2024.01.15

CARS

2010年デビューの2代目カイエンは、どんなポルシェだったのか? アイシン製8段ATの変速マナーの良さは特筆モノ!【『エンジン』蔵出しシリーズ/911誕生60周年記念篇#13】

2代目ポルシェ・カイエン

全ての画像を見る
目が覚めるような走り

まずはカイエンSから試乗した。21インチ・タイヤにセラミック・ブレーキ、エア・サスペンション、コーナリング中のロールを防ぐポルシェ・ダイナミック・シャシー・コントロール、電子制御のリア・ディフとイン側後輪へのブレーキを使って回頭性を高めるポルシェ・トルク・ベクトリング・プラス、パドル付きの3本スポーク・ステアリング・ホイールなど、あらゆるオプションを満載した仕様だったが、これが動き出した瞬間から目が覚めるような素晴らしい走りを見せてくれた。

advertisement


とにかく、駆動系の動きがウルトラ・スムーズである。2ペダル自動マニュアルのPDKを装備するパナメーラと比べるとよく分かるのだが、たとえばアイドル・ストップからエンジンを始動してすぐに走りだすような場合、PDKはどうしてもややギクシャクした動きを見せる。その点、トルコン付き8段ATを持つ新型カイエンはギクシャクが皆無で、なんの違和感もなくスッと発進する。

このアイシン製8段ATの変速マナーの良さは特筆モノだ。普通に走っている限りはいつ変速したかもわからない程なのに、いざパドルを使ってマニュアル・シフトする時には、ドライバーの意のままに電光石火の超絶シフトを披露してくれる。7速と8速はオーバー・ドライブで、8速100km/h時の回転数は1500ちょっと。いたって平和だ。

しかし、そこからフルスロットルを当てれば、瞬く間に3速までギアを落として、怒濤の加速を開始する。直進安定性の高さはとてもこれが背の高いSUVとは思えないレべルで、路面に吸いつくように走る。アウトバーンで200km/h超で巡航しても、まったく不安感がなかった。

その一方で、ハンドリングも911並みとまでは言わないが、ポルシェ一族の一員として満足できるレベルに達している。旧型のように重さを感じさせることはないし、ほとんどロールを見せることもなく、軽快にコーナーを駆け抜けていく。

オンロード志向を強めても、オフロード能力の高さも先代並み。これはカイエンS。


次に乗ったターボも基本的な印象はまったく同じだった。加速感こそより過激になるものの、100psの差は驚くほどではなく、逆に回転フィールがややガサツになるきらいもあって、価格差ほどの価値があるとは思わなかった。私ならSで十分だ。

さて、新しいカイエンSハイブリッドの走りにも触れておかねばなるまい。330psのアウディ製スーパーチャージド3リッターV6に47 psの電気モーターを組み合わせたパラレル式フルハイブリッドは、エンジンとモーターの間にセパレーター・クラッチを備えていて、エンジンを停止させたままモーターだけで走ることができる。

モーターだけで発進し、やがてエンジンが始動する時のつなぎはスムーズだし、そもそもエンジンだけで330psもあるから、動力性能に不足を感じることはない。156km/hまでなら、走行中でもアクセレレーターを戻すとエンジンがストップし、回生ブレーキを使いながら惰性で走るのには驚かされた。

ハイブリッドはセンター・モニターにエネルギーの流れを映し出すことができる。


実際にヨットを楽しんでいるエンジニアが思いついたというこの“セーリング”モード。最初はアウトバーンを走行中にエンジンが停止して大丈夫なのかと不安だったが、慣れると、ただ風の音を聞きながら走るのが気持ちよくなってきた。


ただし、このSハイブリッドには、ひとつ大きな不満を感じた。ステアリング・フィールがほかのカイエンと違って、妙に軽かったり急に重くなったりして、ポルシェ水準とは言いかねるのだ。原因は走行中にエンジンを停止させるため、これだけは電動油圧式パワステを使っていることで、その制御がうまくいっていない。早急に改善してもらいたい。

その点を除けば、新型カイエンはハイブリッドも含めて、ポルシェの名にふさわしい卓越した走りを見せてくれた。日本上陸は間もなくだ。

文=村上 政(ENGINE編集長)

■カイエン・ターボ
駆動方式 エンジン・フロント縦置きフルタイム4WD
全長×全幅×全高 4546×1939×1702mm
ホイールベース 2895mm
車両重量 2170kg
エンジン形式 アルミ製直噴V8DOHC32バルブ・ツイン・ターボ
排気量 4806cc
ボア×ストローク 96.0×83.0mm
最高出力 500ps/6000rpm
最大トルク 71.4kgm/2250-4500rpm
トランスミッション 8段AT(ティプトロニックS)
サスペンション形式(前) ダブルウィッシュボーン/エア・スプリング
サスペンション形式(後) マルチリンク/エア・スプリング
ブレーキ 前後 通気冷却式ディスク アルミ製モノブロック・キャリパー
タイヤ 265/50ZR19
車両価格(税込) 1538万円

■カイエンS
駆動方式 エンジン・フロント縦置きフルタイム4WD
全長×全幅×全高 4546×1939×1705mm
ホイールベース 2895mm
車両重量 2065kg
エンジン形式 アルミ製直噴V8DOHC32バルブ
排気量 4806cc
ボア×ストローク 96.0×83.0mm
最高出力 400ps/6500rpm
最大トルク 51.0kgm/3500-5300rpm
トランスミッション 8段AT(ティプトロニックS)
サスペンション形式(前) ダブルウィッシュボーン/コイル
サスペンション形式(後) マルチリンク/コイル
ブレーキ 前後 通気冷却式ディスク アルミ製モノブロック・キャリパー
タイヤ 255/55ZR18
車両価格(税込) 1030万円

■カイエンSハイブリッド
駆動方式 エンジン・フロント縦置きフルタイム4WD
全長×全幅×全高 4546×1939×1705mm
ホイールベース 2895mm
車両重量 2240kg
エンジン形式 アルミ製直噴V6DOHC32バルブ・スーパーチャージャー
排気量 2995cc
ボア×ストローク 84.5×89.0mm
最高出力 380ps/5500rpm(エンジン330ps+電機モーター47ps)
最大トルク 59.2kgm/1000rpm(エンジン44.9kgm+電機モーター30.6kgm)
トランスミッション 8段AT(ティプトロニックS)
サスペンション形式(前) ダブルウィッシュボーン/コイル
サスペンション形式(後) マルチリンク/コイル
ブレーキ 前後 通気冷却式ディスク アルミ製モノブロック・キャリパー
タイヤ 255/55ZR18
車両価格(税込) 未定

(ENGINE2010年7月号)

無料メールマガジン会員に登録すると、
続きをお読みいただけます。

無料のメールマガジン会員に登録すると、
すべての記事が制限なく閲覧でき、記事の保存機能などがご利用いただけます。

いますぐ登録

advertisement

PICK UP



RELATED

advertisement

advertisement

PICK UP

advertisement