アウディは上海モーターショーで「A6 e-トロン・コンセプト」を公開した。現行A6の電動モデルではなく、今後登場する上級セダンの新しい姿を示唆するショーカーだ。
ボディ・サイズは全長4960×全幅1960×全高1440mmで、現行A6(4940×1886×1450mm)に近いが、ベースとなる「プレミアム・プラットフォーム・エレクトリック(PPE)」は、将来的な市販EVへの採用を想定して開発された新たなシャシーだ。これを用いたモデルが量産化されるのは2022年後半から。そのラインナップには、A6 e-トロンの市販版も含まれるという。
新技術を発表するにあたりA6が選ばれたのは、ひとつには販売面で重要なモデルであることが挙げられる。さらに、2011年にハイブリッド、2019年にPHEVを設定し、アウディの電動化を牽引してきた経緯も踏まえての決定だ。
PPEはさまざまなサイズやスタイルに対応する設計で、セダンからSUVまで広く応用できるが、基本となる駆動方式は後輪駆動。4WDの場合はフロントにモーターが追加されることになる。今回のA6 e-トロン・コンセプトでは、前後で合計して476ps(350kW)/800Nmを発生する2モーターのシステムを採用した。0-100km/h加速は、1モーターのエントリー・モデルでも7秒未満、最上位機種では4秒を切るという。
バッテリーの容量は約100kWhで、航続距離は700km以上。ホイールベース内に収まるそれは車両のサイズや仕様に応じて変更可能だが、共通するのは800V充電への対応だ。e-トロンGTで既に実用化されており、最大270kWでの急速充電が可能。10分のチャージで300km以上の走行を可能にし、25分以内で残量5%から80%まで補充できる。
エクステリアはアウディが「スポーツバック」と呼ぶ5ドアのファストバック・スタイルで、A6だけでなく兄弟車のA7の未来像をも予感させる。デザイン面にも、今後のアウディを予感させる点が数多い。EV向けに再設計されたシングルフレーム・グリルやクワトロ・ブリスターと呼ばれるフェンダー処理は、従来モデルの特徴を発展させたものだが、ボディ・サイドに設置された、低いバッテリー搭載位置を示す黒いパネルは、アウディのEVを象徴する要素になるという。
エネルギー効率に影響する性能も追求され、空力性能は0.22のCd値を達成した。また、ヘリオシルバーと銘打ったボディ・カラーは、車体の立体感を強調するだけでなく、太陽光の反射率を高め、エアコンの電力消費を抑える機能も加味されている。
マトリクスLEDヘッドライトは動画投影機能も備え、有機LEDテールライトは3次元的なライティングを可能にするなど、灯火類は少ない表面積で最大限の明るさを確保するとともに、点灯パターンの自由度を高めた。そのほか、LEDプロジェクターがボディ各部に設置され、方向指示や警告などのサインを路面に描き出して、周囲の車両や歩行者などへより明確にドライバーの意思を伝達する。
A6 e-トロン・コンセプトを、アウディは単なるデザインスタディではないと主張しており、技術的要素の大半が将来的に実用化される見込みだ。なかでも根幹をなすPPEは、ミドルサイズからフルサイズに至るまで導入すると説明されており、A4からA8に相当するセダン系モデルと、同クラスのSUVに広く展開されることになりそうだ。そのワイドなラインナップをグローバルに展開するべく、現在、PPE対応の工場が中国・長春に建設されている。
文=関 耕一郎
(ENGINEWEBオリジナル)
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