2021.07.20

CARS

噂のV6フェラーリは現代版ディーノどころか800psオーバーのスーパースポーツだった

フェラーリが新型ミドシップ・モデルの「296GTB」を発表した。これまで開発の噂が絶えなかったV6エンジンを搭載するフェラーリが、ついに披露されたのである。ちなみに、フェラーリのバッジを付けた市販スポーツカーとしては初のV6搭載車となる。

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その名はフェラーリ296GTB

296GTBの開発がスクープされ始めた頃から、そのモデルは1960年代後半に12気筒を積むフェラーリの下位に位置する入門モデルとして誕生したディーノの再来と予想され、車名もディーノを踏襲するのではと囁かれていた。しかし実際は、車名にはフェラーリの名が掲げられ、そのスペックはフェラーリの入門編どころか、一線級のスーパースポーツと肩を並べるレベルを有している。エンジンは既存ユニットとは関連性のない、完全新設計のF 163型こと120度のバンク角を持つ2992ccのV6ツインターボで、車名の数字は2.9リッター6気筒を意味する。しかもこのユニットは、25kmのEV走行も可能なプラグイン・ハイブリッド(PHEV)システムを組み合わせる。







エンジン667psとモーター167psで最高出力は830ps

エンジン単体の最高出力は663psで、フェラーリはもとより量産市販車としても最高の比出力となる221ps/リッターを達成。このハイパワーには等間隔点火やエンジン・サポートと吸気プレナムの一体化、バンク中央へのターボ搭載を可能にした120度という広いバンク角の採用などが大きく寄与している。ターボチャージャーはIHI製の新設計でV8用より小さく、立ち上がりの敏速化と18万rpmの最高回転数を実現している。高回転が苦手と思われがちな過給ユニットではありながら、エンジン最高回転数は8500rpmで、奏でられる甲高いサウンドから、社内ではピッコロV12(ミニV12)という愛称を与えたという。

これに組み合わせる電気モーターはF1のMGU-Kの技術を応用したもので167psを発生。エンジンを含めたシステム全体での出力は830ps/8000rpm、トルクは740Nm/6250rpmに達する。駆動用の高電圧バッテリーは容量7.45kWh、トランスミッションはデュアルクラッチ式8段自動MTを採用し、後輪を駆動する。



ボディやシャシーにも見どころが一杯

ボディ・サイズは全長4565×全幅1958×全高1187mmで、ホイールベースは現行フェラーリ最短の2600mm。乾燥重量は1470kgで、馬力荷重比は1.77kg/psとなる。加速性能は0-100km/hが2.9秒、0-200km/hが7.3秒、最高速度は330km/h以上だ。

この走行性能を支えるために空力も根本的に見直された。これまでドラッグ低減を目的としてきた「アクティブ・エアロ」は、はじめてダウンフォース増加のために使用。リアにはルーフから連続するエンジン・カバーを設けないが、気流を剥離させず、テール・エンドのアクティブ・スポイラーへと気流をまっすぐに導くようデザインされた。

合わせて制御系のハイテク化も推し進められた。たとえば、加速度と旋回速度を3軸計測する「6ウェイ・シャシー・ダイナミック・センサー」は自動車業界初採用。ブレーキはバイ・ワイヤ作動で、フェラーリ専用に開発されたABS制御モジュールを備える。パワーステアリングは812スーパーファストから導入された電動アシストで、これによりシャシー制御技術のサイド・スリップ・コントロールはグリップ量の推定時間を35%短縮し、制御もより正確になるという。





1960年代のフェラーリをイメージ

機能性を追求しつつもクリーンで官能的なラインを描くスタイリングは250LMをはじめとする1960年代のフェラーリにヒントを得たもの。ブレーキ用のダクトを組み込んだヘッドライト・ユニットも過去のティアドロップ形ライトに着想を得たものだ。

フェラーリはこの296GTBをまったく新しいラインナップだとしており、現行V8ミドシップの後継であるとは明示されていない。とはいえ、標準仕様で26万9000ユーロ(邦貨換算で約3500万円)、サーキット志向のチューニングが施されたアセット・フィオラノ仕様で30万2000ユーロ(同約4000万円)伝えられる価格は、23万ユーロ(日本での販売価格3328万円)ほどのF8トリブートを上回る。フェラーリはこれを、新たなV6時代の幕開けを告げる存在としており、GTBが皮切りとなる296ファミリーがマラネロの主力モデルの座に就くものと思われる。







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文=関 耕一郎

(ENGINE WEBオリジナル)

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