2019.03.20

LIFESTYLE

余分なモノがないからこそ豊かな空間になる! 心が落ち着く気持ちがいいリビングのある家【連載 マイカー&マイハウス】

ミニマルが空間がなんとも気持ちのいいM邸のリビング。

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風を取り込む仕組み

河内さんの設計で特徴的なのが、家の正面に穴の開いたブロックを多数用いること。ブロックは、外部からの視線を遮りながら風を通す、効率的な部材である。太陽に照らされて光と影ができると、温度差から自然と風が発生し、このブロックの穴を抜けていくのだ。こうして隣家と接する町中にありながら、プライバシーを確保したうえで、風が通る家ができあがった。

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間取もシンプルである。駐車スペースの脇を抜けると中庭で、そこに面して玄関を設けた。1階は他に3つの寝室があるのみ。2階は前述のリビングダイニングの反対側に、カウンターキッチン、浴室・洗面などの水回りとなっている。2階にリビングダイニングや浴室を配した理由のひとつは、M邸の南側にある、桜の木が植わった公園の借景を楽しむことにある。桜の季節は短いが、それだけではない。バスルームの大きな窓からは、季節によって変化する公園の景色と、時には夜空に浮かぶ月を愛でることもできるのだ。



また、シンプルな空間を好むMさんの好みを実現しつつ、共働きの夫婦と高校生のお嬢さんの家族3人が上手くコミュニケーションをとれるような工夫が随所に見られるのもM邸の特徴である。例えば、キッチン。開放的なリビングダイニングと比較し、囲まれ感があり、ソファとの微妙な距離感が心地良いとM夫人は話す。しかもこのキッチンカウンターは、平日仕事を終えて帰宅し、料理をするM夫人と、向かいのスツールに掛けるMさんや、部活で帰りの遅いお嬢さんと話が弾む位置関係にある。そのうえキッチンのすぐ脇は、ダブルシンクの洗面所。朝の忙しい時間でも、朝食の準備をしているM夫人と、鏡の前で支度をする家族とがコミュニケーションをとれるのである。たとえ短くとも、何にも代えがたい時間だ。そして鏡の横の小窓から、出かけていく家族の後ろ姿が見えるのである。

ドライブの行き先は

若い頃は、トヨタの「ハチロク」を2台乗り継ぐなど、走ることに関心が高かったMさん。ガレージの屋根を兼ねるテラスは片持ちとなっており、柱の無い構造である。2台並べての駐車が可能なレイアウトだ。時にはMさんが、仕事で使う営業車で帰宅することもあるというが、もし仮にもう1台持てたとしたら何を選ぶかとの質問に、Mさんは「アバルト595をMTで」と答える。それくらいクルマが好きなのだ。アウディA5も、「40歳になったらドイツ車」という若いころからの目標を実現させたもの。現在、A5でのドライブは、部活を頑張るお嬢さんの送迎が多いという。

Mさんたちのお宅は、置かれたモノは少ないが、愛に溢れた豊かな家だと思った。

文=ジョー スズキ 写真=山下亮一

玄関や階段などには木を使用し、ミニマルな空間が無機質にならないような気配りも。借景となる向かいの公園の桜の木や、中庭の緑が心地よく、隣家が迫っている気配はない。


■建築家:河内真菜 1974年、福島県生まれ。日本女子大学家政学研究科修了。陶器二三雄建築研究所などを経て独立。女性であり母でもある視点からの設計は細やか。プールのある住宅「WRAP」が代表作。愛車はBMW118iの限定車 Fashionista。3年間で10万km走るクルマ好きでもある。Photo:藤井浩司 / Nacasa&Partners

■最高にお洒落なルームツアー「東京上手」がYouTubeチャンネルでスタート!
雑誌『エンジン』の大人気企画「マイカー&マイハウス」の取材・コーディネートを担当しているデザイン・プロデューサーのジョースズキさんのYouTubeチャンネル「東京上手」がスタート。建築、インテリア、アートをはじめ、地方の工房や名跡、刺激的な新しい施設や展覧会など、ライフスタイルを豊にする新感覚の映像リポート。素敵な音楽と美しい映像で見るちょっとプレミアムなライフスタイル番組は必見の価値あり!


(ENGINE 2017年09月号)

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