強まったスポーツの要素ドライバーズ・シートに身を沈めてコクピットを見回すと、なんと言っても目を引くのはセンターコンソールに鎮座する巨大な縦型のディスプレイだ。ルーフの開閉を含めて、様々な操作がこれひとつで出来るようになっている。さっそく画面をスワイプしてルーフを開けると、箱根の青空が頭上に広がった。この開放感を味わえるだけで、もう何でもオーケーな、まったりした気分になってしまうが、走り出して意外だったのは、この新型SLの足回りが想像していたよりも硬めだったことだ。
本来、SLはスポーツと軽量を表すドイツ語のイニシャルから取られたものであったはずだが、いつからかスポーツとラグジュアリーを表すものだとメルセデス自身も言うようになっていたのを思い出す。確かに、この7代目もシートには首を暖めるエア・スカーフまで奢られて、ラグジュアリーであるのは間違いないけれど、それと同時に再びスポーツの要素が強められている気がしたのだ。それは、山道に入って速度を高めていくにつれて確信に変わった。コーナーでのステアリング操作にボディが即座に反応してスーッと曲がっていく感覚は、ライトウェイト・スポーツカー並とまでは行かないものの、リトラクタブル・ハードトップ時代のSLの乗り味とはまったく異なるものだ。そもそもが新設計の軽量高剛性で重心も下げたボディを持つことに加えて、4気筒エンジンになったことも効いているのかも知れないし、さらにターボラグのないリニアなパワーの出方が、より軽快に感じさせる要因になっているのかも知れない。いずれにせよ、1.8トンとは思えない軽快な身のこなしを見せてくれたことは驚きだった。ただし、風の巻き込みはこれまでよりやや多くなったかも知れない。途中でリア・シートの上に手動でウインド・ディフレクターを組み立てたら、驚くほど改善された。あまり飛ばさずに、ほどほどの速度でコーナーを駆け抜けるのが、すこぶる気持ちいい。さらにルーフを閉じると、極めて静かな室内空間が現れるのにも感心した。場面に応じて様々な使い方が出来る。これは大人のスポーツカーだと思った。文=村上 政(ENGINE編集長) 写真=柏田芳敬
■メルセデスAMG SL 43駆動方式 エンジン・フロント縦置き後輪駆動全長×全幅×全高 4700×1915×1370mmホイールベース 2700mmトレッド(前/後) 1600/1625mm車両重量 1780kg(前軸930kg:後軸850kg)エンジン形式 直噴直列4気筒ターボ排気量 1991cc最高出力 381ps/6750rpm最大トルク 480Nm/3250-5000rpmトランスミッション 9段ATサスペンション(前) マルチリンク/コイルサスペンション(後) マルチリンク/コイルブレーキ(前後) 通気冷却式ディスクタイヤ (前)265/40R20、(後)295/35R21車両本体価格(税込み) 1648万円(ENGINE2023年2・3月号)
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