2021.09.20

LIFESTYLE

【書評】美味しいピザと創造力 予約の取りづらいピザ・レストラン、「エンボカ」の物語が一冊の本になった

創作ピザの名店として有名な「エンボカ」。そのオーナーの今井正さんが、エンボカが誕生してからの 20年をまとめた250ページを超える写真集をつくった。現在73歳の今井さんに、いまなお衰えることのない 創作に対するエネルギーの源はなんなのか聞いてみた。

53歳にして始まった第二の人生

20年前、軽井沢でひっそりと始まった創作ピザの店、エンボカ。いつの間にか全国にその名が知れ渡る名店となり、今では軽井沢のほかに東京と京都にもお店がある。今井さんはいま73歳だから、エンボカを始めた時は53歳だ。

サラリーマンなら勤め人としての終わりが見えてくる年齢だが、それまで建築家として活躍していた今井さんは、そこから第二の人生をスタートさせ、飲食業という未知の世界を悠々と泳ぎきった。

いったいそんなエネルギーがどこにあったのか。50代も後半になってくると、肉体的にも精神的にも踏ん張りがきかなくなるものだ。今井さんに会ってみたいと思ったのは、人生の岐路に立ったとき、何がきっかけで新しい道を進むことになったのか、それを直接聞いてみたくなったからだ。

「深淵で、眩くて、ダイナミックで、未知なるもの エンボカのピザはテーブルの上の小宇宙」という三谷幸喜氏の表紙のオビの言葉に思わず膝を打つ。『enboca』(ネコ・パブリッシングカンパニー刊 5000円+税)

というのも、この4月に出版された写真集『enboca』には、料理はもちろん、その世界観がいかにして出来上がったのかが書かれているのだが、読み進めるうちに、これはとんでもない本かもしれない、と思うようになった。

最初は美味しそうな表紙に惹かれて手に取った本だったが、有名レストランのレシピ本だと思ったら大間違いで、写真の合間に挟み込まれた文章には、今井さんの人生が生き生きと描かれ、こんなに面白い人がいたのかと思わず唸ってしまった。

今井正さん。73歳。まだまだ好奇心は衰えない。

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