2022.04.25

CARS

可愛いだけではない! 長く愛される理由がある フィアット500Cツインエア・ドルチェヴィータに5人のモータージャーナリストが乗った!【2022年エンジン輸入車大試乗会】 

フィアット500C ツインエア・ドルチェヴィータ

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続いて、藤野太一、山崎元裕、藤島知子の3名のインプレッション。独自の走らせ方や楽しさをそれぞれ表現しているが、誰も欠点を欠点と思っていないところが興味深い。

今のうちに味わいたい“古式ゆかしさ”/藤野太一

シリンダーにキーを差し、クイっとひねると、排気量875ccの2気筒エンジンがブルンと目覚める。シフトレバーを押し下げ1速に入れて、アクセルペダルを踏み込むと、コトコトと音を立てるように走り出す。5速シーケンシャル・トランスミッションのデュアロジックは、ゆっくり走っていると、まるで人間がクラッチ操作をしているかのように、少し間をとりながらシフトアップしていく。しばらくして、少しばかり車外からの音の透過率が高いなと思って後ろを振り返ったら、幌屋根なのに気づいた。スイッチを押してルーフをオープンにしたら、逆に音も気にならなくなった。これがデビューした2007年、イタリアで赤と白の2台の広報車を借り出し、約1週間の旅に出たことを思い出す。いまは安全装備やタッチパネル・モニターといったユーティリティなど、細部は最新のものになったが、受ける印象はまったく変わらない。NUOVA500はもちろん、このチンクエチェントも間違いなく名車だと思う。日本でもすでにBEV版の販売が始まった。“古式ゆかしい”を味わうなら今のうちだ。



小さなクルマで大きなクルマを抜き去る。嫌いじゃないよ/山崎元裕

最近、自動車、とりわけスポーツカーや、さらにその上をいくスーパー・スポーツカーは、アクセレレーターを全開にできる時間が長ければ長いほど楽しいと思うようになってきた。実際に今では、500ps、600psなどはスーパースポーツの世界ではごく普通のスペックになりつつあるし、BEVの中には2000psをターゲットに開発を進めるモデルもある。でもそれらのモデルに試乗して、アクセレレーターをどれだけ全開にしてレブ・リミットに到達できましたかと問われると、たぶん公道上では、数%にも満たない数字に違いないのだろう。と、ふと考えたのは、今回最後に乗ったフィアット500Cの車内でのこと。小さく、けっしてパワフルなわけでもないエンジンを、5段自動MTを駆使して少しでも効率的に回し、より大きなクルマを抜き去っていく。これは弱い者が強い者を倒す、いわゆる漫画の定番ともいえるストーリーではないか。嫌いじゃないよ、こういう展開。嫌いじゃないよ、こういうクルマ。そういえばウチには、このくらいのサイズなら、もう1台入る駐車場のスペースがあるんだよなあ。

新グレード、ドルチェヴィータはボディ同色のインパネがあしらわれるほか、ブラック&アイスのコンビネーション・カラー・シートを備えるなど、オシャレな仕様となっている。新たにクルーズコントロールも標準装備された。

思わず笑顔になる小粋なイタリアン・スモール/藤島知子

イタリアの小粋なスモールカーとして日本のユーザーに愛されてきたFIAT 500。オープントップの『500C』はボディサイドのフレームを残した状態で頭上の幌が電動開閉する仕組み。停車時はもちろん、高速走行中でもスイッチひとつで任意の位置で開閉できる仕組みだ。試乗したのは500C ドルチェヴィータと呼ばれる2021年10月に加わった新グレード。インパネにはボディ同色のパネルがあしらわれるほか、エンタメ系はスマホアプリと連携してカーナビや音楽再生が可能。ブラック×アイボリーのシートは500の刺繍とキルティング状のステッチが施され、シックなイメージに仕立てたあたりがニクい。運転席に座ってハンドルに手を添えると、身体を適度にホールドするシート、操舵で切り遅れが少ないなど、運転姿勢がしっかりとキマる。2気筒875ccのツインエア・エンジンは独特のビート感を奏でるもので、一般道でひょいっと駆け出してみせたかと思うと、高速域では頑張って元気に走るあたりがいじらしく、ハンドリングの楽しさも織り込み済み。思わず笑顔になれる1台なのだ。



写真=郡 大二郎(メイン)/柏田芳敬(サブ)

(ENGINE2022年4月号)

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