2021.07.05

CARS

ディーゼル・マイルド・ハイブリッドを搭載したジャガーXFスポーツブレイクに試乗 全部EVにするなんてもったいない!!

上陸から3年を経て大幅なマイナーチェンジを実施したジャガー唯一のステーションワゴン、XFスポーツブレイクのディーゼル・モデルに、エンジン編集部のウエダが富士山の麓で試乗した。

4年後は全てEVに

「これが、あと4年でなくなるなんて……」。マイナーチェンジしたジャガーのステーションワゴン、XFスポーツブレイクと丸1日付き合って、心底惜しいと思った。経済的なディーゼルも、低く流麗なスタイルながら広い荷室を持つ実用的なパッケージングも、一切合切ご破算にして、4年後、ジャガーはBEV(電気自動車)だけのラグジュアリー・ブランドになる。長期リポート車のIペイスに毎日乗っている身としては、BEVの優秀さと面白さは重々承知している。けれど、このXFスポーツブレイクがあと4年で失われてしまうだなんて。もったいないとしかいいようがない。
 


なぜそう思ったのかといえば、2リッターのターボ過給ディーゼルが、従来よりずっと良くなっていたからだ。アイドリング・ストップから再始動する時の振動の少なさに驚く間もなく、滑らかにするりと動き出し、そこから右足を少し踏み込んでいけば、耳ざわりでない軽やかなビートを紡ぎながらするすると伸びていく。スターターと発電機を兼ねるベルト駆動式モーターによって回生時に蓄えていた電力が、発進時や変速時に絶妙に力添えをしている。さらに踏み込めば、力強さは十分以上。富士山の麓の急な坂道でも、ドライバー込みで2tを超える車体が、ゆうゆうと加速する。43.8kgmの最大トルクの発生回転数はわずか1750回転。レッド・ゾーンはずっと上の4200回転からだから、8段ATのモードを切り替え、マニュアル・シフトを楽しむこともできるが、基本的に自動変速プログラムに任せていたほうが静かで滑らかで、荒々しいところをほとんど見せないのが好ましい。右足の動きに対する反応も従来よりずっとレスポンスがいい。このジャガーのインジニウム・エンジンは第2世代に進化し、スティール製の新しいピストンの採用やインジェクターの改良が施されるなど、しっかり磨きがかかっている。

 


振動や騒音ではBEVに分があるが、試乗車の満タン時の航続可能距離は925kmという表示だった。日本橋から青森に続く最長の国道、4号線を余裕で走破する数字だ。最新のBEVでも走りきるのは不可能な距離である。しかも山道をさんざん駆け回っても、平均燃費は15km/リッターを下回らない。BEVにはBEVの、ディーゼルにはディーゼルの良さがある。ようは適材適所なのだ。

 



この2リッター・ディーゼルは4輪駆動との組み合わせだけが上陸しており、後輪駆動が欲しいなら2リッター・ガソリンを選ぶしかない。でも、縦置きのパワートレインを載せる現行ジャガーXJ、XF、XEの4輪駆動システムは、後輪だけでなく常時10%の駆動力を前輪にも伝え、必要に応じて駆動力を振り分けるもの。特筆すべきは高速道路でビシッと安定している一方で、前輪が駆動と操舵を兼ねているのにもかかわらず、ステアリング・フィールがとびきりいいこと。少し軽めだが正確で、その上ほどよくシャープで、反応のいいエンジンとの相性は上々だ。峠道でも不安なく速いペースをずっと保つことができる。4輪駆動を選んで間違いない。

 施錠&解錠などができるリストバンド型アクティビティ・キーは第2世代に進化。

アドブルー注入口は荷室内の左側に。

試乗したXFスポーツブレイクのカルパチアン・グレイの外装色はかなりシックな雰囲気だが、いにしえの赤い横長ロゴをオマージュしてちりばめたというグリルや、空気吸入口が大きく広がったバンパー、J字型のLEDライトのおかげで、ぐっとワイルドで今風になっている。




BEVよりも先を行っている!?

 
内装もそうだ。変更点は大型化した液晶ディスプレイや、せり出す円筒形から小ぶりで握りやすい形になったシフトノブくらいなのに、外観以上に現代的に見える。ちょっと驚いたのは完全自動化したサイドブレーキで、Iペイスにすらある解除スイッチまで廃止になった。新たに液晶がついた、置き忘れることのないリストバンド型キーも面白い。ある意味、BEVより先を行っている。
 
欧州を中心にBEV狂想曲が流れ、内燃エンジン車はもう未来がないような雰囲気が漂っている。けれど、使い勝手がよく、経済的で、熟成を重ねてスポーツブレイクという名にふさわしい走る喜びを備えたステーションワゴンは、BEVではそうそうなし得ない、理想的なグランドツアラーだと、僕は思う。

■ジャガーXFスポーツブレイクS D200
駆動方式 フロント縦置きエンジン4輪駆動
全長×全幅×全高 4975×1880×1495mm
ホイールベース 2960mm
トレッド(前/後)1605/1595mm
車両重量 1960kg
エンジン形式 水冷直列4気筒DOHCターボ
排気量 1997cc
最高出力 204ps/3750-4000rpm
最大トルク 43.8kgm/1750-2500rpm
トランスミッション 8段AT
サスペンション(前) ダブルウィッシュボーン/エア
サスペンション(後) マルチリンク/エア
ブレーキ(前後) 通期冷却式ディスク

タイヤ(前後) 245/40ZR19
車両本体価格 722万円

文=上田純一郎(ENGINE編集部) 写真=山田真人


(ENGINE2021年7月号)

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