2023.06.21

CARS

春の九州で最新ボルボにイッキ乗り その味わい深さは4車4様だった!

水を得た魚

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帰りはV60に乗り換えた。ワインディングを走り始めて数百メートルもしないうちに、XC60との違いに目を見張った。空港を出てはじめに乗ったV60とも、まるで別のクルマであるかのようにシャキッとスポーティに感じられるのだ。水を得た魚、とはまさにこのようなことか! と思った。市街地や高速道路で感じていた重厚感は微塵も感じさせず、スイスイとコーナーを駆け抜けるのだ。197馬力のエンジンは、48Vの電気モーターによる多少のアシストを加味しても峠道では多少物足りなさがあるけれど、そんなことはどうでもよくなるくらい、とにかく楽しい。



こんなに印象がガラッと変わることがあるのか、と思わず笑ってしまった。PHEVに組み合わされる8速ATも悪くないけれど、V60の7速DCTは歯切れよくパワーバンドを捉え続けてくれる。ブレーキは、XC60では回生と協調する制御の都合なのか、若干リニア感に欠けていると感じたけれど、一方マイルド・ハイブリッドのV60はハッキリとした踏みごたえで安心感がある。ハンドリングも、細かな操舵に対してクルマが正確に反応する。軽快に鼻先の向きを変えていけるから、自分の運転が上手くなったと錯覚してしまうほどだった。もちろん、ステーション・ワゴンだから重心が低いことや、前輪駆動にもかかわらず前後の重量配分は車検証上の数値で55:45と、比較的バランスが良いことも効いているのだろう。自らの手足で思い通りにクルマを操る楽しさがしっかりあるのが嬉しかった。



抜群の出来にうっとり

2日目に借り出したのは、BEV専用モデルのC40と、PHEVのXC90 T8。この日はXC90に驚かされた。エンジンのパワーこそ、初日に乗ったXC60よりも上がっているものの、基本的なパッケージは同じ。それでいて、車体はさらに大きく重い。タイヤ&ホイールも、ひと回り太く、薄く、大きいのだ。正直、スポーティな走りは期待できないと思っていたのだけれど、その予想は良い意味で大きく裏切られた。



さすがはフラッグシップ・モデル。街なかや高速領域では、XC60よりさらに上質でしなやかな走りにうっとり。静かに力強く走れる電動ドライブがより一層、この極上ぶりを引き立てている。それだけで、もう十分満足だったのに、ワインディングを走ってみたら、2.3トンを超える巨体であることを忘れてしまうほどの抜群の身のこなしを見せてくれたのだ。XC60との差を何がもたらしているかはわからないけれど、このクルマのハンドリング性能の高さは特筆モノだ。

C40は、床下に重いバッテリーを搭載することで、SUVスタイルとしては低重心かつ、ほぼ等しい前後重量バランスを実現している。都市高速の急なコーナーでは、地面に吸い付くようなハンドリングの良さが際立ち、次のコーナーが楽しみになるほどだった。ただし、アクセル、ブレーキの操作に対する反応には癖があり、細かな速度コントロールが難しい。ワン・ペダル走行も試してみたけれど、なかなか最後まで慣れることができなかった。



2日間、4台の最新ボルボに乗ってわかったのは、4車4様の味があり、その幅がとても広いことだ。いずれも室内の造り込みは丁寧かつ上質で、居心地の良い部屋が移動しているような感覚で走れる。高速道路で運転支援を使えば頼もしく運転をリードしてくれるし、シートは程よいホールド感で身体を支えてくれるから、慣れない土地の長距離ドライブでも疲れ知らずだった。

もし、どうしても1台選べと言われたら、私はV60を推す。重厚感とスポーティさの両方を兼ね備え、取り回しも良い。そんな欲張りができる1台だからだ。


文=村山雄哉(ENGINE編集部) 写真=望月浩彦



■ボルボ V60 アルティメットB4
全長×全幅×全高 4780×1850×1435mm  
ホイールベース 2870mm  
車両重量 1730kg  
乗車定員 5名  
エンジン型式 水冷直列4気筒DOHCターボチャージャー  
総排気量 1968cc  
最高出力 197ps/4750-5250rpm  
最大トルク 300Nm/1500-4500rpm  
モーター最高出力 10kW/3000rpm  
モーター最大トルク 40Nm/2250rpm  
トランスミッション 7段DCT  
サスペンション(前/後) ダブルウィッシュボーン/マルチリンク  
タイヤ(前後) 235/45R18  
車両本体価格 659万円

■XC60 リチャージ アルティメットT6 AWDプラグインハイブリッド
全長×全幅×全高 4710×1915×1660mm  
ホイールベース 2865mm  
車両重量 2180kg  
乗車定員 5名  
エンジン型式 水冷直列4気筒DOHCターボチャージャー  
総排気量 1968cc  
最高出力 253ps/5500rpm  
最大トルク 350Nm/2500-5000rpm  
モーター最高出力 52kW/3000-4500rpm(前)/107kW/3280-15900rpm(後)  
モーター最大トルク 165Nm/0-3000rpm(前)/309Nm/0-3280rpm(後)  
トランスミッション 8段AT  
サスペンション(前/後) ダブルウィッシュボーン/マルチリンク  
タイヤ(前後) 255/45R21  
車両本体価格 990万円  

■XC90 リチャージ アルティメットT8 AWDプラグインハイブリッド
全長×全幅×全高 4950×1960×1775mm  
ホイールベース 2985mm  
車両重量 2340kg  
乗車定員 7名  
エンジン型式 水冷直列4気筒DOHCターボチャージャー  
総排気量 1968cc  
最高出力 317ps/6000rpm  
最大トルク 400Nm/3000-5400rpm  
モーター最高出力 52kW/3000-4500rpm(前)/107kW/3280-15900rpm(後)  
モーター最大トルク 165Nm/0-3000rpm(前)/309Nm/0-3280rpm(後)  
トランスミッション 8段AT  
サスペンション(前/後) ダブルウィッシュボーン/マルチリンク  
タイヤ(前後) 275/35R22  
車両本体価格 1244万円  


■C40 リチャージ アルティメットツインモーター
全長×全幅×全高 4440×1875×1595mm  
ホイールベース 2700mm  
車両重量 2150kg  
乗車定員 5名  
モーター最高出力 408ps/4350-13900rpm  
モーター最大トルク 660Nm/0-4350rpm  
トランスミッション 1速固定式  
サスペンション(前/後) マクファーソンストラット/マルチリンク  
タイヤ(前後) 235/45R20(前)/255/40R20(後)  
車両本体価格 759万円

(ENGINE2023年6月号)

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