クルマのデザインは、そのモデルのキャラクターや印象を決定づける要因のひとつだ。今回は、「デザインの力ってすごい」と言わしめたキャデラックの最新BEV リリックを荒井寿彦がレポートする。
走るコンサート会場と思えるほど静粛性が高いリリック
車内で流れているのは、今年のフジロックで格の違いを見せつけた山下達郎の『SPARKLE』だ。テレキャスターが刻み続ける16ビートのカッティング、それを支えるベースとドラムなど、それぞれの音像がとてもクリアで曲の成り立ちが手に取るようにわかる。
かなりの音量だが低音領域にひずみがない。この素晴らしいサウンドは19個のスピーカーで構成されるAKGのシステムによるものである。

▲19個のスピーカーからなるAKGのサウンド・システムが素晴らしい。世界カーオーディオ選手権があったなら間違いなく上位入選

▲ヘッドレストにもスピーカーを備えるAKGのサウンド・システム。サラウンド音響はフェーダーをリア中心にした方が立体感が増す
私はキャデラック・リリックのステアリングを握り、千葉県の富津海岸に向かっている。
素晴らしいサウンド・システムが効力を発揮しているのは、リリックが電気自動車であるということだけではない。吸音材や制振材をボディのいたるところに使い、フロントとサイド・ウィンドウを2重ガラスにし、さらにノイズ・キャンセレーション機能を備えるなど、ボディ内外部からのノイズを徹底的に排除し、静粛性が高められているからだ。
したがって無粋なロードノイズや風切り音は皆無。リリックは高速道路を走るコンサート会場である。
「ウソだろ!」と呟いてしまうほど強烈な加速は映画のワープ・シーンのようだ
ドライビング・モードを「スポーツ」にして、料金所からの加速を試みると、思わず「ウソだろ!」と呟くような強烈な勢いでリリックはダッシュした。音もなく景色が強烈なスピードで後方へ流れていく。映画で観たワープ・シーンのようである。

日本向けのリリックは前後にモーターを備えた4WDのみとなる。フロント・モーターは最高出力231ps、最大トルク309Nmを発生、リア・モーターのそれらは328ps、415Nmである。システム全体では522ps、610Nmを発生する。

▲バッテリー容量は95.7kWh。1充電における最大航続距離は510km。自宅で通常使用する100Vのほか、200V電源での充電も可能。CHAdeMO方式の急速充電にも対応する
一般道におけるリリックの魅力は乗り心地がいいことだ。サスペンションの動きがとてもスムーズで荒れた路面でも不快な突き上げを感じることはなかった。