2021.08.14

LIFESTYLE

懐かしのDCブランドやキョンキョンのステージ衣装も! 『ファッション イン ジャパン』でたどる装いの歴史 

会場風景。最も広い面積が与えられたDCブランド全盛の1980年代の章。マネキンに着せられたメンズ、レディスの服だけでなく、映像や写真、雑誌などを使い、ファッションの向こうにある時代を見せている。

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戦後から現代までの日本のファッション史を網羅する『ファッション イン ジャパン』が国立新美術館で開催中。装いの歴史から、日本の社会を振り返る。

展示品数は800点以上

東京六本木の国立新美術館で行われている展覧会、『ファッション イン ジャパン 1945-2020 -流行と社会』が面白い。同展は、戦後から現代にいたる日本のファッションの歴史を振り返ったもの。実はこれまで、日本のファッションを回顧する本格的な展覧会が開催されたことが無かったというから驚きである。しかも展覧会名の最後に「流行と社会」とあるように、ファッションを軸に、関連した世相やメディアを含め、装うことの周辺文化まで紹介しているのが特徴だ。この切り口のお陰で、一部の人のために作られた先鋭的なファッションも、その時代を代表するひとつの風俗として身近に感じられる仕組みになっている。展示品数も、衣装だけで315点、全体で約820点にも及ぶ大規模な展覧会だ。


戦後、多くの服飾誌が登場。中原淳一によって創刊された女性誌『それいゆ』はファッションに多くのページを割き、中原によるスタイル画や彼がデザインした服を多数紹介。『それいゆ』第31号 表紙/1954年/ひまわり社発行、表紙画:中原淳一/国立新美術館/(C)JUNICHINAKAHARA/ HIMAWARIYA

ファッションの向こうに感じられる時代

展示はおよそ10年ごとに8つの章に分けて、それぞれの時代を紹介。なかでも印象的だったのが戦後すぐの章で、洋裁ブームに焦点を当てている。物資が不足していた時代、服作りの技術習得のため洋裁学校が人気となり、服飾雑誌の創刊が相次いだ結果、日本に洋装文化が定着したと同展は分析している。なるほど。忘れていたが、筆者の実家にもミシンや洋裁の雑誌があり、母親が家族の服を作っていたものだ。

デザイナーズ・ブランドの力の入った広告写真は数多く撮られ、世界的なスターが登場することも。ポスターとなり、街の風景となった。広川泰士/KOHSHIN SATOH×マイルス・デイヴィス/1988年

それが、時代が進むにつれ既製服が大量生産されるようになり……。同展はユニクロにまで言及する間口の広いもので、他にも人々に影響を与えた映画におけるファッション、スチュワーデスや1970年の大阪万博のユニフォーム、デヴィッド・ボウイや小泉今日子のステージ衣装、80年代に大挙して登場したDCブランドと力の入った広告写真などが展示されている。まさに「懐かしい!」から「へ~、そうだったんだ」が連続する展覧会で、ファッションの向こうに感じられる、それぞれの時代に思いを巡らせた。

小泉今日子の紅白の衣装を3年分展示したのは、この展覧会の間口の広いところ。中野裕通/ドレス 第36回NHK紅白歌合戦 小泉今日子氏衣装 なんてったってアイドル/1985年/作家蔵

本展を観終えて心動かされたのは、多くの人が装うことに強い情熱を注いできたという事実。ファッションは、我々の生活の一部なのである。コロナ禍ですっかり忘れていた、お洒落をして出かける喜びを思い出した。

映画は1950~60年代にかけて最も影響力のあったメディア。この時期、森英恵は数百本の映画衣装に関わった。森英恵/アロハシャツ 映画「狂った果実」衣裳/1956年/日活株式会社 撮影:杉本和樹

『ファッション イン ジャパン1945-2020 ---流行と社会』は9月6日(月)まで国立新美術館 企画展示室1Eで開催中(東京都港区六本木7-22-2)。

文=ジョー スズキ(デザイン・プロデューサー)

(ENGINE2021年9・10月号)

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