2025.12.19

CARS

【海外初試乗】フェラーリの新型V8FRクーペ「アマルフィ」 ローマと違ったのはデザインだけじゃない!価格は3418万円から

新型フェラーリ「アマルフィ」に、ENGINE編集部ムラカミがポルトガルで初試乗

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洗練されていて穏やかな走り

走り始めてすぐに気づいたのは、乗り心地がローマより格段に良くなっていることだった。むろんスポーツカーならではの芯の硬さはあるものの、街中で低速走行していても、まったく不快には感じない。これは、アマルフィのようなエレガントな2+2クーペにとっては大きなアドバンテージになるだろう。

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いや、乗り心地がいいだけではない、走る、曲がる、止まる、のクルマの基本動作のすべてにおいて、振る舞いが格段に洗練されて穏やかなものになっている。ステアリングを切り込んでいく時のフィールがいいだけでなく、その時のクルマの動きの正確さが素晴らしい。アクセル操作に対するエンジンのレスポンスも、まるで自然吸気のようにリニアだ。そして特筆すべきはブレーキで、繊細なタッチにミリ単位で反応してくれるような精度の高さが感じられる。

そこで思い出したのは、見た目のエレガントさとは裏腹に、乗ってみると驚くほどワイルドな味付けを施されていたローマの乗り味のことだった。スロットル・レスポンスも、ハンドリングも、ブレーキのタッチも、想像以上にシャープかつアグレッシブで、初めて乗ったときには呆気に取られたほどだった。しかし、それがフェラーリのクルマづくりだと思い、慣れてしまえば、それはそれで楽しいスポーツカーだったのだ。

しかし、アマルフィは、その方向性とはかなり違うクルマづくりの哲学によってチューニングされているようだ。ローマの後継車であるアマルフィは、アルミモノコックの基本骨格も、フロントミドシップにウェットサンプ式3.9リッターV8ツインターボを搭載し、リアアクスル上に置かれた8段DCTを介して後輪を駆動するパワートレインも、基本はローマからそのまま受け継いでいる。では、違うのは何か。電子制御系のシステムが、まったく新しいものに進化しているというのだ。



もっと具体的にいうと、新たにブレーキ・バイ・ワイアが導入されている。それに加えて、ABSエヴォ、サイド・スリップ・コントロール6.1、EPS(電動パワーステアリング)、ADAS(運転支援)といったデバイスを、すべて統合制御する電子制御システムが最新のものにバージョンアップしたことで、この乗り味が生み出されたことになる。

街を抜け、バイパスを通って、山道へと向かう。乗れば乗るほど、このクルマの運転のしやすさと、洗練された乗り味に惹きつけられていく自分がいた。エンジンは20psパワーアップして640psになったことよりも、カムやクランクの軽量化などの改良によって、よりスムーズな吹け上がりを得たことの方が重要だと感じられる。

マネッティーノのダイヤルを回して、ドライブ・モードをコンフォートからスポーツに切り替えて、ダンパーがソフトやミディアムからハード側に切り替わっても、乗り心地は特に悪くならない。排気音も急に派手なものになったり、スロットルを閉じた時にボコボコと音がするようになることもない。朗々と響くV8のバリトンの美声が少しだけ多く響き渡るようになるだけだ。



こんなに洗練されていて、ある意味で、こんなに控えめなフェラーリに乗ったのは初めてである。フェラーリを運転するのは、いつだって強い緊張感を伴うものだが、ことアマルフィに関してはそれが極端に減って、速く走りたいという焦燥感よりも、クルマと一体になって運転を楽しみたいという、ゆったりとした気分の方が強くなっていたように思う。

とにかく、山道を走っている時の楽しさは、筆舌に尽くし難いものだった。コーナーに向けて頑張らなくても、正しく運転してさえいれば、とても気持ち良くクルマが減速し、曲がり、加速していってくれる。

きっと、電子制御のコンピューターがものすごい速さで計算し、小人みたいな何者かが、私の運転を助けてくれていたのかもしれないけれど、そんな小人の存在など、まるで感じられないくらい素直に、自然に、思い通りに動いてくれることが、このクルマの真骨頂と言えるのではないか。

よりエレガントに、よりスポーティになったアマルフィは、フェラーリが新境地を拓いた傑作だと思った。

文=村上 政(ENGINE編集部) 写真=フェラーリS.p.A.



■フェラーリ・アマルフィ
全長×全幅×全高 4660×1974×1301mm
ホイールベース 2670mm
車両重量 1470kg
エンジン形式 V型8気筒DOHC32Vツイン・ターボ、ウェットサンプ
排気量 3855cc
エンジン最高出力 640ps/7500rpm
エンジン最大トルク 760Nm/3000-5750rpm
サスペンション(前) ダブルウィッシュボーン/コイル
サスペンション(後) マルチリンク/コイル
ブレーキ(前) 通気冷却式カーボンセラミック・ディスク
ブレーキ(後) 通気冷却式カーボンセラミック・ディスク
トランスミッション 8段DCT
タイヤ(前) 245/35R20
タイヤ(後) 285/35R20
車両本体価格(税込) 3418万円〜

(ENGINE Webオリジナル)

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