2026.01.02

LIFESTYLE

リビングはまるで美術館 現代アーティストの夫妻が住むと室内空間も光と色彩があふれる芸術作品になる

吹き抜けのリビングルームには、カラフルな美術品が数多く飾られている。現代アーティストの竹村京さんと鬼頭健吾さんは、大きな美術館で展覧会が行われることが多い、著名な芸術家だ。

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よく練られた設計

ところが、希望通りの土地を手に入れるのは簡単ではなかった。一時はハウスメーカーで家を建てる条件で、セットで販売されていた土地を検討したことも。最後は、地元の方から土地を譲り受け、別のハウスメーカーで家を建てることで落ち着いた。敷地は必要としていたよりも広いが、許容範囲である。敷地近くの千年以上の歴史を持つ神社が、竹村さんの先祖と関係があったのも、不思議な縁だった。

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鏡が張られた階段下。

「最初、家の設計は僕らでもできるのではないかと想像していましたが、自分たちには手に負えないことが分かりました。ハウスメーカーの家ですが、外部の建築家も起用できる契約だったので、プロに頼むことにしました」と鬼頭さんは振り返る。声を掛けたのは、高崎で親しくしているギャラリーの改装を手掛けた、園田慎二さんだ。

最初に、「デザインしすぎの家にだけはしないでください」と、お願いした鬼頭さん。5年前にできあがった家は、静かな住宅街に溶け込む「普通」の外観をしている。だが、設計をよく見ると、使い勝手を熟考した跡が随所にみてとれる。例えば、二世帯住宅の間取りは、ひとつの建物を道路側と奥側とで二つの家族用に分けたもの。庭は広く、どちらの家からも眺めは良い。

しかも二つの家族は、リビングにある黄色い扉を通って簡単に行き来ができる。両親は、階段を上り下りすることなく、夫妻の家のダイニングで一緒にテーブルを囲めるのが良い。竹村さんのアトリエは、生活空間から一番離れた位置に設けられた。夜中に制作する彼女にとって、音を気にせず集中できるうえ、庭に面しているので作品の搬出入もしやすい部屋だ。

ダイニングルームと奥のリビングは、天井高を変えて変化を持たせた。両者を仕切る棚は、鬼頭さんの依頼で園田さんがデザインしたもの。扉の色も何種類かある。

だが、この家の魅力は、なんと言ってもインテリアである。園田さんは、2人のアーティストの個性をよく分析したうえで、ほどよい塩梅で細部をデザインした。色ガラスや鏡、色付けされた扉などは、鬼頭さんの作品に通じるモチーフだ。カーテンの素材感は、竹村さんの作品のようでもある。飾る作品が映えるようにと、リビングの壁は一部だけを薄いグレーに塗った。ハウスメーカー指定の職人たちも、園田さんとの家作りを楽しんだという。結果、完成したのは、美術作品のような家。まさにここでの暮らしは、創造を生業とする2人にとっての、インスピレーションの源であるようにも感じられた。

文=ジョー スズキ(デザイン・プロデューサー) 写真=田村浩章

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建築家:園田慎二 1979年東京生まれ。東京芸術大学大学院を修了後、LOFT青木淳氏の設計事務所に勤務。プロダクトデザイン、会場構成、国内外のコンペ用作品、公共施設の設計等を担当する。2016年に独立。自身の事務所を横浜に構える。高崎で改修を手掛けたギャラリーは、床面積が300平方メートルに近い大きなもの。先ごろ、手掛けた住宅の「九つの庭と」で、日本建築家協会優秀建築選に選ばれる。写真は、富山で計画したIT企業のオフォスの模型。建物の中央部の赤い螺旋階段と屋根の形が特徴。前橋工科大学、京都芸術大学非常勤講師。


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