2020.08.09

CARS

26歳の時に限度いっぱいのローンで買った中古のロータス 初代オーナーを探しにイギリスにまで行った自動車ジャーナリストの藤原よしおさんのロータス愛が凄い!

藤原よしおさん、愛車の一台はミニ

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まず向かったのは大西洋に浮かぶジャージー島。そこでのエランのデザイナー、ロン・ヒックマンとの対話は、今でも僕の大事な宝物の1つだ。広大なお屋敷の中の広く雑然とした彼のアトリエで、貴重なレンダリング、クレイモデルなどの資料とともに、これまでどんな洋書にも載っていなかったエラン誕生秘話、そして当時のロータス、チャップマンの話はまさに目から鱗の落ちるものばかりだった。

もう1つ、僕のエランのルーツに関しては、元ロータスのセールスマネージャーでクラブ・ロータスの代表を務めていたグレアム・アーノルドが、共感して多くの人を紹介してくれた。またその噂を聞きつけロータス本社では自身もエラン・オーナーであるエンジニアのニック・アダムスが、工場長のモーリス・ダウトン、伝説のテストドライバーのアリスター・マックイーンともに出迎えてくれ、聖地ケタリングハム・ホール脇の資料室で一緒になって当時の生産台帳を調べてくれた。

残念ながらファースト・オーナーに会うのは叶わなかったものの、ここで経験した「乗ること以外のクルマの楽しみ方」が、その後の僕の仕事と趣味の方向性に与えた影響は大きい。

その後編集長になり、様々な企画をたて、数多くのクルマに触れることとなったが、エランは常に僕のマスターピースであり続けた。そして自分で最後に作る特集はエランにしようと密かに決めていた。

ちょうど10年前の夏、世界一オリジナリティの高い浮谷東次郎のレーシング・エラン26Rを徹底取材し、Bow。さんに26Rの表紙画を依頼し、僕の編集者としてのキャリアは1つの区切りを迎えた。独立のために12年間連れ添ったエランは手放してしまったが、あの日イギリスで出会った人々との交流は続き、チャップマン家をはじめとするロータスとの縁はより深く濃くなっている。

今でもロータス・エランは僕にとってクルマ以上の存在だ。然るべき時がきたら改めてエランを手に入れ、アガリの1台としてずっと傍に置いておきたいと思っている。

文=藤原よしお(自動車ジャーナリスト)



(ENGINE2020年7・8月合併号)

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