2019年ジュネーブのベスト・オブ・ザ・ショウはアストン・マーティン。レッドブル・レーシングと共同開発したアストン初の市販ミドシップ・スーパースポーツのヴァルキリーをはじめ、そのレース専用車、ヴァルキリーAMRプロを含め、なんと4台のミドシップ・スーパースポーツを出展するという大盤振る舞いを見せたのだ。しかも、そのうちの2台がワールドプレミアである。
現在、スポーツカー市場は高価格帯も含め、けっして安穏としていられる状況ではない。どのメーカーも生き残りを掛けての模索が続いている。そんな中、アストン・マーティンは上位モデルとしてミドシップを据える戦略に出たのだ。FRのGTカーだけでは手薄、もしくはこの先が厳しいという判断なのだろう。
つまりアストン・マーティンはフェラーリ、ランボルギーニ、マクラーレンのスーパースポーツ三銃士と真っ向勝負を挑むことを選んだ。この決断が吉と出るか凶と出るか一抹の不安もよぎらなくもないが、少なくともアストン・マーティン・ファンをはじめ、多くのスポーツカー好きが期待に胸を膨らますことは間違いない。
ヴァルキリー系に続く、アストン・マーティン第3のミドシップ。ラフェラーリやマクラーレンP1級のスーパースポーツと目されている。空力など基本コンセプトはヴァルキリーから継承。ただし、キャビンを拡大したり、前方跳ね上げ式ドアを採用するなど実用性が高められている。リア・ウイングはたわむことで機械的な可変機構なしにダウンフォース量の調整が可能だ。ボディは骨格を含め炭素繊維強化樹脂製となる。パワートレインはアストン・マーティンが独自開発するターボ過給のV6にモーターを組み合わせたハイブリッド。外誌によると排気量は3.0ℓ程度で総合出力は1000psを超えるようだ。発売は2021年後半で、限定販売になる予定。
美しさや利便性より速く走ることだけを追求したトップ・オブ・アストン・マーティンもいよいよ今年から納車が開始される。それに先立ち、昨年末にエンジンの詳細が発表された。コスワース製の自然吸気ユニットは6.5ℓでバンク角65度のV12。詳細は未発表だがハイブリッド機構を備える。エンジン単体出力は1014ps/10500rpm、75.5kgm/7000rpmで、レヴ・リミットは11100rpm! 単体重量は206㎏。クランクシャフト、コンロッド、ピストンは金属の塊からの削り出し。クランクシャフトの製作にはなんと6か月を要する。限定150台はもちろんすでに完売。
こちらはフェラーリF8やウラカンの対抗馬となるアストン・マーティン初の量産ミドシップ。ヴァルキリーやAM-RB003に似たスタイリングだが、空力よりもデザインや実用性を優先させた独自のもの。骨格も接着式のアルミ製に変更されている。エンジンはAM-RB003からモーターを省いたターボ過給のV6で、出力はライバルと同程度の700ps超になるのは間違いないだろう。カタログ・モデルとして2022年の生産開始を目指している。
文・写真=新井一樹(ENGINE編集部)
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