2020.09.03

LIFESTYLE

火山灰を使う新素材でできた日本初の住宅! 打ちっぱなしでもあのコンクリート特有の臭いがしない驚きの家!!

シラス・コンクリートでできた日本初の住宅!

全ての画像を見る
シラスコンクリートを採用

advertisement


これは南九州に厚く堆積している火山灰の「シラス」を、砂の代わりにコンクリートに混ぜたものだ。メリットは、製造過程が環境に優しく、肌理が細かいうえに、調湿・消臭効果があり、長期間に渡って強度が保たれること。同じように火山灰をコンクリートに混ぜた例といえば、ローマのパンテオンがある。通常コンクリートの寿命は50~100年と言われるが、2000年以上も前の建築が今も残っているのは、この素材のお陰だ。もっとも日本では、シラスコンクリートが建築物に使用された例はない。そこで山下さんを含めた大学・企業のチームが2年近く共同研究を行い、実物大の模型で実験を行ったうえで、この住宅に限っての国務大臣個別認定を取得、竣工にこぎつけたのである。こうして完成した内外がシラスコンクリートの家は、見た目や手触りが滑らかであるうえ、消臭効果のお陰で、訪れた人は、「コンクリート建築特有の臭いがない」と口にするそうだ。

敷地のサイズを忘れさせる、解放的な2階のLDK。階段の吹き抜けに吊るされた照明は、ガラス作家の荒川尚也氏のもの。

美的センスの溢れる空間

こうした合理的な側面よりも、実際にKさんたちのお宅を訪れて感じるのは、いたるところに表れている美意識だろう。この家のために誂えた部材やパーツが、シラスコンクリートの空間に、実に見事にマッチしているのだ。贅沢な素材ではないが、吟味された品々や、手間のかかった仕上げは独特の雰囲気がある。コンクリートの小さな住宅は日本に多いが、海外からK邸の取材依頼が多いのも、この家の美しさや品の良さと無縁ではないだろう。

こうした美の結晶のような家が完成したのも、Kさん夫婦が、建築家に全て任せるのでなく、積極的に提案し、家作りに関わったからに他ならない。二人は鹿児島で行われたシラスコンクリートの実験にも立ち会った。作家もののガラスのペンダントを指定し、床材や、キッチン・収納扉の仕上げ、スイッチ類なども見本の中から選び、納得いかない場合は自ら探した。その過程でKさんたちの好みを理解し、建築家は美しい家に仕立てたのである。

通常の家を建てるより随分と時間がかかったが、二人はそれを楽しんだ。だから「家が完成してしまったので、もう何もすることがなくて寂しい」と、奥様は語る。

そう、家作りは本当に楽しい作業なのだ。

文=ジョー スズキ  写真=山下亮一

和室の壁は、黒箔を張ったもの。奥様の嫁入り道具である箪笥と火鉢は、この家でも大切に使われている。モノの多いKさん夫婦のために収納は多く設けられ、「ミニマル」と感じられる家となった。

■建築家:山下保博 1960年鹿児島県奄美大島生まれ。芝浦工業大学大学院修了。アトリエ・天工人創設者。新しい建築用素材の開発や、独創的な建築で世界的に知られる。代表作は、45平方メートルの狭小地に建つ「チカニウマルコウブツ」など。震災の被災者のための低価格の住宅プロジェクトや、奄美と佐渡の伝統的な住宅を、その良さを生かして宿泊施設に改装した「伝泊」など、多岐に渡って活動している。

最高にお洒落なルームツアー「東京上手」がYouTubeチャンネルでスタート!
雑誌『エンジン』の大人気企画「マイカー&マイハウス」の取材・コーディネートを担当しているデザイン・プロデューサーのジョースズキさんのYouTubeチャンネル「東京上手」がスタート。第1回配信は、エンジンでも紹介したことのある国際的建築家、窪田勝文さん設計の山口県のミニマリスティックな住宅。最新のルームツアーは、詩人でもあり建築家でもあった立原道造が1938年に設計した「ヒヤシンスハウス」を紹介中。素敵な音楽と美しい映像で見るちょっとプレミアムなライフスタイル番組は必見の価値あり!

▶︎過去の連載一覧はコチラ

マイカー&マイハウス 記事一覧

(ENGINE2017年12月号)

無料メールマガジン会員に登録すると、
続きをお読みいただけます。

無料のメールマガジン会員に登録すると、
すべての記事が制限なく閲覧でき、記事の保存機能などがご利用いただけます。

いますぐ登録

advertisement

PICK UP



RELATED

advertisement

advertisement

PICK UP

advertisement