2011年のジュネーブ・ショーで登場したモーガン3ホイラーは、1911年に登場した同社のごく初期のプロダクトのいわばリバイバル・モデル。フロントにむき出しで搭載されるS&S製空冷2ℓVツイン・ユニットは最高出力69ps/5200rpm、最大トルク13.2kgm/2500rpmを発揮し、リア1輪を駆動。変速機はマツダ製の5段MTのみ。0-100㎞/h加速は7秒、最高速は185㎞/hに達する。全長×全幅×全高=3290×1740×1105㎜。ホイールベース=2390㎜。車両重量(乾燥重量)=585㎏。車両価格=781万円。
このガイシャ、「バイク・フィーリング」がスゴイ! ちなみにこのモデル、他の国では"バイク"扱いだが、日本では"クルマ"扱いとなる。結果、排ガス規制をEURO3からEURO6対応にしなければならない。そして、1年半かけて日本の規制をパスさせたインポーターの努力と執念もスゴイ。で、どんなクルマかというと、プリミティブで、ネイキッドで、ひたすらハンドリングが楽しいクルマである。シンプルで軽量、リア・タイヤは1輪のみ。電子制御も付いていない。スタビリティないよ! と言われて乗ってみたが、予想以上に安定性は高い。
駐車場で振り回してみたが、そう簡単にリア・タイヤがスキッドするわけでもない。恐る恐る公道に出てみると、スピードが上がるに連れ風が顔に刺さる。トラックの近くを走ろうものなら、小石まで飛んでくる。マジでヘルメットが必要だ。でも、なるほど、バイクと思って乗ると、遥かにスタビリティが高いし、安心感も高い。最近、大きく重く、電子制御で帳尻合わせするクルマが多く、「素」で本質的な楽しさを味わえるクルマが少ないなーと実感。
学生の頃、相当気合い入ったサイドカー乗りだった私の憧れが3ホイラーでした。3輪車乗りからすれば、最も高級な乗り物ですから。されど40年間一度も乗るチャンスに恵まれず。だから還暦過ぎたジジイなのにワクワクしちゃってる。走り出すと現代版の3ホイラーもバイクの親戚だった~。空冷Vツイン・エンジンで、リア駆動はチェーンならぬベルト。ステキなのがタイヤ。超ラウンド・ショルダーになっているサイドカー用のタイヤ風。やっぱし原点バイクですよ。
フローティング・マウントされた2気筒1ℓのVツインは案外滑らか。絶対的なパワーこそないが、気持ちよ~く走る。冷間時の排ガス規制のためオリジナルより薄い混合気になっているけれど、英国仕様を知っている輸入元のジャスティンさんによれば「オリジナルのミクスチャーなら2000回転前後のドコドコという鼓動が最高です!」。イギリスのカントリー・ロードをVツインの鼓動を感じながら走ったらどんなに楽しいことだろう!こいつを買えるヒトは幸せだと思う!
「極限の防寒対策をしてきてください」 「飛び石から目を守る万全の対策もお願いします」 そのような事前の注意(表現に誇張アリ)を受け、小鹿ちゃんのように震えながら乗り込んだものの、なんということでしょう! ただひたすら気持ちいいだけじゃないですか!
空冷Vツインのとんでもないビート(振動とも言う)を全身に受けながら、シフト・レバーを1速へ。勘で探るようなシフト・フィールすら予想していたのに、ホンダS2000みたいにカッチリ! クラッチ・ミートもラクラク! ステアリングを切れば前後輪のグリップ配分もビッタリ!
高速道路では、合流車線での優越感がケタはずれ。「どうだ、こちとら後ろ一輪だぜ!」と、肩で風切りながら合流する。速度を上げるとさすがに風がハンパない! おふとんにもぐりこむようにボディに体を沈めて風を避けると、頼りなさげなウインド・シールドがバッチリ利いて、笑いが止まらなくなりました。このクルマ、最高です。
前には剥き出しのVツイン。ダブルウィッシュボーン・サスペンションの外側には、昔のバイクみたいに細いタイヤが2本。そして後ろは1本。最初は「なんかおっかないし辛かったら途中で帰る」つもりだったのに、結局カメラマンが待ち構える峠道まで大冒険となった。新車でキャブなんて、いまどき許されるの? アクセレレーターを踏み込んだら、心地良いエグゾースト・ノートじゃなく、アチコチからカンカン、コンコンと得体の知れない音もする。
ステアリングは中央付近がデッドで、切り込んでも反応はとっても鈍い。法定速度でも顔には猛烈な風圧が押し寄せてくる。それでも段々動かし方がわかってくると、運転がモーレツに楽しくなってくる。ステアリングをコーナーの遙か手前から切り始め、狙いを定めて右足を踏み込むと、3ホイラーはバッチリ高速コーナリングを決めてくれた。マツダ製の5段MTもスコスコ決まる。ハナミズ垂らして笑いながら運転しているボクは、きっとかなりヤバい感じだったと思う。モーガン3ホイラー、最高だ!
バイク用の空冷エンジンを前端に積み、円筒のキャビンから前軸を丸いステアリングで操る。 3ホイラーは戦闘機の雰囲気やスポーツカー的な走りを廉価に提供するという主旨でモーガンの繁栄に大いに貢献、当時のサイクルカー・ブームにも乗り、純然たるスポーツカーである4/4の発売へと繋がっていった。今からざっと一世紀近く前の話だ。
現代に蘇った3ホイラーはプレストウィッチのJAPユニットやマチレスのそれではなく、ハーレーのパーツ・メーカーとして60年以上の歴史をもつS&Sのオリジナル2ℓエンジンを搭載。トランスミッションは初代ロードスターなどに用いられるマツダの5速と、英米日の混成となるところも興味深い。見た目の印象よりは癖の小さい走りを突き詰めるもよし、こけないバイク的に近隣を散歩するもよし、その性格は人それぞれの受け止めで如何様にも解釈できる。でもひとつ言えるのは、ともあれ動かすのが心底楽しいということだ。ケータハムは速すぎて億劫という大人にはピッタリの選択だと思う。
(ENGINE2020年4月号)
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