2022.05.03

CARS

ポルシェの「RS」モデルとは、どんなクルマなのか?【ENGINEアーカイブス:ポルシェ911】

ポルシェGT3カップチャレンジに、タイプ997のGT3カップカーでフル参戦した経験もある島下泰久氏。

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エンジン本体は変わらないがフライホイールがシングルマスになり、ECUも変更されている。おかげでアイドリング時はずっとガラガラ言っているし低速トルクも極端に薄いけれど、その代償として吹け上がりは一層シャープだ。こんな大排気量で、しかもSOHC2バルブで、どうやればこれが可能なんだろう? 今も唸らされるほどに……。

サスペンションは前号で本誌村上編集長が言っていたように相当締め上げられているけれど、タイプ964のカレラRSに較べれば全然しなやか。リア・サスペンションがマルチリンクになり、そこまで固める必要が無くなったのだろう。実際、スタビリティもトラクションも想像以上に高い。300psなんて余裕で受け止めてしまって、つまらないくらい危なげがないのだ。

要するに、その乗り味はほぼカップカーにナンバーを付けただけと言っていい。おかげで乗るところ、乗って気持ち良いところは、とても限られるのは事実だけれども。

3.8リッターの水平対向6気筒SOHCエンジンは最高出力300ps/6500rpm、最大トルク35.5kgm/5400rpmを発生する。

このあと911はボディ構造を一新し、水冷エンジンを積んだタイプ996の時代になる。当初、ホットバージョンとして登場したのはGT3。エンジンは空冷の流れを汲む所謂“GT1ブロック”を使った専用品でサスペンションもガチガチに締め上げられていたけれど、軽量化はさほど徹底されてはおらず、快適性にも配慮されているなど、従来のカレラRSに較べると、間口が広げられたように感じられた。

GT3RSの登場

911GT3がカレラカップなどのレースに使われるようになったこともあり、RSの伝統はGT3が継承するのだろうと思っていたところに世界限定200台で登場したのが911GT3RSである。すでにタイプ996が後期型になっていた2003年のことだ。

まさに“ナナサンカレラ”を想起させるストライプが印象的な、この初代GT3RSは、軽量化されロールケージとCFRP製リア・スポイラーが備わり、サスペンションは実はジオメトリーまで変更されるなど、まさにRSの伝統通り、走りの面だけに特化して徹底的に手が入れられていた。そしてタイプ997以降もGT3RSは用意され続けている。車体がワイド化され、前期が3.6リッター、後期が3.8リッター、そしてファイナルバージョンの4.0リッターとされたエンジンも専用となるなど、今に続く方程式はこの頃に整えられた。

一昨年、ワンメイク・レースのポルシェGT3カップチャレンジに、タイプ997のGT3カップカーでフル参戦して実感したのは、市販車と走りの感触がきわめて近いということだった。遮音、乗り心地といった部分を除けば、まさにGT3RSは“ロードゴーイング・カップカー”そのものである。

その意味では、タイプ991前期型のGT3RSは異色の存在だったと言えるかもしれない。そのエンジンは最新の直噴ユニットをベースとしていたが、この時の911GT3カップなどのレーシング・カーには未だ従来型エンジンの改良版が使われていたからだ。実際に走らせてみれば、そんなことは関係無く、凄まじい刺激に満ちていたけれども。

リアの巨大なウィングもRSの証。車重は1270㎏。

新型911GT3RS

そんな状況は、991後期型となる新型911GT3RSで改められた。昨年登場のGT3から使われている新エンジンはGT3カップだけでなくGT3RやRSRの心臓とも基本設計を同じくする、まさに純レーシング・ユニット。つまりRS本来のあり方に戻ったのだ。

芯のあるスムーズな吹け上がり、トップエンドの切れ味の良さは垂涎モノだし、何より今や少数派の高回転型自然吸気エンジン特有の甲高いサウンドは、まさにレーシング・カーそのまま。これこそGT3RSの堪らない魅力である。

とは言え、サーキットを走らせることはせず、たまに夜中の高速道路を流すくらいのRSオーナーとしては軟弱な私には、今乗っているカレラRSくらいがちょうどいいとも感じている。甘いのやら、切ないのやら、思い出もたくさん詰まっているし、憧れのカレラGTに手が届くチャンスが無い限りはずっと持ち続けるつもりだ。もちろん本音を言えば、最新のGT3RSと今のカレラRSの2台をガレージに並べられたらサイコーなんだけれど!

文=島下泰久 写真=小林俊樹

(ENGINE2018年7月号)

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