2022.10.22

LIFESTYLE

塀もカーテンも雨戸もないのに外からの視線が気にならない! 植物の使い方が抜群にうまい家【理想の家を探す人気連載】

陽光が差し込む開放的な空間

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子供たちへの約束

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そう、ここは開放的なカリフォルニア……ではなく、 駅前にスバルの大きな工場がある群馬県太田市。田島邸は駅から離れた、40年以上も昔に住宅街として開発分譲されたエリアに建っている。

田島さんは普段使いの2台目として「916スパイダーと同じエンリコ・フミアがデザインしたスバル・レガシィ」に乗っていた時期もあるそうだ。現在はアウディA5スポーツバック(2013年製)で、その前はアルファ・ロメオ159。スパイダーと合わせて一時期アルファ・ロメオの2台持ちだったが、159に大きな故障があったため、安全重視でドイツ車となった。A5スポーツバックを選んだのは、ルーフの低さなどデザインが決め手。「クルマは黒」と主張する花織さんの意見で黒色となった。もちろん花織さんの現在の愛車、フォルクスワーゲン・ポロも黒だ。部活で野球をする2人の子供の送迎のため、長いことホンダ・ステップワゴンに乗っていたが、2人とも遠くの大学に通うため家を出たので、去年乗り換えた。



田島邸が建ったのは3年前のこと。長男が高校3年生の冬である。かつてこの場所には築40年になる古い住宅が建っていた。新婚で手に入れた田島さん一家が、18年住んだ家だ。それは、建築家の手掛ける作品とはほど遠い、普通の住宅である。幼いころから両親の仕事を見てきた子供たちは、「時間をかけてキレイな家を建てても、自分たちが住むのではなく他人に渡してしまう」のが不満だった。そこで両親は、子供たちに家を建てる約束をしたが、若い頃はそう簡単にできるものではない。そして仕事が軌道に乗り出すと、今度は忙しくて自邸にまで手が回らなくなる。それでも約束を守るため、一緒に住める期間は短いが、頑張って建てたのがこの家だ。

田島さんは子供の教育について独特の考えを持っている。特にポータブルゲーム機対策については、よく考えた。自分の子供たちだけに厳しくしても、誰か仲間が持っていれば意味がない。そこで、学校帰りに同級生たちが田島邸に集まり、木登りやボードゲームなど、いわゆる昭和の遊びを楽しむようにと工夫をしたのである。因みに庭の大きなクスノキは、田島さんが引っ越してきた時に既に植わっていたもの。歳月をかけて巨木となった。そこで田島さん夫妻が、子供たちが集まるようにと工夫したのが、庭にウッドデッキを設けること。子供たちがいなくとも友達は自由にやってきて、集い遊ぶことができるのだ。お陰で子供たちは、ポータブルゲーム機に熱中することなく育った。



そして建て替えの際、このウッドデッキだった場所は屋外テラスとなった。しかもそれまで通り、ここから直接家に出入りできるような間取りである。だから玄関は設けなかった。1階は多くの人が集まれるよう、大空間のリビング・ダイニング・キッチンが。この1階部分は、田島さん夫妻が初めて採用した鉄筋コンクリート造である。地面より40cmほど床を下げ、より近い目線で庭が見えるようにするためだ。2階には、平たい屋根の上に寝室が入る木造の小屋のような建物を2つ載せた。

この自邸を含め、田島さん夫妻の作る空間が魅力的なのは、植物の使い方が上手いからだろう。クスノキは常緑樹で常に日陰を作るので、庭に植えられる植物は限られる。そのため、日の当たる1階の屋根の上も庭にし、日光が必要な植物を植えた。1階北側の中庭を含め、視界の中に植物が溢れる癒される家だ。

夫妻の寝室。天井は高くロフトも備わる。同じく2階にある子供たちの寝室にはリビングから別の階段で上るが、夫婦と子供たちの部屋が離れていてもお互いの気配は感じられる。ちなみに2つある子供部屋は、境の壁を撤去できる構造。

幸せが溢れる家

花織さんは、かつて家を設計したお施主さんから、「自宅に戻ってくると、家から灯が漏れてくる姿に感動する」と聞いていた。体験したことはないが、それは意識して設計してきたこと。実は田島邸、塀がないだけでなく、カーテンも雨戸もない。通りからは家の中が見えるが、オープンカーに乗るようにさほど気にならないという。そして「窓から照明の灯が漏れてくる家は、幸せが外にこぼれて、付近の家にお裾分けしている感じがする」と感想を話す。夜の素敵な風景が目に浮かぶようだ。そう、ここは田島さん夫妻が作った、幸せが満ち溢れる家なのである。

文=ジョー スズキ 写真=田村浩章



構造:1階RC 2階木造 規模:地上2階 敷地面積:307.63平米 建築面積:99.46平米 延床面積:134.30平米 竣工年:2018年 所在地:群馬県太田市 設計:arc-d

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■田島寛己:建築家、1974年群馬県太田市生まれ、東京理科大卒業/ 田島花織:インテリアコーディネーター、照明コンサルタント共にハウスメーカー勤務を経て2004年に共同で設計事務所を設立。群馬県内の住宅を中心に店舗・事務所、賃貸住宅など幅広く手掛ける。植栽の使い方にも定評がある。


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(ENGINE2021年12月号)

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