2021.03.07

CARS

ロータス・エキシージ最終モデルに試乗 エリーゼ・シリーズの終焉はクルマ好きにとっては「悲報」だ

2000年にデビューしたエキシージ。当初はエリーゼをベースにクローズド・ボディへと変更したレース専用車だった。その後、エリーゼのクローズド版として公道仕様が売り出され、現在はV6エンジンを積むエリーゼの高出力・高性能バージョンという位置に立つ。(写真=柏田芳敬)

全ての画像を見る

いよいよ25年以上に及んだその歴史に終止符を打つことになったロータス・エリーゼ、エキシージ、エヴォーラの3兄弟。四半世紀以上という長い時間に亘り軽量スポーツカーの雄として人気を博してきたエリーゼ・シリーズはモーター・ジャーナリストの国沢光宏さんの目にはどのように映っていたのだろうか。最新のエキジージのインプレッションとともにその思いを書き綴ってもらった。


エリーゼよりも車幅が広いエキシージはよりレーシーでスパルタンなイメージを持つ。スタート時はクローズド版のみだったが、現行型は脱着式の幌屋根を持つ「ロードスター」もラインナップされていた。(写真=神村 聖)

ウデで性能を引き出す!

エリーゼとエキシージの生産終了は、クルマ好きからすれば「悲報」に区分されると思う。スーパーカー世代にとっての原点といえば、いうまでもなくロータス・ヨーロッパです。非力ながら圧倒的なマニューバビリティ(操縦性)を武器に勝負するという、零戦みたいな日本人の琴線触れるクルマだったりする。ウデで性能を引き出す!


逆に言えばテクニックが無いと撃ち落とされちゃうのだけれど、その弱点を何とかしたいというのが、エリーゼの高性能モデルとして位置づけられたエキシージだったりする。2000年登場のシリーズIこそエリーゼより少しパワーのあるエンジンを搭載し、前後トレッドを広げただけだったものの、シリーズIIの中期から急激な進化が始まった。


スーパーチャージャーを得た1.8リッター・エンジンは221馬力を発生。車重935kgと軽かったため、ポルシェ911と真正面から勝負出来るようになりましたね。サーキットの狼で言えば、ヨーロッパの進化板である「ツインカムターボスペシャル」。そしてシリーズIIIになると350馬力の3.5リッターV6スーパーチャージャーを搭載する。


大きなパワーを受け止めるべくエンジン・ベイ(サブフレーム)の容量アップなど行ったため車重こそ1125kgに増加したが、最高速274km/h。0-100km/h加速3.9秒という、圧倒的な動力性能になった。零戦のエンジンを1000馬力級エンジンの「栄」から欧米列強の新世代エンジンと並ぶ2000馬力の「誉」にバージョンアップしたようなもの。


インパネは基本的にエリーゼと同じ。エンジンをスタートさせるには、従来どおりキーをステアリング・シャフトの横にあるシリンダーに差し込まなければならないが、スターターを回すのはその横にあるスタート・ボタンで行う。(写真=神村 聖)
全幅はエリーゼよりも広いものの、それはトレッドがワイドなためで、キャビンの広さはエリーゼと変わらない。シートもステッチなどの装飾は異なるものの、形状は同一。(写真=神村 聖)
リンケージがむき出しのシフト・レバー。見ているだけでも惚れ惚れとするつくりだ。シフト・フィールもいい。(写真=神村 聖)

是非ともガレージに1台収めたい

前置きはこのあたりにして試乗してみたい。エリーゼと違いルーフは外れず。一方、剛性確保のためサイドシルが高い。狭い開口部なら乗り込みながら「こんな乗り降りしにくい市販車、もはやエキシージだけだな」とニンマリする。セミ・バケットシートに座った時のドライビング・ポジションは”ほぼ”レーシング・カー。着座位置、低さ世界一かと。


最終モデルからミッションのリンケージが変更され、これまた一世代前のレーシング・カー風。ちなみに新車で買えるマニュアルミッション車としちゃおそらく世界最速のモデルです。ギアを1速に送り込んでクラッチー・ミートする。試乗会場のベースはスキッドパッドのため全開を試すと、速いとか遅いとかヒョウロンするレベルにない!


有り余るパワーをどうやって路面に伝えたらいいかを考えるのみ! 実際、全くノーマルの状態で筑波サーキットを55秒台で走るという! 350馬力という出力でこんな速いクルマなどありません。コーナリング速度が高く、ボディが軽いというあたり、先祖であるヨーロッパの特長をそのまんま引き継いでいると言って良かろう。


もちろん一般道じゃエキシージの性能を引き出すことなど社会的に不可能。とはいえタイトで見切りの良いドライビング・シートに収まり、ワインディグ・ロードを安全なペースで走るだけで超気持ち良い! クイックかつダイレクトなステアリング系は、驚くほど素直に路面情報をドライバーに伝えてくれる。加速だけじゃなく減速も楽しい(笑)。


そもそも驚くほど狭いエキシージの中に居て、クラッチ切ったりギア・チェンジしたりするだけでクルマ好きなら幸せになれる。言葉だと説明しきれないのがもどかしいです。サーキットの狼世代であれば、今は乗らなくてもいいからエキシージかエリーゼをガレージに仕舞っておくべきだと思う。現在私も思案中でございます。


エンジンの上に鎮座する機械式過給器=スーパーチャージャーがひと際目立つトヨタ製3.5リッターV6ユニット。出力は350ps/400Nmを発生する。(写真=神村 聖)
エリーゼ同様、エンジン・ルームの後方には小さいながらもラゲッジスペースが設けられている。(写真=神村 聖)
エリーゼ同様、エキシージもメーカーの受注はすでに終了。新車はディーラーの在庫のみとなる。(写真=神村 聖)

■ロータス・エキシージ・スポーツ350    
駆動方式 ミドシップ横置きエンジン後輪駆動
全長×全幅×全高 4080×1800×1130mm
ホイールベース    2370mm
トレッド 前/後 1499/1548mm
車両重量 114kg
エンジン形式 V型6気筒DOHC24V機械式過給器
総排気量 3456cc
ボア×ストローク 94.0×83.0mm
エンジン最高出力 350ps/7000rpm
エンジン最大トルク 400Nm/4500rpm
変速機    6段MT
サスペンション形式 前後 ダブルウィッシュボーン式
ブレーキ 前後    通気冷却式ディスク
タイヤ 前/後    205/45ZR17/265/35ZR18
車両価格(税込) 990万円


文=国沢光宏


(ENGINEWEBオリジナル)


無料メールマガジン会員に登録すると、
続きをお読みいただけます。

無料のメールマガジン会員に登録すると、
すべての記事が制限なく閲覧でき、記事の保存機能などがご利用いただけます。

いますぐ登録

タグ:

advertisement

PICK UP


advertisement


RELATED

advertisement

advertisement

PICK UP

advertisement