2021.06.29

CARS

アメリカンGTカーのシボレー・カマロのクーペとコンバーチブル! 天国に近づけるのはどっちだ!?

アメリカを代表する4座のクーペ&コンバーチブル、シボレー・カマロ。子供の頃、カマロに憧れていたというジャーナリスト、国沢光宏が、クーペとオープンの2台に乗り、アメリカンGTとしての魅力を書き下ろす。

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日本で買えるのはカマロだけ

私世代のクルマ好きにとってアメリカ車のGTカーといえば、迷うことなくシボレー・カマロかポンティアック・ファイアーバード・トランザム、フォード・マスタングになります。いずれも子供の頃は憧れの存在でしたね! 私の家はサンプラザで有名になった中野で、駅の近所ながら比較的大きい駐車場に隣接していた。サンモール商店街などにお店を出している叔父さん達は皆さんクルマ好き。しかも1960年代といえばアメリカ車の全盛期でしたね! ヘッドライトがひっくり返るサンダーバードや、巨大なマスタング・マッハI等々、憧れの存在!

やがて日本に入ってきたカマロやトランザムもカッコよかった。今でもその時の気持ちがたっぷり残っているらしく、アメリカンGTカーといつか一緒に過ごしたいとずっと思っていたのだけれど、今やトランザムは絶版になりマスタングも日本から去った。残るはカマロだけ。嬉しいことに最新のカマロも往年の雰囲気をキッチリ持っている。長いボンネットを持ち、思い切りワイドで低いシルエット。そして後輪駆動。なにより同じくらいのボディサイズを持つ欧州のGTカーよりずっと気軽につきあえます。

フェイスリフトを受けた新型シボレー・カマロは2020年1月の東京オートサロンでお披露目された。

ダウン・サイジング

ということで、カマロである。現行モデルは全長4780×1900×1350mmのボディに275psの2リッター直噴4気筒ターボを搭載(パワフルなV8も選択可能)。オバマ大統領時代に厳しい燃費規制を打ち出したため、アメリカ車も急激なダウン・サイジングを行ったのだった。アメリカ車といえば大排気量V8でしょう、と思うだろうけれど、1560kgとサイズからすれば案外軽いため、2リッターでも元気よく走ってくれる。



レザー・シートは標準装備。ホールド性、掛け心地ともに良好だった。リア・シートは予想に反してきちんと座ることができた。ヘッドレストがないのが残念。



今回のテーマはGTカーのクーペとコンバーチブルを考える、ということ。改めて乗り比べてみましょうということで2台持ち出してみた次第。どちらがいいか? これはもう改めて書くまでもなくクーペに軍配を上げておく。ボディのしっかり感が明らかに違っている。そして静粛性や快適性、居住性もクーペ。20年前の私であれば迷うことなくハイパワー・エンジンを搭載したクーペ・ボディを選んだと思う。当時で言うとZ28というモデルですね。アメリカでSCCAのレースをやっていた時、直線でブチ抜かれたの思い出す。

レブ・カウンターとスピードメーターはアナログを採用。メーターナセル内には左から油温計、水温計、燃料計、ブースト計が液晶表示される。

トランク容量は257リッター。

参考までに書いておくと私が乗っていたのはアメリカでコーナリングマシンと評されていた3リッターNAのフェアレディZ。ところがレースをやってみると5.7リッターのカマロZ28、直線はもちろん、広いトレッドを武器にコーナリングも速い! 「カッコだけのGTカーじゃないね!」とシミジミ思ったもの。若い頃にカマロを買ったら、迷わずハイパワー・エンジンを搭載するクーペだったろう。ところがジジイになったし、ハイスピードで走るような社会環境じゃなくなってきた。



トルキーで扱いやすい2リッター直4ターボ。

オープンの楽しみ

私に限らず、皆さんクルマをじっくり楽しみたいという空気になったような気がする。となると俄然コンバーチブルの存在感が大きくなるのだった。そんな私は、今まであまり書いてこなかったけれど、オープンカーを何台か購入したけれど、ほとんど屋根を開けて走っていない。カルマンギア・コンバーチブルも、レストアしたフェアレディSRL311も、はたまた屋根が開くように作られているポルシェ914-6やフェラーリ328GTSもポルシェ・ボクスターも2、3回しかTOPを開けた記憶が無い。

だったらクーペを買えばいいのに、と思うだろうけれど「開けられる」と考えるだけで満足しちゃう性格なのだった。正確に書くとTOPを開けるとボディが揺れるからイヤなのである。けれど最近になって「屋根開けて走りたい」気持ちが徐々に大きくなってます。年齢による変化や、環境が良くなったことも(一昔前の東京だと屋根開けた途端、臭いディーゼルの排気ガスを吸うハメになった)大きいんだと思う。移動そのものを楽しみたいのなら、オープン・ボディってステキだ。

