昭和時代創業、イタリア車一筋!
ウエダ お店といえば、こちらのスピリットさんはもうずーっとマセラティをメインで扱われていますよね。
ワタナベ なんと昭和の創業だそうで、イタリア車がメインのスタイルになってからも四半世紀は経ってるんだって。際どい品揃えだったから中古車誌でも目を引いてたよね。アライ てことは、3200GTが新車の頃もバリバリにご存知なんですね。それは心強い。ウエダ いま、3200GTの相場とかタマ数ってどんな感じなんですか?ワタナベ 数はそもそもがそんなにあるクルマじゃないけど、そこにきてここ数年は店に並べられるような状態のいい個体も少なくなってきてるんだって。アライ さすがに20年以上前のイタリア車ですからねぇ。ウエダ でも、その割には経年劣化とか少ないんじゃないですか? ほら、ずいぶん綺麗ですよ。ワタナベ もちろんリペアとかやってあるんだろうけど、そもそも大事にされてる個体も多いんじゃないかな。このクルマが出た頃って、イタリア車はドイツ車のようにはいかないんだからなるべく冷暗所保管……みたいなこともクルマ好きには浸透してきてたしね。
アライ ちなみに部品は入手できるんですか?ワタナベ だいぶ厳しくなってるって話だね。外装パーツも入手難で、こちらでは部品取り車を確保して対処しているそうで。うちの996なんかもそうだけど、この時代のクルマって、修理コストが販売相場に見合うのかのバランスが一番難しいタイミングにきているのかもしれない。ウエダ こちらのように、専門的に面倒見てくれるお店がないクルマは一気に淘汰されますよね。ワタナベ 家人が乗ってたサーブの9-3も、港北に専門工場があったからなんとか維持できてたんだよね。陸送屋に壊されて廃車になったけど亡骸はそちらに託したから、多分部品は生き続けてると思う。ふんわり優しくていいクルマだったなぁ。
アライ サーブは僕も仕事でちょいちょい乗る機会がありましたがいいクルマでしたねぇ。あの、見ても乗っても控えめだけどしっかり自分をもっている感じが堪りませんでした。ウエダ サーブももはやちょっと古いの範疇ですもんね。ときにクーペ&スパイダーになると、信頼性がぐっと上がってたりするんですかね?ワタナベ これがまた面白いというか、そうはいかないらしいよ。まぁカンビオコルサのクラッチなんかはお約束だけど、FRとはいえ最低でも50~60万円は掛かるらしいし、エンジンが丈夫でもこの先は電装系やゴムものの劣化交換も出てくるだろうと。乗りっぱなしのユーザーもいるから、個体の優劣の見分けも重要になってきているみたい。
アライ そうなんですね。マセラティがモンテゼモーロ体制になって北米進出を見据えてテールランプも法規対応して、随分アップデートされたイメージがありましたが。ワタナベ それそれ。普通そう思うよね。なんせモンテゼモーロだし。ウエダ テールランプだけオリジナルに戻したクーペっていうのが世の中的には最強なんじゃあないかと思ってました。ワタナベ それがね、並べてみるとほら、全然作りが違うんだよ。3200GTはボディ・アウターパネルの継ぎ目をことごとく鑞付けして磨いて一体化してたりするんだけど、クーペ&スパイダーはバンパー回りやフェンダー回りは割線がそのまま。まぁ今やこっちが普通で、3200GTの方がロールスみたいな作り方してるんだけど。アライ げげ、ほんとだ。
ワタナベ これはガンディーニのクアトロポルテにも同じような傾向が見られるんだって。マセラティって会社がヤバい時の方がものの作りはいいんですよねってお店の人は笑ってたけど、真理だよねぇ。ウエダ 要はモンテゼモーロ、単にコストカッターかよと。アライ そういうエピソードもイジりながら楽しめるっていうのもちょっと古いクルマのいいところだよね。
▶「ちょっと古いクルマが面白い!」の記事をもっと見る話す人=渡辺敏史(まとめも)+新井一樹+上田純一郎(ともにENGINE編集部) 写真=阿部昌也(ENGINE2021年8月号)