クルマのエンジンには、直列・V型・水平対向・ロータリーなど、さまざまな型がある。今回は、それぞれのエンジンの特徴を簡単にまとめて紹介しよう。クルマのことやエンジンのことについて知りたいと考えている方やこれからクルマ選びをしようとしている方は、ぜひ参考にしていただきたい。
定番の「直列エンジン」はバリエーションが豊富
直列エンジンは、エンジンの中でも定番の型で、さまざまなクルマに搭載されている。
直列エンジンのバリエーションは、2気筒、3気筒、4気筒、5気筒、6気筒など多岐にわたる。クルマに搭載される直列エンジンに多いのは、3気筒または4気筒。一部のモデルやグレードには直列6気筒が搭載されることがある。また、アウディは直列5気筒エンジンを製造しているが、搭載される車種はごく一部となっている。

直列エンジンのメリットは、低コストで製造でき、V型エンジンや水平対向エンジンと比べるとメンテナンス性に優れているという点だ。ただし、気筒数が増えると、エンジンそのものの長さが長くなったり、部品に負荷がかかり故障しやすくなったりする。

そのため、気筒数を増やしたいときやエンジン排気量をアップさせたいときは、次に解説するV型エンジンを採用する場合が多い。すなわち、直列エンジンは、小排気量エンジンやサイズの小さいエンジン向きといえる。
全長を短くできる「V型エンジン」は大排気エンジンにも適している
大排気量エンジンや気筒数を増やしたい場合に採用されることが多いのがV型エンジンだ。
V型エンジンのバリエーションは、V6、V8、V10、V12など、気筒数が偶数になる場合が多い。V型エンジンは、直列エンジンよりもそれぞれのシリンダーを近づけて配置することができるため、エンジンそのものの全長を短くすることができる。

ただし、直列エンジンよりも複雑な機構となるため、パーツ点数が増えたり、製造に時間がかかったりするため、コストが高くなる傾向にある。
かつて、スポーツカーやスーパーカーなどはV型エンジンを搭載することが多くあったが、近年では大排気量V型エンジンは絶滅危惧種だ。もし、エンジン排気量が大きいV型エンジンのクルマに乗りたいのであれば、早めに手に入れておくとよいだろう。
低重心が特徴の「水平対向エンジン」は左右のバランスが良いこともポイント
水平対向エンジンは、現在(2025年時点)スバルとポルシェのみ製造しているエンジンだ。
左右のピストンが対称に動き、エンジンの振動を打ち消し合うことが特徴の水平対向エンジンは、左右のバランスに優れたエンジンといえる。また、シリンダーが水平に配置されているため、エンジンそのものの重心高を下げることができるのも水平対向エンジンならではのポイントだ。

一方、水平にシリンダーが配置されているが故に、エンジンの幅が広くなるという点がデメリットだ。よって、車両の全幅が大きくなりやすい。また、整備性という面では、直列エンジンやV型エンジンと比べると悪い傾向にある。
そして、水平対向エンジンを語る上で忘れてはならないのが、独特なエンジンサウンドだ。このエンジンサウンドの虜になる人も多い。そのため、水平対向エンジンは、人を魅了するエンジンともいえる。
軽量コンパクトで高出力な「ロータリーエンジン」はスムーズな吹け上がりが魅力
人を魅了するエンジンは、水平対向エンジンのほかにもある。それが、マツダが唯一市販化することに成功したロータリーエンジンだ。
ロータリーエンジンは、三角型のローターが回転する過程で、吸気・圧縮・燃焼・排気を行う独特な構造のエンジンとなっている。

これまで解説してきたエンジン(直列・V型・水平対向)は、シリンダーの中にあるピストンの往復運動で回転運動を発生させる構造だが、ロータリーエンジンはローターの回転運動をそのまま動力として利用することができる。そのため、出力が高いことも特筆すべきポイントだ。
また、エネルギーを発生させる工程そのものが回転運動であるため、スムーズに上昇するエンジン回転を楽しめるのも魅力となっている。
ただ、一般的なエンジン(直列やV型)と比べると低回転域などでの効率が悪いため、燃料を多く消費するのがデメリットだ。
唯一無二のロータリーエンジンは、回転運動をそのまま利用できる理想的なエンジン。効率の悪さが改善されれば復権する可能性は十分にある。

今までロータリーエンジンを作り続けてきたマツダは、これからもロータリーの研究・開発を続けるとしているが、次期ロータリーエンジン搭載車は公表されていない。今後、新たなロータリーエンジンで、クルマ好きをワクワクさせてくれる日が来ることを期待したい。
エンジンを選んで乗れるのは今がラストチャンス?
自動車業界は、環境問題や電動化などの理由で揺れ動いている。今起きている大きな変革期では、内燃機関、ハイブリッド、プラグインハイブリッド、燃料電池、電気自動車など、さまざまなパワーユニットが登場した。
これほど多種多様なエンジン(原動機)が出回っている時代は珍しいといえるだろう。

そのため、エンジンにこだわってクルマ選びをするのであれば、さまざまなタイプのエンジンが販売されている今が大きなチャンスといえる。
今後は、エンジンを搭載したクルマが減少したり、環境問題の観点から生産中止になるエンジンが増える可能性が高い(もしかしたら内燃機関が復権するかもしれないという可能性もあるが)。もし、乗ってみたいエンジンがあれば、今のうちに乗り換えたり、購入したりしておいた方がよいのかもしれない。
文=齊藤優太(ENGINE編集部)
(ENGINE Webオリジナル)