2021.11.16

CARS

13カ月で約1万6000kmを走破!【ジャガーIペイスHSE 長期リポート 最終回】

欧州プレミアムEVの中でいち早く上陸した電気自動車、ジャガーIペイスとともに過ごした13カ月。毎日が新鮮で、刺激的なものだった。

ちょっと古いクルマ好きにとって、EVってどうなの?

とにかく速くて静かで、快適で楽しいクルマ。でも、何も考えずに乗ることのできるクルマじゃない。89号車ことジャガーIペイスの後ろには、自動車会社の戦略に環境問題、充電時間や充電インフラ、税制に補助金などEVの課題が見え隠れしている。では、そんなこんなを一旦横に置いて、1台のクルマとして13カ月付き合ってみてどうだったか。

なにせ担当者がちょっと古いクルマ好きだから、何もかも新しく感じることばかりだった。電気にまつわる単位からしてそうだし、充電器の扱い方も、充電時間の過ごし方も、時には走行ルートを先読みして悩むことも、全部が全部、新鮮だった。

真夏でも真冬でも計画通りに充電

リポートをまとめるために、スマホのアプリ“ジャガー・リモート”から89号車のデータを抜き出してみた。それによると総走行距離は1万5930km。1カ月あたり約1200kmだ。これだけ走るのに必要な充電回数は予想よりずっと少なかった。

平均で見ると、週に1度の出先の急速充電を基本とし、週に2度、1回につき6~8時間ほど新潮社の200V普通充電器を補助的に使うだけでほぼカバーできた。もちろん遠方取材では急速充電を多用したが、機器の不調などで充電できなかったのは2回だけ。40度近い真夏でも、ドカ雪の降る真冬でも、ほぼ充電器の出力通りの容量をチャージできるのは、ドライブの計画が立てやすかった。

航続距離はWLTCモードでは438kmだが、電池容量が90kWhで、積算電費は3.8km/kWhだった。満充電で342km走れる計算で、実際ほぼ航続可能距離の数字通りに走ることができた。電池に関する89号車の信頼性は高かった。



出先の急速充電は、多くの施設に屋根がなく雨だと憂鬱だったし、ケーブルが短かったり太く扱いづらかったり、煩わしいこともあった。そのかわり給油所の営業時間や定休日は気にならないし、燃料代の値動きに一喜一憂することもない。空いている居心地のいい急速充電器を探して回るのは面白かったし、充電中も空調が効いてWiFiも使えるから、リモート・ワークにも最適だった。

運用コストは劇的に安い!
1回につき450円/30分の急速充電代も集計してみて驚いた。1カ月で平均約1200km走って3168円。別途4200円/月の基本料金(新車時~一定期間は大幅の割引あり)を払っても3168+4200=7368円しかかからない。新潮社の普通充電器は89号車だけの電気代を算出できなかったが、それを足しても内燃エンジン車より、運用コストが劇的に安いのは間違いない。



ラスト・ドライブは会津へ

最後のドライブの目的地は磐梯吾妻スカイラインだった。観光客はやや多かったが、ひとたび前が開けば、つづら折りとアップ・ダウンが続く楽しくも過酷な道を89号車は苦もなく飲み込んでいく。以前、変速ショックも振動もなく進む感覚は往年のジャガーV12みたいだと思ったこともあったけど、速さも力強さも段違いだ。



オーバーハングに重量物がなく、バッテリーは床下で重心は低く、鼻先の反応はすぱっと鋭く、コーナリング・スピードは下手なスポーツカーを凌ぐ。しかもたくさんの荷物も人も乗せられるし、2つのモーターが4輪を協調制御するから雪道だって行けるのは実体験済みだ。

Iペイスは一言でいえば、目の前にある未来のクルマだ。使う環境を選ばない、とはまだまだ言い切れないし、面倒なこともないわけじゃない。でも、共に過ごした13カ月は何かにつけ新しい発見があって、日々刺激的だったことは断言したい。



文=上田純一郎(ENGINE編集部) 写真=山田真人/ENGINE編集部

■89号車/ジャガーIペイスHSE
JAGUAR I-PACE HSE
新車価格:1183万円(OP込1365万9000円)
導入時期:2020年6月
走行距離:2万6739km(スタート時1万809km)

(ENGINE2021年11月号)

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