2021.05.01

CARS

ナビゲーターじゃ我慢できない! ポルシェ356Bカルマン・ハードトップ・クーペや914でクラシックカー・ラリーを楽しむ最高に素敵な母娘!

ポルシェ356Bカルマン・ハードトップ・クーペや914でクラシックカー・ラリーを楽しむ母と娘

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62年式の356

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クルマ好きの父の影響で最初はナビゲーターとしてラリーに出た。けれどもコマ図を見て父に指示する役では次第に我慢できなくなっていく。自分もドライバーとして走ってみたい。そう思ったエミイさんはAT限定免許を解除し、ドライバーとしてラリーデビューを果たすことになった。2016年のことだ。

海外ラリーの予行演習として初めて出場した国内大会でたまさかの区間賞を取り、一層ラリーが楽しくなった。そして同じ年の暮れ、この62年式356カルマン・クーペとともに、晴れてラリー台湾に母ミユキさんと参戦したのだった。

356 Bのカブリオレをベースにカルマン社が固定式のハードトップモデルとしたもの。61年(T5ベース)と62年(T6ベース)の2年間のみ作られた。中でもT6ベースはT5に比べて生産台数も100台以下と極めて少ない。ルーフのデザインが通常の356クーペとは違っており、リアの居住性の良さが特徴だ。


台湾は「すごく楽しかった」と二人声を揃える。「今日みたいに衣装合わせて出たものだから、どこへ行っても一緒に写真撮影をせがまれて。ラリー中ずっと追っかけてくる人もいたの。台湾のファンも増えたわ」。「みんながとってもウェルカムで盛り上げてくれるのがもう嬉しくて」、と母も娘と出るクラシックカー・ラリーの魅力にすっかりハマった。

もっともクラシック・カーでしかMTを運転したことのないエミイさんである。坂道発進などで苦労することも多く、台湾ではずいぶんとクラッチを減らしてしまった。日本に戻ってくれば、無事完走できたことが奇跡のような状態だった。

「ザ・クラシックカーなのよ、356って。ハンドルは重いし、シフトは入りづらい、クラッチの繋ぎもシビアで。だから、一番好き。現代のクルマって言ってみればどれに乗っても同じでしょ? でも、この時代のクラシック・カーって、モデルはもちろん個体が違っても乗り味が変わったりして。モデルごと、クルマごとに個性がある。自分自身が他人と同じじゃ我慢できないタチだから。被らないことが大事っていうか」

356がレストレーションに出ている間はもっぱらこの71年式914 1.7か父のBMW2002ターボでラリーに参戦した。ワインディング・ロードや高速道路では914の方が圧倒的に楽しく、356に比べれば坂道もラクという。エミイさん自身はRRとミドシップの違いやメカニズムもよくわかっていないと言うけれど、乗ればまるで違うと分かるあたり、感性の鋭いドライバーというわけだ。エミイさんはラジオ高崎「Very Merry Emii」に毎週土曜日、生出演する。www.emii.jp


356の居ない間、エミイさんのパートナーは914に代わった。「356とは違う楽しさがあり、スポーツカーという感じが強い。モダンカーに負けない走りというか。高速も安定しているし、パワーもあって坂道もラク。特にワインディング・ロードが楽しい!」。


それは914がよくできたミドシップ・カーだからだろうね、と肯くと、「エミイね、クルマのメカニズムとか何もわかんないし知らない。フィーリングが大事なの。音楽だってそうよ。理屈も分からずに曲のアレンジをすると、曲作りのプロから褒められたりするわ」。そう謙遜するけれど、彼女はバークリー音楽大出の才媛でもあった。

「クルマに乗る時しか音楽は聴かない。普段はあまり飛ばさないようにバラード、とか。乗るクルマや行先での目的に合わせて車内で聴く音楽を決めるの。それとファッションも。だからラリーでも必ず母と一緒にコーディネートする。ほら、エミイってクルマの知識ないじゃない? 競技だって上手いわけじゃないし。だから詳しいおじさんたちの中で光るためにはクルマを含めたファッションのトータル・コーディネートで勝負するほかないな、って」



クルマは考えて乗るものじゃない。フィーリング、つまりは乗る人の感性にどう響くか、が大切。なるほど、ごもっとも。そんなエミイさんにとって普段遣いのマカンはやっぱりポルシェ、なのだろうか?

「背は高いけれどコーナリングはいいし、スポーツ・モードなら走りだって楽しめる。ノーマル・モードではとても快適で。サイズはちょうどいいし、荷物もガンガン積めちゃう。普段から気を使わずに乗れてしまうのに、楽しさもあるって凄いと思う。それにポルシェって景色がみんな似ているから安心して乗れるのよ。父のGT3をドライブした時も全然焦らなかった。ビビらないっていうか。でも雨の日は怖かったな~」

ポルシェは感性豊かな女性をも虜にしてやまない。

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文=西川 淳 写真=茂呂幸正

(ENGINE2021年1月号)

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