いよいよ25年以上に及んだその歴史に終止符を打つことになったロータス・エリーゼ、エキシージ、エヴォーラの3兄弟。四半世紀以上という長い時間に亘り軽量スポーツカーの雄として人気を博してきたエリーゼ・シリーズはモーター・ジャーナリストの国沢光宏さんの目にはどのように映っていたのだろうか。最新のエキジージのインプレッションとともにその思いを書き綴ってもらった。
エリーゼとエキシージの生産終了は、クルマ好きからすれば「悲報」に区分されると思う。スーパーカー世代にとっての原点といえば、いうまでもなくロータス・ヨーロッパです。非力ながら圧倒的なマニューバビリティ(操縦性)を武器に勝負するという、零戦みたいな日本人の琴線触れるクルマだったりする。ウデで性能を引き出す!
逆に言えばテクニックが無いと撃ち落とされちゃうのだけれど、その弱点を何とかしたいというのが、エリーゼの高性能モデルとして位置づけられたエキシージだったりする。2000年登場のシリーズIこそエリーゼより少しパワーのあるエンジンを搭載し、前後トレッドを広げただけだったものの、シリーズIIの中期から急激な進化が始まった。
スーパーチャージャーを得た1.8リッター・エンジンは221馬力を発生。車重935kgと軽かったため、ポルシェ911と真正面から勝負出来るようになりましたね。サーキットの狼で言えば、ヨーロッパの進化板である「ツインカムターボスペシャル」。そしてシリーズIIIになると350馬力の3.5リッターV6スーパーチャージャーを搭載する。
大きなパワーを受け止めるべくエンジン・ベイ(サブフレーム)の容量アップなど行ったため車重こそ1125kgに増加したが、最高速274km/h。0-100km/h加速3.9秒という、圧倒的な動力性能になった。零戦のエンジンを1000馬力級エンジンの「栄」から欧米列強の新世代エンジンと並ぶ2000馬力の「誉」にバージョンアップしたようなもの。
前置きはこのあたりにして試乗してみたい。エリーゼと違いルーフは外れず。一方、剛性確保のためサイドシルが高い。狭い開口部なら乗り込みながら「こんな乗り降りしにくい市販車、もはやエキシージだけだな」とニンマリする。セミ・バケットシートに座った時のドライビング・ポジションは”ほぼ”レーシング・カー。着座位置、低さ世界一かと。
最終モデルからミッションのリンケージが変更され、これまた一世代前のレーシング・カー風。ちなみに新車で買えるマニュアルミッション車としちゃおそらく世界最速のモデルです。ギアを1速に送り込んでクラッチー・ミートする。試乗会場のベースはスキッドパッドのため全開を試すと、速いとか遅いとかヒョウロンするレベルにない!
有り余るパワーをどうやって路面に伝えたらいいかを考えるのみ! 実際、全くノーマルの状態で筑波サーキットを55秒台で走るという! 350馬力という出力でこんな速いクルマなどありません。コーナリング速度が高く、ボディが軽いというあたり、先祖であるヨーロッパの特長をそのまんま引き継いでいると言って良かろう。
もちろん一般道じゃエキシージの性能を引き出すことなど社会的に不可能。とはいえタイトで見切りの良いドライビング・シートに収まり、ワインディグ・ロードを安全なペースで走るだけで超気持ち良い! クイックかつダイレクトなステアリング系は、驚くほど素直に路面情報をドライバーに伝えてくれる。加速だけじゃなく減速も楽しい(笑)。
そもそも驚くほど狭いエキシージの中に居て、クラッチ切ったりギア・チェンジしたりするだけでクルマ好きなら幸せになれる。言葉だと説明しきれないのがもどかしいです。サーキットの狼世代であれば、今は乗らなくてもいいからエキシージかエリーゼをガレージに仕舞っておくべきだと思う。現在私も思案中でございます。
■ロータス・エキシージ・スポーツ350
駆動方式 ミドシップ横置きエンジン後輪駆動
全長×全幅×全高 4080×1800×1130mm
ホイールベース 2370mm
トレッド 前/後 1499/1548mm
車両重量 114kg
エンジン形式 V型6気筒DOHC24V機械式過給器
総排気量 3456cc
ボア×ストローク 94.0×83.0mm
エンジン最高出力 350ps/7000rpm
エンジン最大トルク 400Nm/4500rpm
変速機 6段MT
サスペンション形式 前後 ダブルウィッシュボーン式
ブレーキ 前後 通気冷却式ディスク
タイヤ 前/後 205/45ZR17/265/35ZR18
車両価格(税込) 990万円
文=国沢光宏
(ENGINEWEBオリジナル)
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