2021.08.24

LIFESTYLE

世界が注目! 濱口竜介監督と西島秀俊が挑んだ村上春樹の世界

(C)2021『ドライブ・マイ・カー』製作委員会

全ての画像を見る
カンヌ国際映画祭に出品され、日本映画として初めて脚本賞を受賞した『ドライブ・マイ・カー』。3時間近くに及ぶ、その作品世界が伝えるものとは?

advertisement


ベルリンに続く快挙

近年、是枝裕和や黒沢清といった日本のベテラン監督が海外の映画祭で栄冠を勝ち取り話題を呼んだが、今年、最も注目されている日本の若手といえば42歳の濱口竜介監督だろう。3月のベルリン国際映画祭では『偶然と想像』(12月公開)が次点に当たる銀熊賞を受賞。そして今回紹介する『ドライブ・マイ・カー』も、7月6日に開幕したカンヌ国際映画祭のコンペティション部門に出品され、日本映画では初となる脚本賞を獲得したのだ。




主人公は舞台演出家であり俳優の家福(西島秀俊)。愛する妻を突然亡くした彼は2年後、演劇祭に参加するため、妻の記憶が刻まれたサーブ900を運転して広島へと向かう。だが現地に辿り着いた彼は、実行委員会の規定により滞在中の運転を禁じられてしまう。その代わりに専属ドライバーとして、左頬に傷のある無口な若い女性、みさき(三浦透子)をあてがわれる。




原作は村上春樹の同名短編小説。濱口監督は、村上春樹による別の短編小説のモチーフも取り入れながら、179分という長尺の作品に仕上げた。舞台を東京から広島、北海道、そして韓国に広げるなど大胆な脚色がなされているが、原作のエッセンスは的確に捉えている。


家福の妻は、ある謎を残したままこの世を去った。そんな妻を理解しきれなかったという思いが、彼の心に暗い影を落としている。だがどんなに親密な相手であろうと、他者を完璧に理解することなどできるのだろうか? 本作は人間関係における根源的な問いを突きつける。



これまでの濱口作品もそうだったが、今回もコミュニケーションが大きなテーマとなる。劇中、家福が演出する芝居に集まるスタッフ・キャストが多国籍なのもそのためだろう(中には韓国手話の役者も登場する)。だがコミュニケーションの難しさを伝える一方で、車中でほとんど言葉を交わさなかった家福とみさきも、次第に打ち解け、互いの心の内を語り始める。そこに言葉を超えた、新たな絆が生まれていくことを感じながら……。



■『ドライブ・マイ・カー』は8月20日よりTOHOシネマズ日比谷ほか全国ロードショー

文=永野正雄(ENGINE編集部)


(ENGINE2021年9・10月号)

無料メールマガジン会員に登録すると、
続きをお読みいただけます。

無料のメールマガジン会員に登録すると、
すべての記事が制限なく閲覧でき、記事の保存機能などがご利用いただけます。

いますぐ登録

advertisement

PICK UP



RELATED

advertisement

advertisement

PICK UP

advertisement