2021.05.19

CARS

これが本命! マツダの新潮流クロスオーバー、MX-30のEVに乗る

内燃機関の可能性を追求しつつも、未来に向けた電動化への注力も怠っていないマツダから同社初となる市販量産型EVのMX-30がデビュー。これが内燃機関車に引けを取らないモデルだった。


当初からEVを想定

端正な顔つきや佇まいが印象的な最近のマツダ車のなかにあって、ちょっと個性的に映るのが「MX-30」だ。2020年秋に登場したこのコンパクト・クロスオーバーSUVは、クーペのようなスリークなデザインとRX-8以来の観音開きドアを採用する点が新しい。


室内も、フローティングタイプのセンターコンソール形状や、コルクやリサイクル素材を用いたインテリアトリムのコンビネーションは効果的かつ清潔感に溢れており、すっきりと気持ちいい空間を実現している。


そんなMX-30だが、1月末にEV仕様車が登場し、さらに大きな話題を呼んでいる。


MX-30 EVは2019年10月の東京モーターショーで発表されたコンセプト・モデルに由来し、当時発表されたスペックをほぼそのままに、マツダ初の量産型EVとして市販された。つまり、昨秋発売されたMX-30ガソリン(マイルド・ハイブリッド)モデルよりも、今回のEVの方が本命といえる。実際、MX-30の開発過程では初期段階からEVを想定したクルマづくりが進められていたからだろう、各所の仕立てに急ごしらえ感はまったくない。


ガソリンよりもバランスがいい

水冷式交流同期モーターの出力は(107kW)/4500-11000rpm、最大トルク270Nm/0-3243rpmを発生。当然というべきか、街中での加速や高速での追い越しでつうようを覚えることはない。車体中央床下には定格電圧355V、総電力量35.5kWhの駆動用リチウムイオン電池を搭載。航続距離は256km(WLTCモード)を標榜する。


基本骨格はCX-30やマツダ3と共通の“スカイアクティブ・ヴィークル・アーキテクチャー”だが、床下へのバッテリー敷設に合わせたフレームの新設と追加補強がなされたため、ボディはより強固なものとなった。またバッテリーが車体中央床下に配置されたおかげで低重心化が図られるとともに、前後重量バランスも大幅に改善。マイルド・ハイブリッド車の前後重量配分が62:38なのに対し、EV仕様は56:44とフロント・ヘヴィな点がすっかり解消されている。前後バランスが整えば旋回性が高まるのはいうまでもないだろう。


なお、MX-30 EVにはハンドドライブ仕様も用意され、ステアリングホイール内側のアクセルリング操作に慣れれば、ハンディキャップの有無にかかわらず誰もがゲーム感覚でこのMX-30 EVを操れる。また、開口部の広い観音開きドアのおかげで、専用のアクセスボードを用いて移乗や後席への車椅子の積載が容易にできる。


丁寧につくり込まれている

実際、走り出してみるとその効果はてきめんだった。スタートしてすぐに遭遇した大きめの段差ではスッとショックを吸収して何事もなかったかのようにやり過ごし、次の角を曲がる際は唐突な車体の揺れなど感じさせずスムーズにクリア。首都高速では風速8mの表示が出ていたものの車体は常に高い安定性をキープ。どの状況下でも不自然さや危なげない、すっきりとした走りを貫いてくれた。


また車両運動制御技術はEV用の“e-GVC Puls”へ進化。ペダル操作に対するトルクの応答性を高めたモーター、ペダルやサウンドによる効果、パドル操作による自然な回生制御を組み合わせて人間とクルマの動きの同期を図っている。


そんなふうに丁寧に車体がつくり込まれているからこそ、発展途上の電気自動車でも違和感なく運転できる良さがMX-30 EVにはある。EVといえば航続距離が注目されがちだが、なによりまずは基本性能の高さがあってのもの。MX-30は時代を読む感度の高さはもちろん、自動車としての確かさを見抜ける人にこそ選ばれるEVだと思う。


文=桐畑恒治 写真=宮門秀行


(ENGINEWEBオリジナル)

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