シトロエンが、小型マルチ・パーパス・ヴィークルのコンセプト・モデル、「エロゥ」(ELO)を発表した。車名の語源は、休養からレジャー、仕事まで、幅広い用途を示す単語から抜き出したアルファベットを、語呂よく並べたものだ。
何者にも似ていない、まさにこれぞシトロエンらしいスモール・カーの可能性を探る1台
「シトロエン・エロゥ」のボディ・サイズは全長が「C3」と同等の4.1m。全高は1.7mで全幅は1.92mだ。パワーユニットが電気となる低床のミニバンで、コンパクトなサイズに斬新なデザインやアイデアを盛り込むのは、2022年の「オリ」(OLI)コンセプトに続くものといえる。シート配置は3+3の2列6人乗りとなる。

平面と曲面を織り交ぜたボディ・ラインや、3セクション構成のヘッドライトも、「オリ」のテイストに通じるものだ。

テールライトは、「C5エアクロス」のライトウイング・コンセプトを採用するが、縦方向のモジュールは2分割されている。

左右非対称のダブルバック・ドアは、バンなどを参考にしたもの。リア・ウインドウはルーフ後端まで回り込んでおり、開けた際の積載高を稼ぐとともに、車内のベッドに横になれば夜空を楽しめる。
光の具合でオレンジや赤、黄色と見え方の変わる色に塗られた個性的なエクステリア以上に、興味深いのがインテリアだ。

前後方向に開く観音開き型のスライド・ドアを開くと、ボディ・サイズからは思いもよらないほど広い空間が現れる。

前席はセンター・コックピットで、シートは回転して後席と対面することもできる。

中央に配置したステアリング・ホイールは、1955年登場のオリジナル「DS」に見られたようなシングル・スポーク・タイプ。センター・パッドには、“E”、“L”、“O”という車名の由来となった“REST”/“PLAY”/“WORK”の3単語が記され、左右にはデジタル・デバイスの操作を行うジョイスティック型のボタンが。その向こうには「オリ」でも見られた、スマート・バンドと呼ばれる情報表示部が設置されている。

後席はソファ風の3座で、独立脱着式。アウトドアでアームチェアとして使えるほか、背もたれを前に倒し、天井から吊るしたマットレスを設置するといったアレンジにも対応する。

このマットレスは、フランスのスポーツメーカーである「デカトロン」が手がけた、インフレータブル・カヤックなどに用いられるドロップ・スティッチ素材を使用。膨張式で、空気入れも車載されている。

左右席の下には補助席的なチェアー型シートが収納されており、前席のすぐそばまでスライドすることが可能だ。電気自動車ならではのフラットなフロアにより、車内の移動もシート・アレンジを問わず楽にできる。

シートの表面は、モジュール性を最大限まで高めるべく、板チョコレートのようなキューブ状パターンのパッドを敷き詰めた。インテリアの壁面には、スポーツウェアにインスパイアされた立体的なストレージが配置される。

タイヤは、グッドイヤーが担当。

シトロエン100周年に発表した「19_19コンセプト」以来のパートナーシップで、今回は“イーグルXプロアー”と銘打ったコンセプト・タイヤを開発。
空気圧や摩耗状態をモニターするグッドイヤー・サイトライン技術を採用。リムの構造は一般的なものだが、サイド・ウォールはハニカム・デザインのホイールと連続性のあるデザインで、センターには空気圧の状況を示すLEDインジケーターが設置されている。

クルマが拡大の一途を辿るなか、シトロエンの提案するボディ・サイズに頼らないクルマづくりは歓迎したい。電動化だけでなく、小型・軽量化を環境対応策に織り込むメーカーが、増えることを望むばかりだ。
「シトロエン・エロゥ」のデビューは、2026年のブリュッセル・モーターショーと予告されている。
文=関 耕一郎
(ENGINE Webオリジナル)