2020.08.01

CARS

自動車ジャーナリストの大井貴之さんが運転の極意を学んだクルマとは


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その後、10万円以下のクルマを次々に乗り換え(壊し)、いつかは海外ラリーに挑戦したい! と、ひたすら走りまくっていた。ひょんなことからレースに出ることになったのが1985年。マシンはEP71型スターレット。デビュー戦は10番手からのスタートだったが、雨が降ってきて3位表彰台。もう、クルマのコントロールなら誰にも負けないと思っていた。その長い鼻をへし折ってくれたのが1989年製の930型ポルシェ911ターボだ。登場してすぐに手に入れたR32型GTRにドライビング的な未来を感じなくなっていたタイミングでの出会い。

しかし、期待通りだったのはスタイリングだけ。直進性にGTRのような安心感はなく、脇汗かきまくり。コーナリングは進入も立ち上がりも超アンダーステアで無理矢理向きを変えようとするとスピン。どの自動車雑誌にも世界最高の制動能力って書いてあったブレーキは、あっけなくロックしてちっとも止まらない。コレはショックだった。

それから暫くは、一目惚れして結婚してみたらとんでもないヤツだったが、誰もが羨む美人だったので我慢! という感じでご機嫌取りの毎日。しかし、その厄介なご機嫌取りのドライビングがオレのドライビングを変えてくれた。それまでは丁寧なアクセル・コントロールと言えば踏み方しか考えていなかったが、アクセルの緩め方を考えるようになった。ブレーキも初期の踏み方を変えるだけで最高のブレーキに変身。ステアリングとペダル・ワークの連携が何よりも大切! 文字にしてみれ ば簡単。今も当たり前のように言われていること。今のクルマにも同じ操作が求められるのだが、失敗しても電子制御がカバーをしてくれる。高グリップ・タイヤが守ってくれる。

しかし、この時代の911はすぐに背中を向ける。性格のきつい女だったのだ。ツンデレな930ターボと仲良くなるために、何年も、何万キロも費やしたが、お陰で今のドライビングを手に入れることが出来た。ということで、スターレットとポルシェが大井貴之の人生に大きな影響を与えたクルマである。

文・写真=大井貴之(自動車ジャーナリスト)



Twitter @ohisan/YouTubeチャンネル「クルマで遊ぼう! 大井貴之のSports Driving Labo.

(ENGINE2020年7・8月合併号)

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