かつてケータハム・セブンを卒業したような生粋のエンスージァストに愛され、一般道もナンバーを取得し走っていたイギリスのラディカル社のレーシング・スポーツカーをご存じだろうか? それから十数年の時を経て、ラディカルはサーキット専用のレーシング・マシンとしてふたたび上陸を果たした。新たな輸入元によって導入された「SR3 XXR」という1.5リットル4気筒搭載モデルに、モータージャーナリストの桂 伸一がTHE MAGARIGAWA CLUBで試乗した。
ラディカルが日本へ帰ってきた!
こんなに痛快な思いをしたのはいつ以来だろう! 試乗したメンツは自動車ジャーナリスト業界で国際ライセンスを持ち、F1、インディ、ル・マン、ニュルブルクリンクを経験している武闘派だが、その猛者たちがみんな満面の笑みで降りてくる。久しぶりにヘルメットの重さを感じる横Gを受けて、肩から首に凝りが出る。こんな人的変化もレーシング・カーらしい。

レーシング・カーそのもののラディカルを、かつて一般公道、芦ノ湖スカイラインで試乗したのは、もう十数年前に遡る。もちろんサーキット試乗も行いその速さも経験しつつ、ハコ車では味わえない動きに、当時多くのドライバーをサーキットに導くことにも貢献した。
時は流れ、躍進を続けたラディカル社は世界で最も多くのレーシングカーを販売する企業に成長。ワンメイク・レースやスポーツカー・レースに出場可能なレーシング・カーを送り出している。
そして2025年、ラディカルはクラフト・バンブー・レーシングと手を結び、ラディカル・ジャパンを設立した。同時に、世界14カ国で開催されるワンメイク・レースを、2026年に日本でも開催予定と発表。さらにラディカルのベスト・セラー、SR3 XXR のテスト・ドライブが催されたのだ。

試乗は千葉のTHE MAGARIGAWA CLUBを占有して行われた。実は驚いたことに、このコース、業界走り系ジャーナリストが誰ひとりも経験していないという。
事前にマーシャル・カーでコース・ドリルのため2ラップする。前半は下り坂中心のストレートと中速コーナーが、もう一本のストレートとつなぐ。後半は下った分を急勾配で取り戻すS字とブラインド・コーナーの連続だ。
いや、これがチャレンジングで実に面白い。レース・コースではないことが惜しい気もするが、MAGARIGAWAは海外からのメンバーも多いという理由が納得できる。変化に富んだコース・レイアウトは楽しく、スピードも存分に味わえ、飽きることがないからだ。
日産GT-Rニスモ並みの加速性能!
いよいよラディカルSR3 XXRに乗り換え、特性を確認する時がやって来た。試乗するのは中央席のみのシングル・シーター仕様。コース・イン〜アウトまでひとりに与えられる時間は僅か4ラップ!! そんな短時間で何かを探り出せるのか? そこを引き出すのが我らの仕事とはいえ、どこまで分かるのか不安ではある。

SR3 XXR、まず感じるのは軽さだ。パイプ・フレーム構造のシャーシとFRPとカーボンを含む複合素材によって車両重量はわずか620kg。身のこなしの軽快感が際立っている。そしてすぐに10000rpmに達する、突き抜けるようなエンジンの回転フィールとサウンド! 瞬時にアップ〜ダウンを展開する小気味いいシフト・フィールも現代のレーシング・カーに通ずる。

エンジンは1.5リットル4気筒のスズキ製をベースにラディカルが開発、チューニングを施し、最高出力は232馬力に達する。……と、そこだけを見ると「なーんだ」となるが、車重はなにせ620kgしかないから、パワー・ウエイト・レシオは2.6kg/psだ。日産GT-Rニスモが2.9kg/psと聞けば、その加速性能がいかに凄まじいか想像できる。

ステアリング・ホイールのダイレクトな応答性や、加減速とステア操作によるボディ前後左右の安定性、そしてブレーキ・ペダルのタッチと急減速の度合いを確かめ、瞬時に安心感のカタマリだと分かる。