DBSスーパーレッジェーラ・ヴォランテの試乗会当日、欧州は季節外れの熱波に襲われ、外気温計はぴたり「38 °C」を示していた。コンバーチブルなのにオープン・トップにすることがはばかられるくらいの猛暑で、近隣で大規模な山火事も発生し、試乗ルートの変更を余儀なくされた。いつもの自分なら「大変な試乗会だったよ」と漏らしていたかもしれない。でもクルマがいいと、そんなネガティブな思考すらなかったことにしてくれるものである。

そもそもすでに販売されているクーペ・ボディのDBSスーパーレッジェーラはGTとスポーツカーのいいとこ取りのようなモデルで、アストン・マーティンはこれを〝スーパーGT〟と呼んでいる。DB をベースに5.2ℓV12ツイン・ターボ・エンジンのパワースペックを725ps / 91.8kgmまで増強し、ボンネットやルーフをCFRP製に、ドアはアルミ製に置き換え、約70kgのダイエットにも成功している。シャシーのポテンシャルが高く、操縦性はこの時点でかなり高いレベルで担保されているが、これにブレーキを 使ったトルクベクタリングとややクイックなステアリング・ギヤ比を組み合わせることで、わずかなステアリング舵角でもクルマが気持ちよく向きを変える特性を実現した。

トルコンが付いているとは思えないダイレクト感が印象的な8段ATをリアに置くトランスアクスル形式 を採用するも、V12の質量のせいでクーペの前後重量配分は51 : 49だった。ヴォランテは幌関連の機器類とボディ補強などで約100kgの重量増を余儀なくされる。ところがそれがボディ中心よりも後方に集中していたため、前後重量配分はぴたり50 : 50となった。クーペの爽快なハンドリングはそのままに、ヴォランテはフロントの重さをまったく意識しなくなったのである。

〝スーパーレッジェーラ〟を名乗りながらも100kg増はいかがなものかと思うかもしれないが、乾燥重量1863kgを0 - 100km/h= 3.6秒の俊足で運び、最高速は340km/hに達するそうで、少なくても日本では余りあるパワーを有することになる。実際、スロットル・ペダルを無意識に踏み込み過ぎると後輪は簡単にホイール・スピンしてしまうが、ペダルのコントロール性がいいのでナーバスになる必要はまったくない。ブレーキはバキューム・ブースターを再調整して制動力の立ち上がりを線形にしたという。おかげで踏み込み量に対してリニアに制動力が立ち上がるようになった。
コンバーチブルは屋根が開くので、どんなモデルでもその時点で自動的にある程度の気持ちよさは実現できる。しかしこのクルマは、ドライバーの手と足からの入力に対する反応がいちいちすこぶる気持ちいい。だから猛暑だろうと山火事だろうと、ずっとステアリングを握っていたいと切望した。詰まるところ、いいクルマとはボディ・タイプを問わず、走る曲がる止まるがきちんとしているということなのである。DBSヴォランテは、オープンと基本性能で二乗の気持ち良さが味わえた。
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