電動ソフトトップは13秒で開閉、48km/hまで作動可能。コクピット周りはスポーティな印象。コンバーチブルには黒と赤のツートーン・レザーシートがよく似合う。

後席は荷物置き場と考えた方がいい。

リア・デッキが高いので、キャビン内の風の巻き込み(リアからセンター・コンソールへ抜ける風)をかなり低減させている。「天気の良い日にBOSEのオーディオ鳴らしながら走ってると、幸せってコレだね! と思う」(国沢光宏)。

もう一つ。今回カマロのコンバーチブルに乗って「あれれ?」と感じたのは、以前よりボディの緩さ感がずいぶん減ったこと。考えてみたら衝突基準の強化などにより、前面だけでなく側面やロール・オーバーなど、コンバーチブルにとって厳しい条件となっている。そいつを全てクリアさせようとしたら、必然的にボディを強固にしなければならないんだと思う。カマロのコンバーチブル、私でもボディの緩さは許容出来るレベルに届いている。技術の進化って素晴らしい!

加えてエンジンとのバランスもいいんだと思う。パワフルなV8エンジンと、サイドウォールの堅いスポーツ・タイヤを組み合わせたら、やはりボディを揺する。軽い4気筒エンジンに20インチの40扁平ながら乗り心地も考えたタイヤの組み合わせだと、これまたボディの負担が小さい。V8のグモモモモ……というビート音を楽しめないのは少し残念ながら(今や騒音規制の強化でエンジン音も聞こえないレベルになってきた)、海風に吹かれながら屋根を開けたカマロで流していると幸せな気分だけ味わえる。



オーディオがいい!

カマロに限って言えばオーディオも素敵だ。もちろんクーペでBOSEを鳴らしたって満足するけれど、オープンでお好みの音楽を聴くと天国に近づく。趣味が悪いと思われるかもしれないが、私はアメリカン・ポップスをドンシャリで聴くのを好む。アメリカの人ってラジオ局まで低音を強調した音質にしているほどストローク感のある音を出したがる。スピーカーのコーンをストロールさせ、空気を揺するワケ。そういった音を鳴らすならBOSEがいい! ダメなBOSEもあるが、カマロのスピーカーは低音鳴ります。



クーペとコンバーチブルで同じ曲を鳴らしてみたら、後者の方が気持ち良い! オープン・カーに乗ったことのある人なら皆さん同意してくれるんじゃなかろうか。音楽をパワフルに聴くのなら、コンバーチブルです! 今回の取材もアメリカンTOP50を聴いていたら、そのまま乗って帰りたくなったほど。カマロ・コンバーチブル、いいね! クーペとの価格差は79万円。大がかりな電動TOPの作りなど見たら十分納得できるし、おそらく手放す時の査定額で半分以上回収出来るかと。

そろそろまとめよう。アメリカンGTカーの持ち味はカジュアルでいながら相当レベルの満足感を得られること。おそらくアメリカに於けるGTカーの使い方こそ、本来のGTなのかもしれません。ロサンゼルスからラスベガスなど、500km以上の移動にだって皆さんクルマを使う。決してスポーツカーのようにタイトじゃなく、それでいてセダンよりオシャレ。コンバーチブルになると、そいつに素晴らしいトッピングを3つ加えたイメージか? 今の私なら迷わずコンバーチブルを選ぶと思う。

■シボレー・カマロ・コンバーチブル

駆動方式 フロント縦置きエンジン後輪駆動
全長×全幅×全高 4780×1900×1359mm
ホイールベース 2810mm
車両重量 1670kg
エンジン形式 直列4気筒ターボ
総排気量 1998cc
最高出力 275ps/5500rpm
最大トルク 400Nm/3000~4000rpm
変速機 8段AT
サスペンション 前 マクファーソンストラット/コイル
サスペンション 後 マルチリンク/コイル
ブレーキ 通気冷却式ディスク
タイヤ 245/40R20
車両本体価格 629万円

■シボレー・カマロLT RSヘリテージ・エディション

駆動方式 フロント縦置きエンジン後輪駆動
全長×全幅×全高 4780×1900×1359mm
ホイールベース 2810mm
車両重量 1560kg
エンジン形式 直列4気筒ターボ
総排気量 1998cc
最高出力 275ps/5500rpm
最大トルク 400Nm/3000~4000rpm
変速機 8段AT
サスペンション 前 マクファーソンストラット/コイル
サスペンション 後 マルチリンク/コイル
ブレーキ 通気冷却式ディスク
タイヤ 245/40R20
車両本体価格 550万円

文=国沢光宏 写真=茂呂幸正

(ENGINE2021年6月号)

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