WRC参戦車両のベース車として開発されたトヨタGRヤリスのメイン・グレードであるRZ系は、専用開発の1.6リッター・ターボ・エンジンに6段MT、そして電子制御式油圧多板クラッチによるスポーツ4WDシステムを組み合わせて搭載している。しかしながら、価格的にも、そしてMTのみという点でも、RZには手が出しにくいという人も居るだろう。そんな人のために用意されているのがGRヤリスRSだ。
RSのパワートレインはヤリスにも積まれている直列3気筒1.5リッター自然吸気エンジンと無段変速機“Direct Shift-CVT”の組み合わせで、駆動方式は前輪駆動になる。ちなみにエンジン搭載位置はRZよりもキャビン側に寄っているのだという。
一方、3ドアの車体はCFRP(炭素繊維強化樹脂)製ルーフも含めてRZと変わらない。サスペンション形式も共通で、リアにはFFでは一般的なトーションビーム式ではなく、RZ系と同じくダブルウィッシュボーン式をおごっている。
正直、“見た目だけ”の仕様かと思ってしまうところだが、実際に走らせてみるとこのRS、案外に悪くない。1.5リッター・エンジンの最高出力は実に120psもあるからけっして非力ではないし、仮想10段変速モードを備えたCVTも反応は上々。しかも車重はRZより150kgも軽い1130kgに留まるから、期待以上に軽快に走る。しかもボディとシャシーのポテンシャルは高いから、ワインディング・ロードでは却ってスロットル・ペダルを思い切り踏み込めるのだ。
もしかすると普段使いや一般道での走りの快感度はRZにも負けていないかもしれないと思わせるRS。様々な事情、理由で2ペダルしか買えないという人も落胆する必要はなさそうである。
文=島下泰久 写真=篠原晃一
(ENGINE2021年2・3月合併号)
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