2024.11.16

CARS

こんなの、もう出てこない トヨタ・ランドクルーザー70とマツダ2 自動車評論家の渡辺敏史が推すのは日本市場ならではの、ディーゼル搭載実用車だ!

渡辺敏史がマツダ2 XDスポーツ・プラスとトヨタ・ランドクルーザー70 AXをドライバーズカーとして選んだ理由とは?

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世界のナナマル

対すれば、変わらぬ良さをいかに湛え続けるかに腐心しているのが「ナナマル」ことランドクルーザー70だ。変わらない理由、その第一義はもちろん悪路性能にある。単にアクティブな走破性だけを指す話ではない。もっともシンプルかつプリミティブなメカニズムを継続して採用し続ける、これによって修理の術や部品の在庫などが継承され、世界の極地で走り続けることを任とするナナマルたちの延命がはかられる。登場から40年、その歴史はランクルのアイコンともいえるヨンマルのそれを遥かに超えている。

リアのリーフ・スプリングの枚数を減らすなどした改良が施され、乗り心地は以前の70シリーズに比べ格段に進化。内装はほとんど進化していないように見える一方、外装はLEDヘッドライトや衝突安全を考慮したバンパーを採用するなど、ずいぶん印象が変化した。ボディ・タイプは4ドアのバンのみでピックアップはなく、グレードも試乗車の“AX”のみとなる。
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誕生30周年の際には日本でも再販されたナナマルだが、その際はガソリンエンジン+5段MT+1ナンバーの組み合わせで、居住性や快適性の面では難があった。それでも歓喜したファンによって、当時の個体はプレ値を維持し続けている。





そして40周年の現行型は、ディーゼル+6段AT+3ナンバーと、フェイスリフト以上に中身の更新ぶりが際立っている。ランクル150や250系にも搭載される2.8リッターユニットは低回転域から過不足のないトルクを粘り強く発してくれるおかげで、悪路でのアクセルワークにも気遣うことがない。さすがに100km/h超の高速域ではインジェクターノイズも立ってくるが、同時にロードノイズや風切音も盛大になる。心地よく巡航できる速度域は自ずと100km/h程度に落ち着いてくる、その域では11km/リッターくらいの燃費が出ることもあって、130リッターの燃料タンクをフルに使えば九州や北海道も移動の範疇に入ってくるわけだ。



この日本離れしたスケール感とタフネスぶりを満喫するに、3ナンバー化に併せてバネやダンパーのセッティングを変更。乗り心地がすばらしく整ったのも多くの人には朗報だろう。高速巡航が苦にならないほど柔らかくなったサスは、副産物として悪路でのアシの動きにおいても柔軟性が高まっているという。

操舵や制動などで逐一感じる重機のようなフィードバックは相変わらずだが、これもまた、移動を特別なひと時に感じさせる大事なスパイスだ。絶壁のダッシュやドアトリムに囲まれたキャビンの中にいて、細いピラー越しに景色を眺めていると、走るタイムマシンを手に入れたような心持ちにさせられる。仮に悪路に乗り入れずとも、過去と今とを繋いでくれる私設特急に毎日乗れる、そんな時間的贅沢もまたひとつのドライビング・ファンではないだろうか。

文=渡辺敏史 写真=郡 大二郎


■マツダ2 XDスポーツ・プラス
駆動方式 フロント横置きエンジン前輪駆動
全長×全幅×全高 4080×1695×1525mm
ホイールベース 2570mm
車両重量 1120kg
エンジン形式 水冷直列4気筒DOHC直噴ターボ・ディーゼル
ボア×ストローク 76×82.6mm
排気量 1498cc
最高出力 105ps/4000rpm
最大トルク 22.4kgm/1400-3200rpm
トランスミッション 6段MT
サスペンション(前) マクファーソンストラット/コイル
      (後) トーションビーム/コイル
ブレーキ(前/後) 通気冷却式ディスク/ドラム
タイヤ(前後) 185/60R16
車両本体価格 245万7400円

■トヨタ・ランドクルーザー70 AX
駆動方式 フロント縦置きエンジン4輪駆動
全長×全幅×全高 4890×1870×1920mm
ホイールベース 2730mm
車両重量 2300kg
エンジン形式 水冷直列4気筒DOHC直噴ターボ・ディーゼル
ボア×ストローク 92×103.6mm
排気量 2754cc
最高出力 204ps/3000-3400rpm
最大トルク 51kgm/1600-2800rpm
トランスミッション 6段AT
サスペンション(前) リジッド/コイル
      (後) リジッド/リーフ
ブレーキ(前/後) 通気冷却式ディスク/通気冷却式ディスク
タイヤ(前後) 265/70R16
車両本体価格 480万円

(ENGINE2024年12月号)

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