2024.01.28

CARS

「忘れてきた青春の1日」 好きなクルマに乗ろうと決めたのは「還暦」がきっかけだった! 若き日に夢見た2台のフォーミュラカーとモーガンが今の楽しみ!

1965年型のブラバムBT16と1969年型のBT28とモーガンとオーナーの伊藤さん夫妻。

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『エンジン』の人気企画、「2台持つとクルマはもっと楽しい」。コンクリート打ちっぱなしの素敵なガレージ・ハウスに潜む2台のフォーミュラと、淡いブルーのモーガン。仲良し夫婦の、レースとツーリングの日々はいかなるものか。

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1965年型のブラバムBT16と1969年型のBT28

「26歳のときサンディエゴに行ったんだ。そこでタクシー運転手のトニーと意気投合してね。この人、元フライ級のチャンピオンだったんだけど、飲みながら“ITOって言いにくいからお前もトニーにしろ”って言われてさ。以来トニーだから、本名を知らない人の方が多いんだよ」



そう言って笑うトニー伊藤さんのガレージには1965年型のブラバムBT16と、1969年型のBT28が並んでいる。

なぜ2台もフォーミュラカーを持っているのか? 話は1969年に遡る。免許を取るや否や、トニーさんはマツダ・ファミリア・ロータリークーペを駆り、鈴鹿で行われたジムカーナに挑戦するようになった。

「速いやつばかりの中で何度か優勝しました。そうしたら某ワークスチームからお誘いが来たんですよ」

そこで「じゃあ一晩考えます」と言って会場を後にしたトニーさんだが、翌日、一転して断りの電話を入れることになる。

オーバーホール中のロータス・ツインカムが直り次第、レースに出たいというブラバムBT16。ホンダ・コレクション・ホールに出向き、ゼッケンサークルなどの寸法を図ってカラーリングとともに拘りのブラバム・ホンダ仕様に仕立てられている。

「奥さんとは高校3年からの付き合いでね。この時も“よかったね、憧れのレーサーになれるじゃない”って喜んでいたのに、鈴鹿から帰ってきたら“お断りしなさい”って」

その時のことを奥様の淑江さんもよく覚えている。

「だって私の楽しみがないでしょ。それより2人で会社を作っていた方が面白いじゃない。もう声をかけられただけで十分ですよ。実力が認められたんだから」

18歳ではじめたレーサーの夢を20歳の時に諦めたトニーさんは、その翌日に起業。以来51年間、建築の第一線でバリバリと働き続けている。

鬼才ロン・トーラナックが1969~70年用のF3マシンとして設計したブラバムBT28。若き日のアラン・ジョーンズやトニー・トリマーらが腕を磨いた傑作マシンで、トニーさんのマシンには1.6リッターのロータス・ツインカムが搭載されている。「レースは今や奥さんの方が凄くてね“今日はスタートから全開でいきなさい”ってハッパをかけられてますよ(笑)」

「18歳の時は、ウチが財閥だったらイギリスに行ってレースをしたいなと思ってた。そしたらまずは中古でブラバムBT16を買って、慣れたら新車でBT28もしくはロータス59を買おうって。まさに映画『RUSH』のラウダとハントの世界だよね。そう、この2台はあの時僕がヨーロッパに行っていたら乗ったであろうクルマたちなんです」

それでブラバムが2台なのか! と合点がいった。さらに驚くのはトニーさんがヒストリック・フォーミュラのレースに出るようになったのは、還暦を過ぎてから、ということだ。

「ずっと仕事一筋でクルマは30歳の時からずっとメルセデス・ベンツのワゴンばかり乗り継いできた。今はAMGのC63S。これは全然壊れない。この前も後ろに仕事道具積んで現場行ってきたところですよ」

また別棟のガレージには、普段使いのAMG C63SとGLB35が停められている。


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