“オーバー・クオリティのメルセデス”とも言われる124型ワゴンと、ホンダが当時の技術を全投入したスポーツカー、NSXの2台には、オーナーの30年間の思いが詰まっている。
VTECの咆哮
クゥオオオオ~ン! 4000rpmを超えると3リッターV6は明らかに表情を変える。レヴリミットは8000rpm。タコメーターの針はスムーズに上昇し「ああ、やっぱり自然吸気はいいなあ! VTEC最高!」と、ひとりごつ。私はホンダNSX(1991年式)で常磐道を走っている。アルミ・ボディは艶々で新車みたいだ。このNSXのオーナーは前を行くエメラルド・グリーンのメルセデス・ベンツE320ワゴン(1994年式)を運転する原田孝之さん。原田さんが所有するこの2台を撮影するために、原田さんが会員になっているゴルフ場へ向かっている。
原田さんは私が担当する本誌・長期リポート車、メルセデス・ベンツ300TE(1992年式)の走行イベントに来ていただき、それ以来お互いにクルマの調子などをメールするようになった。食事やツーリングにも行った。そんな原田さんが初代ホンダNSXを買ったというので、2台持ち企画にご登場いただいたのである。
衝撃のNSX
一方、漆黒のNSXは2019年8月に買ったばかり。NSXも2台目だという。
「2001年に憧れのスポーツカーだったホンダS2000を買ったんです。それが縁で2004年、栃木のホンダ高根沢工場の閉鎖イベントに参加しました。S2000だけでなく、たくさんのNSXが集まっていて、欲しい気持ちが昂りました」
翌2005年、グリーンに輝くNSX(1991年式)を買った原田さん。
「友人が手放すと言うんです。もうここで買わなきゃ一生買えないと思って、清水の舞台から飛び降りました。乗ったら、インパクトありすぎでしたね(笑)。視線は低い、ハンドルは重い、加速は凄いで」
名声高き国産スポーツカーを手に入れ、E320ワゴンとの2台持ちライフを楽しんでいると、NSXの仲間から”大事にしてくれるならオレのを譲ってもいい”と言われた。「アライさんも運転したからわかると思うんですけど、新車みたいなNSXなんです。しかも、名医と呼ばれる若いメカニックがずっと面倒を見ていた1台で、それに乗り換えれば、その名医も付いてくるという特典があり、買い替えを決心しました」
原田さんがメルセデス・ベンツとホンダNSXを買った経緯のなかには、必ず”知人”や”友人”が登場し、その人たちがクルマ購入の引き金になっている。原田さんの人脈の広さが、いまの2台持ち生活を作っているようだ。
「それは本当に感謝しています。憧れのクルマ2台を手に入れることが出来たのは、みなさんのおかげです。とりわけ、そんな我が儘をわかってくれた家内には大感謝ですね」
メルセデス・ベンツが1994年式、ホンダNSXが1991年式、いわゆるネオ・クラシックと呼ばれるクルマが好きな理由を聞いた。「124型のメルセデス・ベンツは、”最善か無か”の社是に貫かれていて、当時のメルセデス・ベンツの技術の結晶だと思います。NSXにも当時、日本で最高のスポーツカーを作ろうという開発者たちの志を感じます。わかったようなことを言わせていただくと、マーケティングありきで出来たクルマではないと。それと、やはり憧れですね。当時、高くて手が出せなかったクルマが中古になったこと、さらに自分も年齢を重ねたことで、両方が寄ってきた。30年かけてやっと憧れのクルマに乗れたという感じです」
トラブルはないですか?
「2019年9月、E320ワゴンでお伊勢参りに行ったんです。現地でアクセル・アクチュエーターが壊れて動けなくなりました。部品がなかなか見つからず、実は長期入院していたんです」
工場に引き取りに行ったとき、相棒の復活に涙したという原田さん。気遣いの人、原田さんの下ならネオ・クラシック2台も幸せに暮らせるだろう。
文=荒井寿彦(ENGINE編集部) 写真=茂呂幸正 撮影協力=龍ヶ崎カントリー倶楽部
(ENGINE2020年3月号)
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