過去13年間分の雑誌記事をWEBで再掲載している連載です。毎週水曜日12時更新。3万4000kmで編集部にやってきてから6年、44号車が走行20万kmを突破した。絶大なる安心感を裏で支えてくれた人たちに感謝です。
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足回りの主要パーツやエンジンのマウントを交換していけば、「ちょっと前のメルセデス・ベンツ」は長く使えるのか? それを検証するために、2008年9月に編集部で長期リポート44号車として購入した中古のメルセデス・ベンツ300TE(1992年型/3万4000km)。あれから6年、約17万kmを走行し、オドメーターは20万kmを超えた。
現在も元気に走っている。エンジンに関しては性能が低下した徴候はまったくない。3リッター直6はスムーズに吹け上がり、メカニカル・ノイズの増大など気になる徴候も皆無である。右足の動きに対する反応もリニアで、4段ATが滑り始めているという兆しはない。また、ボディの堅牢さに衰えはなく、6年前よりクルマ全体がくたびれてしまったという印象はない。22年前のクルマとは思えないほど丈夫である。さすが“オーバー・クオリティの124型”と言われるだけのことはある。
担当者がとりわけ素晴らしいと思うのは乗り心地だ。しなやかに動く脚と天然ヤシ繊維を使ったという掛け心地のいいシートのおかげで長距離ドライブもラクチンである。
思えば22年も前の古いクルマで長野、鈴鹿、富山、福島、仙台、白川郷、名古屋、京都とずいぶん駆け巡った。旅の道中ではすさまじい台風のなかを走ったりしたが、環境が厳しくなればなるほど安心感が増すのも44号車の魅力だと思う。
操縦性もとてもいい。しっとりとしたフィールのあるボールナット式のステアリングが好きだ。スーッと切り始めた時の舵の効きも素直だし、コーナリングの姿勢も安定している。
いまでも交通の流れをリードするほど元気なのだから、導入時の“長く使えるか?”という目的は達成された。偉いぞ! 44号車。 そんな折、ヤナセから「メルセデス・ベンツ日本から20万kmの表彰状とバッジが届いたので一緒にお祝いしませんか?」という誘いをもらい、44号車で芝浦へ向かった。
思えばヤナセにはよく通った。長く使えたと言っても、不具合発生によるメインテナンスはしばしばだったからだ。交換したパーツを順に列挙すると、ベルト・テンショナー、エアコン・ガスの減圧バルブ、エンジンのヘッド・ガスケット、ラジエター電動ファン、ディストリビューター、エンジン・マウント、パワー・ウィンドウ用パーツ(3枚)、マフラー、ヒーターのデュオ・バルブ、ヒーター・コアのパイプ、とこんなにある。不具合が“手遅れ”にならなかったのは、メカニック達の的確な診断とメインテナンス技術があったからだろう。出迎えてくれた3人の主治医たちに“124型メルセデス・ベンツ”の魅力を聞いた。
「古いクルマはなかなか完全には復活しないんですけど、124はちょっと手を入れてやると新車のように蘇る。そこが素晴らしい」と言うのは、現在44号車のメインテナンスを担当しているヤナセ神田支店文京サービスセンターの高橋健司さん。
納車時にアイドリングが不調だった44号車を見事に復活させた深沢 誠さん(現在は世田谷支店勤務)は、高橋さんの言葉を受けて作業がしやすいのも魅力と言った。「たとえば、完全にバラしたダッシュボードを“代わりに組んでおいて~”と、ほかのスタッフに頼めるのが124なんです。場所によってボルトのアタマが変えてあるなど、誰でもすぐわかる。我々メカニックの原点みたいなクルマです」
最も長く面倒を見てきた大西浩行さん(現在は八王子支店勤務)は予防ができるのもいいと言う。「故障する個所がある程度決まっているので、それを予想したメインテナンスができるのもいい」
44号車に安心感があるのは3人の言葉のように、長く使うことを前提に作られているからだろう。
お祝いのケーキをもらった。「目指せ100万キロ!」。いやいや、担当者がもちません。
文=荒井寿彦(ENGINE編集部) 撮影=柏田芳敬
■44号車/メルセデス・ベンツ300TEMERCEDES-BENZ300TE
購入価格:168万円
導入時期:2008年9月
走行距離:20万4420km
(ENGINE2015年2月号)
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