2割ぐらいいい。ゆっくり走るとかなり燃費がいいです。カレラは6km/リッター台だったけどGTSは8km/リッター台が出てた。

高平 昔、ヴィーデキング社長が「われわれは幻想を売っている会社だから」と堂々と言った。それは圧倒的なレース実績と技術が後ろにあるからだよね。サーキットで速いクルマが作れなければ、運転して気持ちいいクルマなんて作れない。

村上 ポルシェはその2つの面を上手に使い分けてきた。今回のGTSに関しては速さが善という方に振ってある。

荒井 自分で74年型911のエンジンを下ろして整備しているというオーナーを取材したんです。エンジンをバラして驚いたのは、パーツのひとつひとつにレースからのフィードバックがあることだと言ってました。

村上 GTSにはポルシェのクルマ作りの凄さを見せつけられた気がする。

高平 ここまで手の込んだものを誰が買うんだろう?

荒井 速いのが欲しい人でしょう。

高平 ターボやG T 3 じゃダメなの?

村上 ターボやGT3はこれから出るんだろうけど、いまの時点でカレラではなくGTSを選ぶ人は速さを求めるんだと思う。

高平 確かに蹴りだしはすごいよね。普通の人が街の交差点を曲がるだけで、オレのクルマは鋭いぜと思える。

上田 リア・モーター後輪駆動のBEVに乗る機会が多くなったから、後輪のトルクがイッキに立ち上がるのには慣れた感じだったのに、GTSはそれ以上に凄かった。

村上 最後にみんなに聞きたい。GTSも含めて最新のポルシェ911は最良の911でしたか?

新井 好みの問題じゃないですか。走りにパンチがいらないんだったら、992前期型の方がエンジンは気持ち良かった。

高平 992前期型にはカレラのMTがあったよね。これが欲しいなと思った。右ハンドルが嫌だと言う人も多かったけど、俺はこれでいいよと思った。今回のGTSみたいにガチガチにスゴイやつになっちゃうと、これは普段使いには無理だと思う。あのフルバケット・シートは反則でしょう。

村上 僕は機械として見れば、やっぱり最新は最良なんだなと改めて思った。

荒井 サーキットへ行く人は間違いなくGTSがいい。

新井 それはそうでしょうね。

村上 GTSは可変スタビのPDCCも400Vのバッテリーで動かしている。だから反応が電光石火でサーキットではすごく生きてくる。

新井 991でターボにトルクベクタリングが付いたときに、カレラとターボは別ものだと感じた。それと同じように今回のGTSもちょっと異次元のところにあると思いました。

上田 そうですね。今回の4台はGTSとそれ以外という感じでした。

高平 GTSだけカップ・タイヤみたいな溝の浅いタイヤを履いていた。もう硬派感がバリバリだよね。GTS以外の3台で感じるのは、サーキットでトラクション・コントロールをオフにしてトライしようかなと思えること。昔はそんなことをしたらどうなっても知らないよという雰囲気があった。最新の911はそこが一番違うところかな。

語る人=高平高輝+荒井寿彦+村上 政(ENGINE編集部)+新井一樹(ENGINE編集部)+上田純一郎(ENGINE編集部) まとめ=荒井寿彦 写真=望月浩彦

■ポルシェ911カレラ
駆動方式 リア縦置きエンジン後輪駆動  
全長×全幅×全高 4545×1850×1300mm  
ホイールベース 2450mm  
車両重量 1570kg  
エンジン 直噴水平対向6気筒ターボ  
排気量 2981cc  
最高出力 394ps/6500rpm  
最大トルク 450Nm/2000~5000rpm  
変速機 8段デュアルクラッチ式自動MT  
サスペンション(前) マクファーソン・ストラット/コイル  
サスペンション(後) マルチリンク/コイル  
ブレーキ(前&後) 通気冷却式ディスク  
タイヤ(前/後) 235/40ZR19 295/35ZR20  
車両本体価格 1853万円  

■ポルシェ911カレラGTS
駆動方式 前1モーターフロント輪駆動  
全長×全幅×全高 4595×1850×1665mm  
ホイールベース 2775mm  
車両重量 1630kg  
エンジン 直噴水平対向6気筒ターボ+モーター  
排気量 3591cc  
最高出力 541ps/6500rpm(システム計)  
最大トルク 610Nm/2000~5500rpm(システム計)  
変速機 8段デュアルクラッチ式自動MT  
サスペンション(前) マクファーソン・ストラット/コイル  
サスペンション(後) マルチリンク/コイル  
ブレーキ(前&後) 通気冷却式ディスク  
タイヤ(前/後) 245/35ZR20 315/30ZR21 
車両本体価格 2379万円  

■ポルシェ911カレラT
駆動方式 前1モーターフロント輪駆動  
全長×全幅×全高 4595×1850×1665mm  
ホイールベース 2775mm  
車両重量 1510kg  
エンジン 直噴水平対向6気筒ターボ  
排気量 2981cc  
最高出力 394ps/6500rpm  
最大トルク 450Nm/2000~5000rpm  
変速機 6段MT  
サスペンション(前) マクファーソン・ストラット/コイル  
サスペンション(後) マルチリンク/コイル  
ブレーキ(前&後) 通気冷却式ディスク  
タイヤ(前/後) 235/40ZR19 295/35ZR20  
車両本体価格 2006万円  

■ポルシェ911カレラ・カブリオレ
駆動方式 前1モーターフロント輪駆動  
全長×全幅×全高 4595×1850×1665mm  
ホイールベース 2775mm  
車両重量 1620kg  
エンジン 直噴水平対向6気筒ターボ  
排気量 2981cc  
最高出力 394ps/6500rpm  
最大トルク 450Nm/2000~5000rpm  
変速機 8段デュアルクラッチ式自動MT  
サスペンション(前) マクファーソン・ストラット/コイル  
サスペンション(後) マルチリンク/コイル  
ブレーキ(前&後) 通気冷却式ディスク  
タイヤ(前/後) 235/40ZR19 295/35ZR20  
車両本体価格 2110万円  

(ENGINE2025年6月号)
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