2025.12.14

LIFESTYLE

我々の暮らしの豊かさを底上げするアイディアとは 天井・床・壁の新しい形を考える住宅の未来

FLOOR “人やモノを支えるもの”という床の本質を捉え直した、これまでにない床の形。本来、焼却されるはずだった籾殻や古紙をアップサイクルした窯業系素材「textone(テクストーン)」が使われている。今回のインスタレーションは、実際にLIXILが製品化している環境配慮素材で構成。

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先ごろ行われたDESIGNART TOKYO 2025で、LIXILが意欲的なインスタレーションを発表。それは住空間の新たな可能性を模索するものだった。

住空間を構成する床や壁、天井は、直線や平面だけで形づくられている。

CEILING /天井の役割は“構造体を覆うこと”。その考えから面ではなく、線=細長い棒で構成される天井が生み出された。それぞれの棒にはLIXILのアルミ塗装技術が活用され、光を反射させる光沢仕上げのものと、壁や天井に調和するマット仕上げのものが組み合わされている。

こんな“常識”を覆す、意欲的なインスタレーションを先ごろ、渋谷で開催されていたDESIGNART TOKYO 2025で見た。住宅設備・建材メーカーのLIXILが出展した「無為に斑 - 空間構成要素の再構築 - 」である。

無為に斑(むいにむら)、とは耳慣れない言葉だが、無為とは作為的ではない自然の状態、斑は多様性やゆらぎ、個性の象徴を指す。つまり、これまで当たり前とされてきた概念に、異なる考え方や手段を取り込むことで、新たなる空間やライフスタイルの可能性を提示していこう、という試みだ。

WALL /壁の本質は“空間を区切ること”。アルミ押し出し材でできた筒を自由に組み合わせることでできあがった壁が、緩やかに空間を仕切っている。素材として使われているのは、製造時のCO2排出を大幅に削減できる循環型低炭素アルミ「PremiAL(プレミアル)」。

たとえば人やモノを支える床は元来、平らなものである。ならば、ひとつの面ではなく、小さな細い面を積み重ねたものも床と呼べるのではないか?  LIXILが提案する三次元の床は、椅子のように座ることもできれば、テーブルとして食事や書き物もできる、きわめて機能的なものである。

同様に空間を覆う天井だってフラットなひとつの面である必要はなく、たくさんの線を組み合せた開放感のあるものにしてみれば、部屋全体が広く感じられるかもしれない。さらに、高さの異なる、筒状のアルミ押し出し材を組み合わせてつくった壁であれば、ところどころに抜けをもたせながら、空間を完全に遮断するのではなく、緩やかに区切ることができる……。

これらの提案は、そのまま商品化されるものではないが、固定観念にとらわれない自由で斬新な発想が、実現可能な新たなるアイデアを生み出す。それは我々の暮らしの豊かさを底上げすることにもつながるのである。

文=永野正雄(ENGINE編集部) 写真=LIXIL

LIXILのインハウスデザイナーたち。これからのLIXILを担う若き戦力として、今回のインスタレーションなど、柔軟な発想で新たなるデザイン創出に挑戦する。 ■「無為に斑」のホームページ https://www.lixil.co.jp/s/muinimula/
LIXILのインハウスデザイナーたち。これからのLIXILを担う若き戦力として、今回のインスタレーションなど、柔軟な発想で新たなるデザイン創出に挑戦する。
■「無為に斑」のホームページ https://www.lixil.co.jp/s/muinimula/

(ENGINE2026年1月号)

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