100年に一度の変革期にあると言われている自動車の世界。台風の目はなんと言っても電気自動車だ。ディーゼルから一気に舵を切ったヨーロッパ。日本でもホンダやレクサスなど、ここにきて新たな動きが始まった。今注目すべきはどんな電気自動車なのか。今後はどうなって行くのか。そんな疑問に答えるべく、モータージャーナリストの清水和夫氏と島下泰久氏が「特別EV対談」を行った。その前篇として、欧州メーカーから登場したBEV(バッテリー式電動自動車)を取り上げる。
BEVが新しい価値をつくり出している清水 最近ぞくぞくとBEVが出ているよね。上海モーターショーでもいろんなブランドが出してきたけど、みんなカッコイイ。BEV嫌いのオレでも思わず引き寄せられちゃう(笑)。
島下 よく言われていますけど、やっぱりプロポーションが変わってきているからじゃないですか?
清水 なんと言ってもフロントにエンジンがないからね。タイヤも驚くほど四隅に押しやられている。
島下 だからノーズも低いし、フロアにバッテリーを敷きつめているから当然ホイールベースも長い。必然的にスタンスも良くなる……といったような物理的要因もありますが、あとはやっぱりBEV自体が今イケイケなんですよ。
清水 ちょっと調べてみたけど、内燃エンジン車をベースにBEVにコンバージョンしたクルマは全長に対するホイールベースってせいぜい61%なんだけど、純粋なBEVとしてつくられたジャガーIペイスとか、ホンダeとか、フォルクスワーゲンのID.3は、65%にまで達している。とうぜんクルマ全体のプロポーションは変わるし、重心も見た目以上に低い。これこそが内燃エンジン車にはできなかった新しい価値だよね。昔、初代ゴルフが登場したとき、エンジン横置きFF(ダンテ・ジアコーサ方式=フィアットのエンジニア)を採用し、全長を長くしないでキャビンを広くした大衆車のFF革命を思い出したよ。

ジャガーIペイス

ホンダe

フォルクスワーゲンID.3
島下 以前は、BEVは個性を出しにくいって言われていましたよね。でも、デザインの面では、あきらかに個性というか、すごく新しいことができている。
——(エンジン編集部)既存のクルマをBEV化したりプラットフォームを共用化することでコストを下げたり、開発のスピードを上げたりする動きもありましたよね。
清水 メルセデス・ベンツのEQシリーズ、最初のEQCはまだその段階だった。プジョーもe-208やe-2008はそう。
——でも清水さんが惹かれるのは、そういうコンバート型のBEVではなく、専用プラットフォームのBEVなんですよね。EV独特のオーラを持っているような。今回はクルマとしてもとても魅力的に見える、そういうBEVを、まずドイツ車を中心に見ていきましょうか。

メルセデス・ベンツEQC

プジョーe-208

プジョーe-2008