SUV旋風が吹き荒れる中、SUVではなくあえてステーションワゴンを選ぶ理由はどこにあるか?SUVより低い重心がもたらす運動性能の高さに価値を見出す人は少なくないだろう。また都市部にお住いの方の中には、背の高いSUVでは立体駐車場に入らないからという日常での使い勝手を挙げる人も多いかもしれない。もちろん、どちらもSUVにはないステーションワゴンならではの魅力であり利点である。しかし、新型アウディA6アバントを見たあとでは、それに是非デザインを加えるべきだと思うはずだ。それほど新しいA6アバントのスタイリングは魅力に溢れている。
空力性能を重視していたアウディのアバントは当初からライバルと比べるとスタイルの良さが際立っていた。しかし新型ではその魅力にさらなる磨きが掛かった感じがする。ワゴンとは思えぬほど重厚かつエレガントなデザインで、ワゴン・ボディに有りがちなカジュアルな雰囲気はほぼ皆無。「ショーファー・ドリブンとしても使えるかも」と思わせるほど、落ち着いた佇まいを持つ。
もちろん魅力はスタイリングだけに留まらない。驚いたのが乗り心地の良さ。「ああ、さすがはエアサス」と思いながら編集部に戻って、タイヤ・ハウスを覗いてみるとその隙間から金属のコイル・バネが見えて二度ビックリ。オプションの可変ダンパーを備えた脚まわりはダンピングが上手いというか、車体が上下に動く速さがいい塩梅に制御されている。まるで煙が大気に紛れてなくなるかのように、路面からの入力がクルマの緩やかな上下動とともにスーッと収まっていく。このまったりとした乗り味は空気バネ仕様のメルセデスE400ワゴンと双璧をなす絶妙な仕立てだ。
エンジン音自体も静かだが、しっかりと遮音されていることもあり、室内は常に静寂が保たれる。普段騒がしいところにしかいないので、どことなく居心地の悪さを感じるほどだ(笑)。デュアルクラッチ式7段自動MTと組み合わされる340psの3.0リッターV6ターボは、51.0kgmというディーゼルも真っ青の大きなトルクも手伝ってどんな場面でも余裕綽々。必要に応じて後輪に駆動力を流すアクティブ・オンデマンド式に変更された4WDは、以前の常時接続式のようなガッツリと4輪が路面を掴んでいるといった感触が若干薄れたのはちょっと残念だが、水たまりのあるヘヴィ・ウェットの高速道路でも不安を感じることはなかった。
ワゴンのスタイルを採っているが、仕立ては高級サルーンそのもの。この良いモノ感は半端ない。
文=新井一樹(本誌) 写真=郡 大二郎
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